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5話 初仕事 (2)

何気ないけど、なんか難産だった、悩むあまり他の物語を生やしてしまうくらい難産でした。ちょっとでも読みやすいように書き方をかえて文章の区切りを工夫してみました。

十一月二日加筆修正

 ダランさんから貰った木札を門番の兵士に見せ、街の外で出た。さっそく森へ入って魔石を探そうとするが、すでに近場は他の徒党が探している。ここで割って入ってもお互いに取り合うことになる。それなら、他の徒党と離れた場所で探したほうが賢明だろう。


 壁伝いにオレたちは二十分ほど歩いた。道中の壁の内側には矢倉が等間隔でいくつかあった。そこには兵士が見張りをしていたので、見つけるたびに手を振っておいた。兵士も手を振り返してくれた。ささいなことだろうけど、こちらに敵対する意思がないことを示すのは無駄な行動ではない。こそこそと壁際を調べ、こっそり門以外の場所から侵入する輩はいつでも居るのだ。そういう輩を放っておくと街の治安が悪くなる。外敵が攻めてきたときにいち早く見つけるための矢倉ではあるが、治安維持のためにも必要なものなのだ。


「おっと、みんなちょっと待ってくれよ」


 パックがみんなを呼び止めた。なにか見つけたのだろうか。


「森の中でなにか生き物の気配がする。もしかしたらスライムがいるかもしれないぜ」


 小人族の警戒にひっかかったのなら、何かいるのは確定だろう。だが、潜んでいるものがスライムかどうかは確証はない。オレたちは道中歩きながら話し合っておいた陣形で森に入り探ってみることにした。


 ガイが前衛で、アキナがその後ろに控え、なにかが襲ってきた場合ガイが受け止め、アキナが殴る。エレインとパックは後方で待機し、オレが二人を守るという陣形だ。エレインとパックは戦闘能力が皆無とは言わないが、少なくとも今はオレが一人で戦ったほうがマシな程度だ。二人とも腕力が弱いので、素振りもまだ満足にできていないのだ。


 しばらく森の中を探した。音をわざと立てながら探していたので、なにかが潜んでいたなら、こちらに気付くはずだ。野生動物は基本的に臆病で、肉食動物でも聞きなれない音を聞いたら逃げることも多い。もしゴブリンの野盗が潜んでいたらどうしようかと心配もしていたが、パックによると複数の気配は感じないらしいので、もし出てきても囲んで殴ればいいだろう。


「おっ、見つけたぞー」


 アキナがなにかを見つけたらしい。オレたちは急がず周りを警戒しながらアキナたちに追いついた。


 スライムだ、ぷよぷよした半透明の緑色の水袋といった風情がある。ためしに両手棍でつついてみた。ぷよんとした感触が帰ってきた。つついてみたがスライムはとくに意に介した様子もなく、そこに佇んでいる。いやよく見ると動いていた。跳ねて移動したりする訳ではなく、ナメクジのように這って進むようだ。


「パック、このあたりに他に生き物の気配はないよな?」


 オレはパックに確認をした。


「ああ、こいつ以外の気配はしない」


「よっし、それなら、このあたりから探してみようぜ。たしかスライムの居るところは魔石あるんだよな?」


 みんなが肯いた。オレたちはここで魔石を探すことにする。もちろん警戒は怠らない。パックが丁度いい木に登り辺りを警戒し、パックの護衛にガイを配置した。オレとアキナ、エレインの三人で周辺の地面を探してみる。ガサガサと下草をかき分け魔石が落ちていないか入念に探していく。


 それからどれだけ探しただろうか、オレは土魔石を十個ほど見つけられた。すごい、村に居た時には、一日探しても見つかる魔石は数個程度だった。村に居た時はスライムの近くに魔石が落ちてることが多いなんて知らなかったからなぁ。知ってたらもっと魔石貯められてたのかもしれない。いや無理か、そもそもスライムを見つけること自体がオレでは難しかっただろう。森の奥に入れば別だろうけど村周辺ではスライムも害獣の一種だった。


 スライムは雑食で肉も草もなんでも食べてしまう。当然、農家にとってみたら畑に侵入されれば作物を荒らす害獣になるわけだ。村周辺ではスライムも見つけたらすぐに討伐していた。


 まだ見つからないか探したいところだけど、そろそろ疲れてきた。中腰で地面を探すのは地味で腰にくる作業だ。そろそろ休憩を入れたほうがいいかもしれない。


「おーい、サンター、そっちはどうだー」


 アキナが大きな声で、声を掛けてきた。


「こっちは、土魔石十個見つかったー」


 オレも大きな声で返事をする。


「サンタ、エレイン、そろそろ休憩にしよう、ガイとパックの居る場所に戻ろうぜ」


 アキナが休憩の提案をしてきた。オレも疲れていたので、その提案に否やはない。


「そうだな、そうしよう、エレインもそれでいいよな?」


「は、はい」


 オレたち3人は休憩をするため、ガイとパックの居る場所に戻った。


「ふー、疲れた。中腰の作業は腰にくるぜ」


 アキナはさっそく水筒から水を飲んでいる、オレも疲れていた。男のオレ達がこれだけ疲れているのだ。エレインはもっと疲れているだろう。心配になって声を掛けた。


「エレイン、大丈夫か?」


「は、はい、大丈夫……、です」


 エレインは、大丈夫とはいうが、明らかに疲れが限界に達しているように見える。無理をして倒れたら大変だ。


 オレたちはしばらく休憩をしたあと、もう少し探してみることにした。だがエレインはまだ疲れていてもう一度魔石を探しに行くのは無理そうに見えた。


「休憩も十分したし、もう少し魔石を探してから今日は戻ろう」


「は、はい、がんばります」


「いや、エレインはここで休んでいてくれ、帰りも歩かなきゃいけないんだ。体力を使い切ってしまうわけにはいかないだろ」


「えっ、でも……、そうですよね。お言葉に甘えて休んでいることにします」


 エレインは、意外にも素直に従ってくれた。疲れが足に来ているようで立った瞬間フラついていたのだ。エレインはここまでにしておいた方がいいだろう。


 オレとアキナは再び魔石探しに戻った。太陽がだいぶ傾いてくるまで探したが。追加で見つかったのは土魔石が五個だった。オレたちは街に戻る前に、森を抜けたところで今日見つかった魔石を分配しておくことにした。


「さて、今日見つかった魔石だが、水が三個に土が四十個ってところだったな。」


「アキナ、分配とかどうする?」


「そうだな、まず均等にみんなに配って、余りはサンタに渡すでいいんじゃないか? ブーツとか、エレインのズボンの代金を立て替えてもらってるから返し切るまでは、そうしようと思ってるんだけど、みんなはそれでいいよな?」


「おいらは、それでいいと思うぜ」


「わ、わたしもいいと思います」


 ガイは肯いている、いいようだ。


「じゃあ、分配していこうか」


 アキナは土魔石を一人ずつ順番にひとつづつ配っていく。土魔石は全員に均等に配られた。水魔石は三個しかない。これは均等に分けられないのでオレが貰っておくことになった。土魔石にして十五個分か、あと五十五個分、これは別の袋に分けておいて後でどれだけ返済されたか分からないようにならないよう注意しないといけないな。


 オレに返済された水魔石分以外の収入は全員が土魔石八個分。土魔石一個でパン一個が食べられるから、だいたい二~三個分くらいあれば、贅沢しなければ、それなりの食事ができるくらいかな。


 となると、貯めて置ける魔石は食事代が必要なら一日で二~四個分くらいか、今日の魔石拾いでも服がけっこう傷んでしまった。破れるというほどではないけれど、枝とかに何度も引っ掛けて布地にキズが出来てしまっている。これが何日も続けば、どこか破けてしまうだろう。ブーツと皮手袋があったおかげで体にはケガらしいケガはなかったけど。次の目標は丈夫な服だな。


 エレインのズボンは中古だったけれど、丈夫な代物だったようで目立ったキズもなかった。ということは、土魔石二十個くらいあれば上下揃えることができるのだろうか。いや、もうすこし多めで見積もっておいた方がいいかもしれない。


 まあ、服の値段とかは、戻ってダランさんにでも聞けばいい話か。ここで考えても仕方がない。


「よーし、分配も終わったし、今日は宿舎に戻ろう、明日も仕事しなきゃいけないし疲れを残さないようにしないとな」


 アキナがそう宣言し、来た道を再び壁ぞいに歩いていく。オレたちもそれに続いた。特に問題もなく門まで辿り着いた。まだ太陽は高い位置にあった。少し切り上げるのが早かったかな。


 仕事を終えたことを門番に告げ、門をくぐらせてもらった。そのままダランさんのところに木札を返しに行く。仕事始めに木札を貰い、仕事が終わったら木札を返す。それで一日の仕事が終わる。


「ダランさん、ただいまー」


「おう、おかえり、早かったな、魔石は見つかったか?」


「水が三個に、土が四十個見つかったよ。もう分配も済んでる」


「そうか、初日にしては多いな、そういえば、お前たちの徒党には小人族が居るな、スライムでも見つけたか」


「うん、スライムを見つけたから、その周りを探したんだ」


 軽く会話をしてから木札を返す。


「おっと、ちょっと待ってろよ」


 ダランさんはそう言うと、今朝書き込んでいた紙を取り出しなにやら印を付けていた。そうか毎日紙を一枚使うのじゃなくて、ああして一枚の紙を何度も使うのか。紙は高価な代物だし、使い捨てにはできないよね、そりゃそうだ。


「よしいいぞ、おつかれさん。初仕事を終えたばっかりで悪いんだがな、ちょっとだけ付き合ってくれ、現在、お前たちは宿舎で寝泊まりしてるはずだな。宿舎に用意されてるマキと食材だが、あれはもう補充されん。数日は持つだろうが必要ならお前たちが買い足すことになる。オレのところに金持って来れば補充の手配はしてやる、他の徒党とも話し合っておけよ」


 うん、そりゃそうだよね。いつまでもタダ飯食わしてくれるわけがないもんね。


「あとは、宿舎だが、来年には追い出されるぞ」


「えっ? なんで?」


「そりゃそうだろ、お前らのようなヤツは毎年来るんだ、そいつらのために、宿舎を空けないといかんだろ。だから一年の間にちゃんと稼げるようになっておけよ。そこから先は住むところも自分で用意しないといかんのだからな」


「うっ、ええっと、はい」


 寝耳に水……、というわけではない。毎年村から若者が街に仕事を探しに来る。オレ達がそうだったのだ、来年もきっとそれは変わらない。言われてみればそうだ。オレ達が特別なわけじゃない。若者に当面の住居を与え、仕事をはじめるまでの食事を与える。そうすることで路頭に迷うことを防止しているのだろう。猶予は一年、それまでに最低でも一人前になれということだ。


「なに、そう難しいことじゃない、早く一人前になれるようにギルドでも指導をしていくし、狩人としての経験を積んでいけば大丈夫だ。」


 街周辺での魔石拾いでは食費くらいしか稼げそうにない。いつまでも魔石拾いだけで暮らしていけるわけじゃないということだろう。獣などを狩れるようになったら、魔石を拾うより稼げるのだろうか。


 今は狩人としての経験が足りていない、周辺の森ですらろくに潜れないのだ。魔石拾いをしながら周辺の地形を把握し、並行して探索に役立つ技術などを教えてもらう。当面やれることはそれくらいしかないか。


 オレたちは宿舎に戻り明日からのことを相談することにした。


「アキナ、食糧とかマキとかの金どうしようか……、装備だって十分じゃないし、そのための貯蓄だってしなきゃいけないよな」


「そうだよなぁ、できれば服は丈夫なのを早急に買いたいものだ。今日だけでけっこう傷んでしまったしな」


「だよなぁ、オレたちはブーツとか手袋とか先に手に入れることができたけど、他の徒党はそうでもないようだし、オレたちより金については厳しいだろうし」


「うーん、だけどマキ代と食費は宿舎の仲間全員のことだから、どうしてもみんなから集めないといけないよな。どこかの徒党が全部肩代わりするなんてできるはずがないし」


「そうなると、他の徒党と話し合いしなきゃいけないよな。誰がやる?」


「えっ? サンタがやってくれるんじゃないの?」


「えっ? いやいや、ちょっと待てよオレには無理だよそんなの」


「えー、できると思うけどなぁ」


「無理だって、アキナがやってくれよ」


「おいおい、なんでオレがやるんだよ。他にも徒党のメンバーはいるだろ」


 アキナはそう言うが、はっきり言ってそういう役回りができるのは、オレかアキナのどちらかしかいない、ガイは無口だし、エレインは女だ、パックは小人族だし、たとえ問題提起したとしても侮られてしまうだろう。


「うーん、しょうがない、今回はオレがやることにする」


 アキナが折れてくれた、よかった、徒党内の話し合いならともかく、他の徒党との話し合いなんてオレには難しかった。だって、その、知らない人と話すのって恥ずかしいし。


 ガイとエレインとパックも、アキナがやってくれるのならばいいようだ。まあ、3人は元々矢面に立てるつもりはなかった。そもそもできないだろうし。


「じゃあ、こういう話は早い方がいい、晩飯の時に代表者を立てて話し合うよう提案しよう」


 そういうことになった、オレたちの徒党は、他の徒党より、だいぶ早くに帰ってきてしまったようだし、晩飯の準備だけをしておくことにした。といっても、調理場に残っている野菜を切って、水と一緒に鍋に入れておくだけだ。火を付けて完成させるのは他の徒党が戻って来てからにする。食事は暖かいほうがいいしね。


 他の徒党が、ちらほらと帰ってきた、全部の徒党が帰ってきたのは大分太陽が傾いてきてからだった。他の徒党はずいぶんとボロボロだった、手や足にキズがみられる者もけっこう居る。オレたちは装備を整えておいてよかった。しかし、初日でこんなにボロボロで疲れもあるだろうに、晩飯とかどうするつもりだったのだろうか。


 なにはともあれ晩飯だ、全員が揃ったところで食事を開始する。みんな疲れているけれど食欲はあるようであっというまに食べてしまった。食べ終わったところでアキナが声をあげた。


「みんな、ちょっとまってくれ、ダランさんから聞いただろうけど、マキや食料の代金のことを話し合いたい。今日は疲れてるだろうから、明日の朝食のあとにでも代表者を立てて話し合おう」


 食堂にいるみんなに聞こえる大声でそう伝えた。他の徒党は疲れている者が多く、すぐにでも部屋に帰りたそうにしていたが、話し合いの重要性は理解はしてくれたみたいだ。明日の話し合いに出る代表者を決めてから解散することにしたようだ、徒党ごとに集まり相談をしている。代表を決めるのにも時間がかかるだろうし、話し合いは明日の朝にすることにした。オレたちは代表者はアキナだと決めているので、他の徒党が話し合っている間に解散し部屋に戻った。


 それにしても、他の徒党のみんなはがんばるものだと感心した。とくに女性を加えた徒党の男達は、他に比べて明らかに疲れが大きいようだった。女の子にいいところを見せたいという気持ちでもあったのだろうか。まあ、うちの徒党もエレインを先に休ませたりしてたし、他の徒党も女性の扱いはそういうものになってしまうよな。こればっかりは男の性分というものだ仕方がない。


 部屋に帰り身支度を整えてから寝ることにする。金に余裕ができたら仕事着以外にも普段着とかも、何着か欲しいなぁ、そんなことを考えながら、その日は眠りに落ちた。

読んでくれてありがとうございます。

いやぁ、〆きり(セルフ)に間に合わないかと思いました。

それなりに話数を稼げるまでは更新ペース落とさないようにしたいです。

もっと爆速で投稿してる作者さんたちってどうやってるんだよ、まったく

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