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童話

菜の花(童話4)

作者: keikato
掲載日:2016/10/14

 春の日の昼下がり。

 おばあさんは居間のソファーで本を読んでいました。

 ページをめくるたびにあくびが出ます。

 そんなとき。

「おばあちゃん、おばあちゃん!」

 孫のひろこさんの声がして、おばあさんは庭に目を向けました。

 けれど、ひろこさんの姿がありまません。

「どこにいるんだい?」

「ほら、ここよ。壁の絵を見て!」

 壁にかかった一枚の絵。

 それはおばあさんが、菜の花畑で遊ぶひろこさんを描いたものでした。

 絵の中のひろこさんがにっこりします。

「まあ!」

「気がついてくれたんだね」

「不思議だねえ。絵の中のひろこさんがおしゃべりするなんて」

「ねえ、散歩に行こうよ」

 ひろこさんが絵の中から飛び出しました。

「いいねえ、眠気ざましにちょうどいい」

 おばあさんはソファーから腰を上げ、ひとつ大きな背伸びをしました。

「わたしがつれてってあげる」

 ひろこさんがおばあさんの手をとると、おばあさんの体はなぜだか風船のように軽くなりました。

「おばあちゃん、飛ぶわよ」

 ひろこさんが宙に浮きます。

 すると不思議。

 おばあさんもフワリと浮き、ひろこさんに手を引かれて絵の中に飛びこんだのでした。


 二人は空へと舞い上がりました。

「空の散歩も、なかなかステキだねえ。ところで、どこへ行くんだい?」

「あのね、おばあちゃんに見せたいものがあるの」

 ひろこさんが笑顔で答えます。

 空高く、二人は手をつないで飛びました。

 家や道路や畑はどれもおもちゃのようで、地上の町は絵本を見ているようでした。

 町なみをすぎると、一本の大きな川が流れていました。土手には菜の花が一面に咲いており、まるで黄色のじゅうたんをしきつめたようです。

「ここよ、おばあちゃん」

 おばあさんの手を引いて、ひろこさんは地上に向かって降りてゆきます。


 二人は菜の花畑に降り立ちました。

 菜の花が風にゆらゆらとゆれ、そこはあまいかおりでいっぱいです。

「菜の花、おばあちゃんの部屋にかざろうね」

 菜の花をつむひろこさんを、おばあさんはうれしそうに見ていました。

 ひろこさんの姿が菜の花に見えかくれします。

 ゆらゆら、ゆらゆら。

 風が吹くたびに菜の花がゆれます。

 ゆらゆら、ゆらゆら。

 菜の花がゆれます。


 おばあさんはひとつ大きなあくびをしました。

――あれ、まあ?

 いつかしら居間のソファーにすわっています。

 顔を上げると、

「土手にたくさん咲いてたの。おばあちゃんにも見せてあげたくて、つんできたのよ」

 笑顔のひろこさんが庭のテラスに立ち、両腕いっぱいに菜の花をだいていました。

――あら、いつのまに?

 おばあさんはちょっと首をかしげ、それから絵の中のひろこさんを見たのでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] おばあちゃん、てっきりそのまま天国直行便にのるのかと ^^;;リアルひろこさんが、来てくれてよかった。おばあちゃんは、幸せですね。
[良い点] 幻想的で温かく、読後感ほんのりの作品でした。 菜の花が眼前に広がっているような、そんな情景が心に浮かびました。おばあさんにとって、二人のひろこさんからのプレゼントは、とても心和むものだった…
2017/12/31 07:41 退会済み
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