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1章1『異世界転移』

「……ハーァ。読み尽きちゃったなー……」


大小様々な大きさの本の塔の中で、椅子に座っている美少年と言うには可愛すぎて、美少女と言うには逞しい少年

その少年の服は男物の服ではなくそれに極めて近い女性服の意外と露出の高いボーイッシュな服装を着て少し高価そうな金の装飾が施された所謂玉座に座っていた。

少年は読み終えた本をパタンと閉じ床に無造作にぶ投げると、本がひとりでに動き塔作りに加勢した。そして少年は退屈そうにアクビをしてそう言った。


「異世界系のライトノベル、なんか似たようなのばかりだなー。なんと言うか物足りない感があるんだよねー。似過ぎてるみたいな?」



――異世界系のライトノベル

いつからだろうか? 元の世界には戻れないなんて言う有りきたりが定着してしまったのは……

いつからだろうか? ニート救済用のセカンドライフと化してしまったのは……

いつからだろうか? 俺TUEEEEのハーレムになりかけて、上昇しかして行かない力や恋路や戦闘。どんな難敵であろうと、チョーつえーパワーでイチコロ☆ となってしまっていたのは……

そんな読み飽きてしまいそうな異世界系。



「……あっ! そうだ!」



――さてじゃあ今から僕がそんな異世界系物語に新しい光を作るとしよう……うふふっ、面白そう♪

少年は笑った。不敵な笑みそんな感じだろうか? もしくは何かを企んでいるかのような怪しげな笑。


「さーて……準備準備っとー♪」


少年は天に手を向け手振り下ろす。そこに現れたのは、地球を含む知的生命体が存在する無数の星々の一万分の一くらいのスケールの模型。


「ん〜。ここだっ!」


少年はダーツを持つと少年を機転に高速回転し、それでいて自転も高速に回転ている星々に投げつける。


「おっ。当たった当たった〜♪ さて、どこに当たったかな〜♪」


ダーツが刺さり回転が止まったその星は……


「これは? え〜と、ちきゅう……地球だ〜♪ 誰かに当たってないかな〜? おっ? ピッタシじゃん♪」


ダーツが刺さった先、そこは日本の東京だった。そこを少年はズームして確認する。


「めぐりや・いのり? ああ♪ 巡谷祈君か〜♪ 君運がいいね〜♪ なんだってこの神様のスアに選ばれたんだから……」


神様を名乗る少年スアは、魑魅魍魎に見いられるような不敵な笑みを浮かべた。




□□□




「ハーァ……マジかよ? そこでその技使っちゃうのかよ?」


広くも狭くもない部屋に明かりも灯さず、閉められたカーテンに越しの日光とたくさんのパソコンの画面の仄かな明りを頼りに少年はただネトゲをしていた。地を這うように無造作に散らばったケーブル。雑誌や衣類が散乱し、一見広そうに見えるその部屋も手狭に見える。そしてそのパソコンに向かって座って愚痴をこぼしているのが巡谷祈だった。

ここは北海道の札幌でそんなに暑くないように思われがちだが、北海道民てきにはすごく暑い。モーターがウィンウィンと唸り、外の気温とハードディスクが発する熱に勝る涼しさのエアコンがこの夏をやりきるための仕事をしている。

時間はまだ真昼間だが、少年がそこにいるのは、あまり不思議な光景ではなかった。

なぜなら今は夏休みだからである。


「クソッ。やめたやめた。チキショウ!」


俺は腹が立ってゲームをやめた。椅子に体を預けて長く続いたゲームに疲れた目を休めようと目を閉じようとしていたその時だった。

テロン♪ と音が鳴り、チャットにメッセージが入る。


『ねぇ? 暇ー。なんか話してよ。プレイ』


プレイというのは、祈のキャラクターネームである。ちなみに、プレイはLの方の遊ぶでは無く、Rの祈るの方のプレイである。

祈は少し不機嫌な顔をしつつも慣れた手つきでキーボードを叩き返信する。


『実は俺。結構ラノベ主人公体質なんだよねー』


『え? 例えば?』


『その1、両親が海外出張で家にいない。その2、結構可愛い義妹が居る。その3、結構可愛い幼馴染みが居る。どうよo(`・ω´・+o) ドヤァ…!』


『(´・∀・`)ヘー』


いやいやそこは、マジかよハーレム起こすの? とかさ会話を殺さないようにするのが普通だと思うと思いながら画面を見て苦笑いする。

そんな他愛ない話が出来るのは、画面の奥に居るキャラクターネーム『クリオネ』さんがネトゲで知り合った友人だからである。


『なあ、お前さクリオネから会話キラーにでも改名したら?』


『いや、遠慮しとく。あ、俺急用出来た。じゃ』


とクリオネ(会話キラー)さんとの会話を終え、休むかまたレベリングでもするか。どちらにしようかと思っていた矢先に……

ふとテロリン♪ とチャットではなくメールの方に、メッセージが来たのに気づく。

誰だよ? とか不機嫌にもそれを開いてみるとそこには、神様(笑)からのメールだった。

いつもならそんなメールは無視するのだが、なにか力のような何かで閉じかけていた目を開かせ、あたかも祈が最初っからそうしたかったかのように神様(笑)のメールを確認させる。開くとそこには、訳の分からない所謂迷惑メールのような文章が書かれていた。


「パンパカパーン。おめでとう。此の度、巡谷祈君は、この僕に選ばれて異世界転移する権利が得られました? はァ? ふざけてんの?」


あまりにものアホさに呆れて叫んでしまう。目も疲れていた頃だったので早く寝たいとか考えながらもその分を読んでいることにむしろ感謝してほしいものだ。

そんな迷惑メールもいいところの文脈を見て本当にそれが異世界に呼ばれている文だとはアニメにて訓練された兵士(ニート)でもない限りは無理だろう。


「――え? その権利を今すぐに使いたい? 分かってるわかってる。君がこの文章を読み終えるとともに異世界へ転移されるよっ♪ だぁ? フザケ……」


ふざけてんのか。と言う前には祈の体が発光し、あたり1面を風のような衝撃波が走る。あたりに散らばっていった雑誌や衣類が飛ばされ、より乱雑にそれらが配置される。しばらくして風や光が収まったかと思うと、もうそこには祈は居なかった……


「ちょっと!? お兄ちゃん? 五月蝿い(うるさい)よっ! どうしたの? ――お兄ちゃん? お兄ちゃんっ!?」


階下から少女の怒る声が聞こえる、ドタバタと階段を登り祈の部屋をダンと開ける。そして、その光景を見て少女はその場に崩れ落ちた。

それは少女の涙とともに始まった物語。





――さあ、これから僕が記すのは最も新しき神話。



――彼はちゃんと僕が面白いと思える物語を作ってくれるのだろうか。



――さあ、巡谷祈君、君は今から僕の掌で美しく踊ってくれよ



――僕の《世界》を救ってくれるかな?



――僕の手元までおいで巡谷祈君。



アハハ♪ 楽しみだなぁ♪







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