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7話 少しづつ進む日常 (2)

7話目が出来た。またちょっとだけ進んだ。

 今日は、新しい武器について講習が受けられるはずだ。といっても扱い方が変わるのはガイだけだし、オレたちは気楽なものだ。


 朝食を食べたあと中庭で待っている間、新しい武器を持っているからか注目を集めている。ふふふ、うらやましいだろう。新しい狩場一番乗りは、うちの徒党が貰う。もちろん、そんなことは思うだけだ。口に出して自慢するわけじゃない。そんなことしたら無駄に敵対心を煽ってしまうだけだ。それぐらいはオレだってわかってる。


 そうこうしていたら、ガラダさんがやってきた。


「む、早速武器を揃えてきた徒党がいるな。やる気があってけっこう。それでは今日のところは、まず新しい棒の使い方を教えよう。おまちかねの突き攻撃だ。振り下ろしより当てづらいが、当たれば効果が大きいぞ。」


「突きにはいくつか種類がある。まず基本の突きはこうだ」


 ガラダさんは、その場で前方を突いた。ただの突きだった、なにか特別なことをしたようには見えない。


「さて、先ほどの突きだが、見ただけではおそらく解らなかっただろう。詳しく説明してやる。」


 ガラダさんはそういうと、さきほどの突きをゆっくりと見せながら説明をしはじめた。


「まず、突きをする際、左手…まあ、利き手じゃないほうを前方にして、利き手を使い棒を押し出す。このとき前方に配置した手はがっちりと握らず、滑らせるように使うのがコツだ。こうすることで、軌道修正をしやすくなり威力も増す。突きの基本だが、奥義とも言える攻撃方法だ。足を止めて攻撃する際は、ほぼこれで攻撃することになるな」


「この攻撃は待ちの戦法でも使える。敵が攻撃してくるところに素早く棒の先端を向け相手の勢いを利用して攻撃するのだ。この場合無理に突く必要はない。とにかく相手に先端を向けることだけ考えろ。うまく相手に当てられたら押されてしまわないように踏ん張り、そのまま押しかえすようにすればいい、それだけでダメージが与えられる」


「棒の先端を向け続けられるだけで、かなりの威圧効果がある。女性や小人族のような力の弱い者でも、この待ちの戦法なら相手の勢いを利用できる分効果が期待できるぞ。最低限の護身くらいはできるように徒党のメンバーに協力してもらい実戦で使えるように練習しておくといい」


「次は、腰だめに棒を持ち、がっちりと両手で固定したまま、突進してそのままの勢いを利用し攻撃する使い方だ。いわゆるチャージ攻撃と言うものだな。この攻撃は体重を乗せて攻撃するため、とても大きなダメージが期待できる。特定の部位を狙う使い方ではなく、敵の中心を狙うように突撃するのがコツだ。しかし、この攻撃は外れた場合致命的な隙をみせることになる。もしやる場合は相手の足を止めた上で使うのが望ましい。罠でも仲間に足止めしてもらうのでもいい。連携して状況を整えてからに使うことを心掛けろ」


「突きで教えられるのはこれくらいだな、様々な武術の流派があり、他にも色々な使い方をしているところもある。しかし、突き詰めればやってることは、これらの使い方だけだ。あとはいかに鋭く正確に相手に当てられるか。当てるための状況を作り出すかが重要になる。お前たちは、まず正確に当てることを目標にするといい」


「いちおうチャージ攻撃も手本を見せておく、よく見ておけ」


 そういうとガラダさんは、中庭の地面にいくつか撃ち込まれている丸太の前に立った。あの丸太は突きの練習のために立てられていたのか。


 ガラダさんは、両手でがっちりと棒を持ち走り出した。一瞬の後、ガッ!!と言う音とともに、丸太に棒の先端を打ちつけていた。見る分には難しいことをしているようには見えなかった。本当に難しい技術なのだろうか。


「こんなものだな、当然の話だが、突き攻撃は棒より槍のほうが殺傷力が高い。ただ槍は振り下ろし攻撃には向いていない、そのうえ棒より当てた際に打点が滑ってズレる可能性が高い。まずは棒で訓練を積んで、確実に当てられるようになってから槍に換えるかどうか考えたほうがいいな。棒も槍もどちらにも一長一短がある。将来的にどちらを使うかはお前たちの判断に委ねるが。今はまだ棒を使っておけ」


「それでは、武器を整えた徒党は、そちらの隅のほうで新しい武器の指導をする。他の徒党はいつものように素振りをしていろ」


 ガラダさんはそういうと中庭の隅の方へ移動した。オレたちもそちらに移動する。


「さて、お前は斧を使うのか」


 ガイが肯いた。


「ふむ、まずは斧を盾を持ったまま振ってみろ」


 ガイは、斧を上段に構え、そのまま垂直に振り下ろした。マキ割りと同じ要領だ。片手だったが、刃がブレずに垂直に振り下ろせていた。


「む、斧の扱いに慣れているようだな。そうかお前たちは毎日マキ割りをしている組か、それなら斧の扱いは教える必要はなさそうだな」


「斧は武器としても使えるが、どちらかというと、藪を払うことに使うことが多くなる。ダンジョンの周りの森はダンジョンの影響なのか植物の生育が早い。昨日払った藪が今日には復活しているなんてこともよく起きる。金に余裕ができたら、もう一本くらいは、ナタか斧を用意して複数人でもっておいたほうがいいぞ」


「次は盾の使い方だ。お前が持っている盾は中型の盾でラウンドシールドという。丸い見た目そのままの名称だな。ちょっと貸してみろ」


「盾の使い方だが、こうやって基本的に腕を縮め体に密着させるように構えて、足を踏ん張り弾かれないように受け止める使い方が簡単だ。熟練者になると敵の攻撃が当たる直前に体当たりの要領で相手にぶつかりに行き、敵の攻撃の威力を削ぎつつ相手の体制を崩すなどの使い方もできる。だがまあ、慣れてくるまでは踏ん張り耐える方がいい」


「そして盾持ちが攻撃を耐えたら、攻撃役が素早く敵に殴りかかるわけだ。とりあえず慣れるまでは盾持ちは耐えることだけ考えたほうがいい。徒党の壁として敵に立ちはだかれ、攻撃役はその壁をうまく利用して敵の攻撃を受けないように立ち回り攻撃をするんだ」


「まだ、お前たちは戦闘経験もろくにないはずだ。練習はもとより実戦で経験を積んでコツをつかんでいけばいい。もちろん勝てない相手に無理に挑む必要はないぞ。そういう敵が出た場合はなんとか逃げる算段を考えろ。多勢に無勢だったり、敵が大型の動物や魔物だったりした場合だな」


 ガラダさんは、実演をしながら教えてくれた。盾の使い方は説明されてみると簡単だ。しかし、説明されずに使ったらどうだっただろうか、少しでも体から離れたところで受けようとして、きっと腕を伸ばして敵と自分の間にかざすようにして使ったりしたんじゃないだろうか。そんな使い方では強い衝撃を受ければ、きっと弾かれて腕もケガをしてしまっていたかもしれない。ダランさんが説明した使い方はきっと本当に簡単な使い方なんだろうけど、教えられなかったらそんな程度のことでもケガしながら経験を積まないといけないところだった。


「それでは、この盾は返すぞ。それとお前たちは斧の使い方も心得ているようだし、さっそく行ってみるか?新しい狩場へ」


 えっ?新しい狩場へ行くのは望むところだけど、今日からとは思ってなかった。扱い方を説明されても、練習する必要はあるだろうと思ってた。そうか、もうガイは斧の使い方はマキ割りで十分慣れてるからいいのか。盾のほうは練習って言っても構えくらいのものだ。今日教えられたことくらいなら特に練習しなくても出来るわけか。


「えっ、いや、そりゃ、行っていいなら行ってみたいです」


 つい、そう答えてしまった。


「そうか、じゃあ、素振りの訓練を終えて仕事に行く時にオレも一緒に登録に行ってやる。登録が済んだら現地へ連れて行ってやるよ」


「あっはい、ありがとうございます」


 勝手に決めてしまった形になったが新しい狩場に行くことには他のメンバーも異論はないはずだ。ないよね?


 それからすぐに素振りの訓練を開始した、説明を受けていた時間の分、他の徒党より訓練時間が短かったが、まあそれはしょうがない。


「訓練終わったな、それじゃ行くぞ」


 オレたちはガラダさんについてダランさんのところへ仕事の登録に向かった。オレたちの徒党は登録を最後に行うことにした。他の徒党のメンバーも早く新しい狩場へ行きたいのだろう。ギルドから出ていくときに張り切っているように見えた。


「ガラダがついているということはダンジョンの方に行くのか」


「ああ、そうだ、こいつらは最低限の装備も整ったし、刃物の扱いもそれなりに修得してたから今日から連れて行ってやることにした」


「そうか、わかってると思うが、そいつらをダンジョンに入れるなよ」


「わかってるって、こいつらがダンジョンに入っても死ぬだけだ。ダンジョン用の消耗品も用意してないし、入らないように十分注意するよ」


「そうか、では仕事の登録をしておく、がんばれよ、お前ら」


「「は、はい!」」


 オレたちは一斉に返事をした。


「それじゃ、いくぞついてこい」


 オレたちはガラダさんの後を追っていった。そのまま門を抜け、街道を歩いていく。


「ダンジョンは門から抜けて街道をしばらく歩いたところに脇道がある、その脇道には看板もあるし、脇道に入ったらダンジョンまで一本道だから迷うようなこともないだろう。」


 道中ガラダさんの装備を見てみる。ガラダさんは皮鎧に身を包み、槍を持っていて腰にはナタを下げていた。鎧の皮部分は最小限に抑えられ要所を守る程度にとどまっていた。兵士のようにがっちりとした鎧ではなく、動きやすいように要所だけ守るようにしてあるのだろう。


 そういえばガラダさんは普段どんな武器を使ってるのだろう。今持ってるのが槍だから普段は槍を使ってるのかな?聞いてみることにした。


「ガラダさん、ちょっと聞いていいですか?」


「ん?なんだ?」


「ガラダさんは普段どの武器使ってるんですか?」


「そうだな、オレは槍を使うことが多いが、状況によっては弓や盾も使うし、棍棒やナタで戦うこともある」


「やっぱりいくつか複数の武器を使えたほうがいいんですか?」


「そりゃそうだな、戦う場所はいつも同じわけじゃない、状況や目的によっていくつか使い分けできたほうがいい、まー、世の中には化け物みたいなヤツもいて、たったひとつの武器で敵をなぎ倒すなんてことをするのもいるが、ああいうのはオレには無理だ。才能っていうものなんだろうな」


「知ってるか?ダンジョンを踏破して最深部からマナ結晶っていう、最上級の魔石を持ち帰ることが出来たヤツは勇者とか英雄って呼ばれるんだぜ。マナ結晶を王都なんかにあるマナ教会に納めると奇跡を与えてもらえるんだと、限度はあるみたいだが、死病の治療や寿命を延ばしたりしてもらえるらしい。オレたちには関係ない話だが、王様とかには喉から手が出るほど欲しい奇跡だろうな」


「えっ?死病ていうと黒死病とか、ああいうヤツですか?」


「そうだ、過去に王国を黒死病が襲ったときに、勇者が現れてダンジョンからマナ結晶を持ち帰り、マナ教会に頼んで黒死病の治療をマナ教会に執り行ってもらったことがあるそうだな。いくつもの村が滅び、王都にも黒死病が蔓延しだしていて亡国の危機だったそうだ。そのときの勇者は貴族に任命され、今の王家にもその血が流れてるらしい」


「なんか、そうだとか、らしいとか確証ない感じですね」


「なんせ、オレが生まれるかなり前の話みたいでな、オレも伝承語りの婆さんから聞いただけだから確証なんてないさ」


「しっかし、マナ教会もそんな奇跡起こせるなら亡国の危機だったんだし、マナ結晶なんてなくてもやってくれてもよかったんじゃないです?」


「そりゃ、あれだろ、なんか大規模な魔術でも発動して奇跡を起こしてるんだろ。マナ結晶くらいの上級の魔石使わなきゃ発動できないくらいでっかいのを」


「あー、そっかー、魔術を使うにはいろいろ触媒とか必要になるんですよね。だからか」


「そうだな、人間の体内にも魔力はあって、魔石とかなくても弱い魔術なら発動できるみたいだが、魔石を触媒にして使えば魔力を魔石から引き出して発動できる…らしい。オレは魔術なんて使えないからどう使うのかわからんが、治療術を使ってもらうときに土と水の魔石を要求されるな。治療術には風や火の魔石は使えないみたいだ。土と水の両方の魔石が必要らしい、まあ街の中なら魔石の在庫はどこからか持って来ればいいだけだから金を払えばなんでもいいんだけどな」


「逆に言えば街の外で治療してもらうのには、土と水の魔石持ってなければいけないってことですか」


「そうなるな、といっても治療術使える魔術師は貴重だから街から外に出ることなんてほとんどないぞ。オレたちの街でも外に出るのは一ヶ月に一回ある大規模なダンジョン探索の時くらいだな。それもダンジョンの入口で兵士に守られて待機してる。ダンジョンの中になんて入っていかない、治療できる本人がケガで動けなくなったら治療どころじゃないからな、これはしょうがない」


「魔術かぁ、使える様になったら便利なんだろうなぁ」


「そうだな、昔は灯火の魔術が使えるだけで生涯安定とか言われてたみたいだ。いまはファラン山の竜族との交易で火魔石が手に入るようになって火打石が気軽にとは言わないが手に入るようになってそうでもなくなったが、竜族との交易ができなかった時代は火を点けるのもひと苦労で種火を絶やさないようにしたり、魔術師に点けてもらったりしないと火が起こせなかったみたいで大変だったそうだ」


「だがまぁ、魔術使うには小難しい魔術の本を理解しなきゃいかん、読み書きもできんようでは魔術を覚えるのは無理だし、覚えるのも長い修業が必要になる。もっとも、なぜか生まれつき感覚的に魔術を使える天才とかも居るんだけどな。小人族の精霊を見る能力とか、そういうものなんだろうな」


 そんなとりとめのない話とかしながら、オレたちは歩いた。1時間くらい歩いただろうか。ダンジョンの入口が見えてきた。ダンジョンは、洞穴があるだけみたいな風情かと思ってたら、入口はきちんと整えられ門が備えられていた。


 門の前は広場になっていて、それなりの人数がキャンプでもできるようになっていた。休憩小屋だろうか、小さな小屋もあった、丸太で作られたログハウスというものだろう、簡素だが頑丈な造りをしている。


「この広場はダンジョン探索する前の休憩所として整備されているところで、その小屋は治療術師が待機する場所だ。普段はカギがかけられていて使えないぞ。広場の整備も狩人ギルドの重要な仕事だ。ここで魔石拾いをするときには、広場の雑草を抜いたり、伸びてくる藪などを切り払って森に飲まれないように整備するんだ」


「それじゃ、適当に作業したあとに魔石を探せ。オレは今日のところはここで待機しておくからな」


 ガラダさんはそう言うと、小屋の前にいくつか置いてあったイスに座った。オレたちは、まず広場の整備からはじめることになった。


 藪を払うのは斧を持っているガイが担当し、他のメンバーはとりあえず雑草を抜いていく。しっかりと大地に根を下ろし頑固に抜けない雑草も多かった。藪を払うのがガイだけだと大変そうだ。ガラダさんも言っていたが、早急に刃物を買って藪を払う人数増やさないといけないな。


 しばらくそんな作業をした。30分くらいだろうか。正確には判らないがそんなもんだったと思う。ガラダさんが作業を終了していいと声を掛けてくれた。


 いよいよ魔石探索だ、新しい狩場、街周辺より魔石が多く取れる場所、ワクワクする。今日はどれくらい稼げるのか期待してもいいだろう。徒党のみんなと示し合わせ、森の探索を開始した。

読んでくれてありがとうございます


新しい単語が出て来たね、マナとかマナ教会とかだね

マナ教会はマナ結晶の代わりに奇跡を授けてくれる

それ以外は至って普通の教会です

神に祈ったり、教義の説教したりです

なんか悪だくみとか権力闘争とかしたりはしてないです

本当だよ?(意味深)

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