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8話 少しづつ進む日常 (3)

やばい、書き溜め放出とかしなきゃよかった。〆切り(セルフ)に間に合わないところだった。

 オレたちは森へ分け入って行った。


「パック、どうだ、スライムの気配はするか?」


「スライムかどうかまではわからんけど、うようよいる」


「う、うようよか」


「ああ、でかいのは居ないから大丈夫だろうけど、小さい動物の気配が沢山する」


「おい、スライム見つけたぞ!」


 前を歩いていたアキナがスライムを見つけたようだ。この狩場ではツル状の植物や、背の低い木の枝などが多く、街周辺の森とはまったく様相が違っていた。植物の密度が高い。ガイが斧で邪魔な枝やツルなどを切り払いつつ進んでいるが。なかなか前に進めない。


「よっし、スライム見つけたからこの辺り探そうぜ」


 オレたちはいつも通りパックを木に登らせ警戒をしてもらい。護衛にガイを配置、残りのメンバーで周りを捜索しだした。邪魔な枝とかが多くて探すのも大変だ。うーん、余裕ができたら、捜索するメンバー全員がナタとか持って枝とか切り開けるようにしたほうがいいなこれは。


 そうこうしているうちに魔石が見つかりだした。さすがダンジョンの近くだ。ぼろぼろ見つかる。土魔石がほとんどなのは相変わらずだが、水魔石も落ちてる。うはうはだ、しばらく無言で集めていたらスライムを見つけた。さっきアキナが見つけたものとは別の個体だ。


「おーい、スライムがまたいたぞー」


「わ、わたしのほうもスライム見つけましたー」


 アキナとエレインもスライムを見つけたようだ。本当にうようよ居る。その分魔石も多い。まだ1時間も探してないのに、土魔石が20個に水魔石が1個拾えた。一人でこれだけ拾えたのだ。アキナとエレインが拾った分も合わせたら、街周辺で一日魔石集めした分以上がすでに集まっていることになる。こりゃすごい。


 オレたちは夢中で魔石を拾いまくった。といってもガイやパックが居るところから離れないようには気を付けてはいた。森の中で孤立してしまったら生死に関わるということは、さんざん指導されていたからだ。


 そうしていると、街周辺では遭遇しなかったものに遭遇した。ウサギだ。あれ?っと思った。ウサギらしき動物は街周辺でも見かけたことはある。しかし、こちらが近づくと、すぐに逃げ出していたのだ。何度か不意打ちで仕掛けて仕留めようとしたことがあったが、全部逃げられていた。


 しかし、このウサギは逃げない。こちらをすでに認識していて、警戒してるポーズをとっているが逃げようとはしていない。なんだこいつ、こんな森の中に居るのだから人に慣れてるから逃げないってわけでもないだろうし、いや丁度いい逃げないなら仕留めてしまおう。本来、動物を狩るのが狩人の仕事だ。


 オレは棍を構え、じりじりと近寄った。ウサギは相変わらず逃げない。棍の射程に入った。オレは勢いよく振り下ろしウサギを打ちすえた。と思ったらウサギが横っ飛びにジャンプして避けた。そのままウサギはこちらに飛びかかってきた。勢いが乗った体当たりを食らってしまった。


「ぐわっ!」


 すごい衝撃で態勢が崩れた。尻餅をついてしまう。すかさずウサギが首をめがけて飛びかかってきた。これはヤバイ!!、オレは咄嗟に腕で首を守った。


「痛ってぇ!!」


 ウサギに腕をかじりつかれた。すごく痛い。肉に歯が食い込んでいるのが分かる。痛い痛い痛い。オレはウサギを振り落とすために力任せに木にウサギを叩きつけた。さすがのウサギも腕から離れてくれた。だが、またピンピンしている。すこし離れたところでこちらを警戒し、攻撃のチャンスを再び狙っているようだ。


「ぐぅ…」


 腕が痛い、仕事着を食い破られ、血が出ている。だめだ、このウサギにはひとりじゃ勝てない。オレは一目散に逃げることにした。ガイが居るところまで逃げることができれば、ガイと協力してウサギを仕留められるかもしれない。ウサギが追いかけてこなかったら、その時はその時だ。すぐに腕の治療を開始できる。


 ガイが居るところには辿り着けた。もともと離れていなかったのだ。ウサギは追いかけてきていた、ここで防戦するしかない。


「ガイ!、ウサギに襲われた助けてくれ!!」


 ガイは、なにを言ってるのか理解できなかったみたいだ。ウサギが人間を襲うなんて、普通はないからだ。だが、オレを追いかけてきているウサギを見て、ただならぬ気配を感じたのかガイは盾を構えた。


 オレはガイの後ろに回り込んだ。ウサギがそのままガイに向けて体当たりをする。ガイは、その体当たりを盾でうまく受け、ウサギを弾き飛ばした。ウサギは諦めず攻撃を仕掛けてくる。今度はガイの足に噛みついてきた。足に噛みついたが中古とはいえ革製のブーツは頑丈でガイにダメージを与えられてはいないみたいだ。だがガイもいつまでも噛みつかれているわけにはいかない。蹴り上げてウサギを振り払った。


 そのときパックが木から降りて加勢しようとしているのが見えた。


「まて、パック!、お前は木の上に居てくれ!、ガイの邪魔になる」


「うっ、分かった」


 パックは素直に従ってくれた。木の上で待機してくれている。


「アキナ!来てくれ、襲われている!!」


 オレはアキナに助けを求め叫んだ。アキナは騒ぎを聞きつけすでにこちらに向かってくれていたようで、叫んですぐに現われてくれた。


「なんだ!ってウサギ!?」


 アキナもまさかウサギに襲われているとは思っていなかったのだろう。一瞬動きが止まっていた。だが、ガイが苦戦しているのを見て、すぐに持ち直し攻撃に加わってくれた。


「この!、でりゃあ!!」


 アキナが棍を振り下ろし攻撃する。ガイに向いていたウサギは素早く判断をして、こんどはアキナを攻撃しだした。


「うわっぷ!、この野郎!!」


 アキナはウサギの体当たりを、なんとか避けていた。ガイは動かなかった、ケガをしているオレをかばうためだろう。ウサギとオレの間に立ちはだかってくれていた。


 アキナは必死でウサギの攻撃を避け、隙を見つけては攻撃をするが、一度も当たらない。ウサギが小さく素早いせいでまったく当たらないのだ。マキ割りと違い動いている相手に攻撃を当てるのはこんなに難しいのか。


「当たれ、こいつ!!」


 アキナは奮戦してくれているが、このままでは体力を消耗するばかりだ。エレインも駆け付けたが、アキナが苦戦している相手にエレインが加わっても足手まといになるだけだ。オレと一緒にガイの後ろに待機することになった。


「どうした!」


 ガラダさんが駆けつけてくれた。ガラダさんは素早く状況を確認すると、すぐさま駆け寄り、アキナが応戦をしているウサギに向けて槍を突きだした。


 いままでアキナが苦戦していたのがウソのように、ガラダさんの槍は吸い込まれるようにウサギの体に突き刺さった。ウサギから大量の血が流れ出る。しばらくピクピクと動いていたウサギはすぐに動かなくなった。完全に動きを止めたのを確認してからガラダさんは槍を引き抜いた。


「ふう、ケガはないか?」


 ガラダさんがそう聞いてきた。ウサギも死に安心したら痛みがまた襲ってきた。さっきまでは興奮状態だったから痛みが抑えられていたのか。


「ガラダさん、オレがケガしました…」


「む、見せてみろ」


 ガラダさんに袖をまくり上げ腕のケガを見せる。


「ぬ、これはかなり深くやられたな。ちょっと待ってろ」


 ガラダさんは、そういうと腰に下げた水筒の水を使って傷口を洗った。


「ぐっ…」


 傷口に水が流れるだけで、ズキッという痛みに襲われた、つい呻き声を上げてしまった。


「ちょっと痛みが走るぞ、おとなしくしておけよ」


 そう言うとガラダさんは袋から軟膏を取り出した。緑色のペーストだ。それを傷口に塗っていく。


「ぐあっ…、痛っつぅ…」


 軟膏は傷口に強烈に沁みた。臭いもなにか薬品の独特の臭いがする。


「よっし、あとは布で傷口を押さえておけばいいだろう」


 ガラダさんはそういうと白い布を取り出し患部に当て、別の布で患部に当てた布を固定した。


「これでよし、街に帰ったら教会に行って治癒術士に治してもらえ。高くつくが確実だ」


「はい…」


 すっかり消耗してしまった。痛みがひどい。足がすくんで力が入らない。


「サンタさん、大丈夫ですか?」


 エレインが心配してくれている。ここはカラ元気でも大丈夫と言いたいところだったが、そんな余裕もないほど痛みが強かった。


「いや、ちょっと、無理。しばらく動けそうにない」


「魔物に襲われたんだ、それくらいで済んでよかったな」


 魔物?あのウサギは魔物だったのか、ガラダさんがそういうのだから魔物だったのだろう。


「ガラダさん、あれってウサギですよね?ウサギって魔物なんですか?」


 アキナがガラダさんに質問をしている。それはオレも聞きたかった。


「うーむ、いやあれはウサギではない、キラーラビットという魔物だ。外見はウサギそのものだが好戦的で危険な生物だ」


「ウサギとキラーラビットってなにか違うんですか?」


「ウサギはただの草食動物だ。人間に襲い掛かっては来ない。だがキラーラビットは違う、ウサギと思って油断しているところに強烈な体当たりを食らわせ態勢を崩したあとに噛みついてくる。とくに首筋が無防備だった場合、そこを狙ってくる。毎年外見に騙されてケガ人や場合によっては死者も出る危険な魔物だ」


「そ、そうなんですか、見た目に騙されてはいけないんですね」


「うむ、しかしキラーラビットは魔物の中でも最弱の部類だ。油断さえしなければケガもせずに倒せる」


「えっ、でもオレの攻撃まったく当たらなかったんですけど」


「それはお前が焦って冷静さを欠いていたからだ。じっくり相手の動きを見て動きが止まる一瞬の隙を突いて攻撃すれば当たっていたはずだ」


「そうなんですか?」


「ああ、そうだ。さてっと、それではこのキラーラビットはオレが貰っていくぞ、仕留めたのはオレだしな」


「あ、はい」


「サンタはオレと一緒に広場まで来い。あそこならば安全だ。それと、他の者はここでウサギを見つけても近寄ってはいかんぞ。サンタのようなことになるからな」


 ガラダさんは、キラーラビットの死体を持って移動しはじめた。すくんでいた足もアキナとガラダさんが話している間にだいぶ力が入るようになっていたので、オレはガラダさんについていくことにした。


「みんな、すまん、今日の魔石拾いはオレはここで抜ける」


「ああ、大丈夫だ。ケガ人を働かせるわけにはいかないからな。オレたちはもう少し探してみるけど、サンタは広場で休んでいてくれよ」


「すまん、助かる」


 オレはみんなに断って、広場に避難することにした。ハァ、情けない。知らなかったとはいえ、ウサギと大差ない大きさの魔物に遅れを取ってしまうなんて。知らないということは危険なことなんだなぁ。かといって全部の魔物の生態を聞いて回って覚えるなんて不可能だ。こうやってケガをしながら覚えるか。覚える必要がないくらいに強くなるしかないのかな。


 広場に着き、ガラダさんと一緒にみんなを待つことになった。イスに座り待つだけなのだが。腕の痛みと、みんなに申し訳ない気持ちで居ても立っても居られない。そわそわしているとガラダさんが話しかけてきた。


「落ち着け、焦ってもどうしようもないぞ。今回はケガで済んだんだ。それでよしとしとけ。魔物は総じて危険なものだ。死人だって出るような相手だ。お前は幸運だった。それでいいんだ」


「そういうものですか…」


「そういうものだ。だが、説明会で話していたはずだが、魔物は危険だが倒せれば大きな収入になる。皮や骨は通常の動物より頑丈だし、内臓の一部などは薬の材料になったりもする。肉はまあ、普通に食えるくらいだがな。キラーラビットの肉はウサギ肉と、ほとんど一緒だ。少し硬いくらいだな」


「しかし、このキラーラビット一匹を売れば、それだけで土魔石100個分くらいになるんだぞ。狩れるようになればむしろ見つけ次第に狩ってしまえ、できれば血抜きくらいは現地でしてほしいが、してなくても狩人ギルドに持って来れば買い取ってもらえる。血抜きや解体などのやり方はそのうち教えてやる」


「ケガは痛むか?治療術士に治してもらうと、それくらいのケガでも土魔石100個分くらいの代金取られてしまうんだが。帰ったら絶対に治してもらっておけよ。応急処置で消毒とキズを保護する軟膏は塗ったが。膿んでしまったらひどいことになるからな」


「土魔石100個かぁ、けっこう高いんですね」


「そりゃしかたない、手持ちが足りなければ徒党のメンバーに借りてでも治療しとけ。借りた分は後日、働いて返せばいいんだからな」


「そう、ですね、そうします」


 会話はそれで終わった。沈黙が場を支配した。いい天気だ。そよ風も吹いていて気持ちがいい。これで腕の痛みがなくて、おやつを用意してピクニックに来ていたなら。すごく気持ちが良かっただろうな。そうだ、余裕ができたらみんなでここにピクニックに来てみよう。


 時間がただ過ぎていった。腕は相変わらず痛い。かなりの時間そうしていたように感じた。みんな早く帰ってこないかなぁ。いや、弱気になってはいけない。みんなは仕事をしているのだから。


 2時間くらい経っただろうか、太陽が頂点から大分傾いてきた。やることもないので森を眺めていたら、森からみんなが出てきた。少々疲れているようだったがケガもしてなさそうだ。


「ガラダさん、今日はこれくらいで終わりにします」


 アキナがガラダさんにそう伝えた。


「そうか、じゃあ帰るか」


 日の傾き具合から見たら、仕事を切り上げるには少々早い時間に思えた。


「アキナ、今日はもういいのか?」


「ああ、いいんだ、遅くなって治療術士にサンタを見てもらえなくなったらいけないからな、今日は早く帰ることにしたんだ」


「そっか、悪いな。あっでも治療してもらうのに、土魔石100個くらい代金に必要らしいんだ。オレの手持ちがそんなにないんだ…」


「それなら心配するなよ、今日拾った魔石使って治療してもらおうぜ」


「いいのか?」


「ああ、いいさ、オレたち仲間だろ?ケガした仲間の治療費くらいは出すさ」


「ありがとう」


「おっとそうだ、今日の稼ぎなんだが、オレとエレインふたりで拾ったのが、土魔石83と、水魔石10個だったんだ。けっこう稼げたぜ。サンタはどれくらい拾ってたんだ?」


「オレが拾ったのは、土が20に、水がひとつだった」


「なんだ、治療費払えるじゃないか、治療費差し引いて余った分は分けられるな」


 アキナはそう言うと、ニカっと笑った。


 街に帰り治療を受けるとあっというまに傷が塞がった。痛みは残っていたが、それも明日になれば無くなるだろうと言われた。これなら明日からすぐに働ける。ガラダさんが治してもらえと言ったのも肯けた。治療術はすごいな。でも、治療術も万能ではない、マナ教会で行われる奇跡ですら死者は蘇らせることはできない。失われた血は戻らないし、あまりにも体力を消耗している場合は治療術の効き目も薄くなり、助けられないことも多いのだという。


 ケガはしないにこしたことはない、今日ケガをして思った。もし今日オレが、ガラダさんが着ていたような、要所だけでも守る皮鎧を装備できていたらケガだってしなかった。防具の重要性を改めて、文字通り痛感した。


 さすがに皮鎧はすぐには買えないだろうけど、今日の稼ぎなら、そう遠くないうちに買えるようになるはずだ。それまでケガをして治療術士さんに、またお世話にならないようにしないといけないな。


 新しい狩場での仕事は、オレにまた新しい目標を与えた。次の目標は皮鎧だ。そう固く心に誓った。

読んでくれてありがとうございます


なんか、サンタだけひどい目にあってしまった

でもまあ、仕方ないね、主人公には

その身で痛みを知ってもらわないといけないからね

シカタナイネ

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