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4話 初仕事 (1)

第四話が生えて来たよ。だいたい六千字くらいで一話を考えてます。

十月二十九日加筆修正

 目が覚めた。寝つきが悪かったからか、まだ若干眠い。だけど今日は初仕事の日だ。気合いを入れて体を起こした。


 さて、朝にやることに変わりはない、朝食ができるまでマキを割り、食べたら宿舎を掃除する。ガラダさんの早朝からの指導は今日はなかった。説明会のあとガラダさんが宿舎で言ったのだ。


「俺がお前達の早朝の指導をするのは今日までだ。明日からは食事や宿舎の掃除などはオレの指示なく全てやれ。新入りには先に来ていた者が教えてやれよ。朝食と掃除が終わったくらいの時間に素振りの指導と仕事に関しての講習をやることになっている。手早く終わらせて全員中庭で待機しておくようにしておけ」


 と、そう言っていたのだ。今は全員中庭に集合をしている。それぞれグループがもう出来はじめてはいたが、若干名はまだうちとけられる相手が居ないのか、ひとりぼっちで突っ立っている人もいる。そうこうしているとガラダさんが中庭にやってきた。


「よーし、全員いるなー、それでは早速素振りだ、両手棍を持て!!」


 全員が両手棍を持ち、ガラダさんの手本を見てから素振りをしだした。昨日の説明会を聞いていたからか、今日は真剣に素振りに取り組む人が多い気がする。オレも真剣に取り組みより鋭く振り下ろせるようにがんばった。


 一時間の素振りが終わった。腕が疲れた。息も切れている。


「よし、今日は昨日までよりはマシだったぞ。素振りの訓練はお前たちの生死に関わることだ、これからも真剣に取り組めよ。多少マシになるくらいまでは指導してやる。そこからは自分で鍛錬するんだ。サボっていて、いざ実戦で使い物にならなければ死ぬことになるからな、その時になって後悔しないようにがんばれ。それでは、各自水分補給などを終えたら講習に入る。しばし休憩をしていろ」


「「はい!!」」


 オレたちは元気よく返事を返し、まずは休憩することにした。なにはともあれ水分補給だな、井戸へ行こう。


「サンタ、今日はいよいよ初仕事だな。楽しみだ」


 アキナが話しかけてきた。オレも楽しみだ。村では農作業の片手間でしか魔石を探す時間がなかった。村が見えるくらいの浅いところしか探せなかったし、滅多に魔石も見つからなかった、でも、ここでは魔石を探すことが仕事なのだ。しかも拾った魔石は全部オレたちで貰っていいらしい。これでやる気が出ないほうがおかしいだろう。


「そうだな、魔石拾い楽しみだ、いっぱい拾って帰ろう」


 オレはアキナにそう返事を返し井戸から水を汲んでたっぷりと飲んだあと、すぐにガラダさんの前に戻った。講習を受けたら、いよいよ仕事だ。


「集まったな、それでは講習をするぞ。といっても難しいことはない。魔石を拾いに森へ入ってもらうが街周辺の壁が見えるくらいの浅いところを探してもらう。浅いところでは魔石が見つかり難いが、お前たちは新米だ。森の深いところまで行ってしまえば迷って帰れなくなる可能性が高い。一応行方不明者が出れば捜索はするが、生きているうちに見つけてもらえる可能性は低いからな、死にたくなければ必ず街の壁が見える程度の深さまでで留めておけ」


 仕事での魔石拾いなのだから、きっと森の深い部分まで行くのかと思っていたけど違うようだ。熟練者が引率についてくれるのなら深い部分までいけるのだろうけど、新米狩人にそんな手厚く指導はしてくれるはずはないか……、いや今でも十分なほど手厚い指導はしてもらっている。これ以上を求めるのは、わがままというものだろう。


「まずはここにいる者でいくつか徒党を組め、できれば四人から六人までで組んでくれ。少ないのは論外だが、多すぎても動きが悪くなる。それくらいの人数が丁度いいのだ。」


 どうやら徒党を組まないといけないようだ。まあオレたちはすでに三人組だ、最低でもあと一人誘えばいいのか。うーん、どうしよう、常に三人でつるんでいたから他の人と交流をしていなかった。ここはアキナと誰を誘うか相談したほうがいいかな?


「よう、にいちゃんたち、おいらを徒党に加えてくれないかい?」


 アキナと相談しようとしていたら、金色の髪に青い目をした小人族が話しかけてきた。小人族はオレたち、のっぽ族の腹くらいまでの背丈しかない種族で、ゴブリンと違って見た目通り非力な種族だ。しかし侮ってはいけない、小人族は生まれつき精霊を感じることができる能力を持っているそうだ。他の種族は、生まれつきでは精霊を感じることができる者は少ない。子供のころから厳しい修行をすれば精霊を感じることが可能になるらしいけれど、そういう修業をせずに精霊を感じることができる小人族は精霊を利用して周囲を警戒したり、遠くを見通したりと他の種族とは一線を画す探知能力を持っている。そのうえ目や耳もいいときたら斥候とかに最適な種族というものだろう。


「おいらは小人族だ、森の中の探索では絶対に役にたってみせるぜ、どうだい?」


「アキナ、どうしようか?」


「んー、オレは別にいいぜ? ガイはどうだ?」


 ガイも肯いている、どうやら仲間に加えるのに異論はないようだ。


「それじゃ、よろしく」


「こっちもよろしくな、にいちゃんたち」


 仲間を誘おうと思ったら向こうから来てくれた、これで四人だ、最低人数には達している。もうこのメンバーでいいかな?


「あっと、にいちゃんたち、実はな、ちょっとだけお願いがあるんだ」


「ん? なんだ?」


 お願いってなんだろう。とにかく聞いてみることにする。


「実は徒党に加えてほしい人があと一人いるんだ、宿舎で仲良くなったんだけど引っ込み思案な性格で放っておけないヤツなんだよ。そいつも徒党に加えてやってほしいんだけどいいかな?」


「そうだなー、まず誰なのか連れてきてくれないか?」


 アキナがそう答えた。


「おっ? 脈ありって考えていいんだな? すぐ連れてくるよ」


 そういうと小人族は中庭の隅に歩いて行った、そこには女性が一人立っていた。誰にも話しかけられなくてまごまごしていたようだ。赤みがかった髪に茶色の目をした、美人というよりは、可愛いといった感じがする女性だ。仲間に加えてほしいのは彼女なのだろうか。手を引いてこちらに連れてきているどうやら彼女で間違いないようだ。


「こいつはエレインって言うんだ。見た通り女だから力仕事は苦手で、もしかしたら足手まといになるかもしれないけど、そこはなんとかフォローしてやってくれよ。おいらじゃ力仕事のフォローは無理だからな」


「えっと、そのエレインって言います。パックちゃんに誘われて来ました。その、わたしを徒党に加えて、貰えますか?」


「そういや、おいらの名前を名乗ってなかったな、おいらはパラナ・クレイン、クレインは親父の名前だ、クレインの子供のパラナって意味だな。別に貴族ってわけじゃないぜ。パラナでもパックでも好きな方で呼んでくれよ。それはそうと、エレインを徒党に加えてやってくれよ」


 まさか、女の子が徒党に入ってくれることになるなんて考えてなかった。正直気恥ずかしくて女の子に声かけるとかできなかったから、このまま男だけの徒党になるだろうなって考えてたんだ。アキナとガイの方を見てみると二人も満更でもなさそうだ。これは断るわけにはいかないな。そういやパックって男なんだろうか女なんだろうか? 小人族は男女で見た目があんまり変わらないからよくわからない、可愛い顔はしているけど、まあ別にいいか。


「そ、そうだな、アキナ、ガイ、別にかまわないよな?」


「あ、ああ、オレもかまわないぜ?」


 ガイも肯いているし構わないようだ。


「こっちは大丈夫だ、一緒にがんばろう」


 そう返事をするとエレインは、ふかぶかとおじぎをしてから


「ありがとうございます、足を引っ張らないようにがんばります」


 と、返事を返してきた。


「よーし、とりあえず徒党は組めたようだな!」


「今日からしばらくそのメンバーで仕事をしてみろ。そのうえでどうしても合わないと感じるようなら、無理をする必要はない。今の徒党を抜けて別の徒党に入れてもらうなど対処していけばいい。危険な場所で背中を預け合う仲間になるのだからな。ある程度の妥協は必要だろうが信頼関係をきちんと築ける相手と組めるようにしておけ」


 中庭には、四つの集団ができた、オレたちの徒党と、男だけ四人と男三人女一人、五人組が一つだ。五人組のところには女性が二人いた。


「では、早速仕事に取り掛かってもらう……、と言いたいところだが。まだやることがある。狩人ギルドのカウンターにおっさんが居ただろう。あの人が狩人ギルドの受付も兼ねてやっている。名前はダランさんだ。ダランさんのところに行って魔石拾いの仕事をすることと、徒党のメンバーを控えてもらう。仕事に行く際は狩人ギルドで、どの仕事でどこに行くのか登録してもらう必要がある。登録してもらわずに勝手に仕事しようとしても門で兵士に止められるからな。必ず毎日登録してもらいにいけ。訓練に使っている両手棍は仕事にそのまま持って行って構わない。ではいくぞ」


 オレたちは、立てかけてあった両手棍を持ち、ダランさんのところに向かった。


「よく来たな新米ども、ここで登録をしてやる、徒党ごとに順番に全員の木札を見せろ。仕事の登録をしてやる」


 ダランさんはそう言うと、羊皮紙とペンを取り出した、紙とペン、そしてインクは高級品だ。あの紙一枚で土魔石十個くらいの値段がするらしい。ペンとインクはもっとするだろうな。贅沢とも言えるけど、仕事の登録というのはそれだけ重要なことなのかな。いまいちその重要性とか解らないけど、まあ別にオレたちが、紙代とか出すわけじゃないしどうでもいいことか。


 オレたちの徒党は登録を最後に行うことなった。特に理由があったわけじゃなく単に順番が最後になっただけだ。次々と他の徒党が登録を済ませ、なにか木札を貰ってギルドから出ていく。オレたちも、特になにも問題もなく登録を済ませた。さて初仕事だ、早速行こう……、そう思って、なにか違和感を感じた。なんだろう、なにか足りていない、そんな違和感だ。


「みんな、ちょっと待ってくれ」


 オレは徒党のみんなを呼び止めた。


「ん? なんだよ、サンタ」


「いや、なんか、その、足りてない気がするんだ」


「なにが足りてないんだ?みんな居るし、武器だって持った、あとは仕事に行くだけだろ?」


 アキナは、そう言ったが、何かが足りない。みんなを見渡してみてやっぱり足りないと感じた。


「いや、うーん…、あっそうか!」


 そうだ、みんな村から出てきたばかりの恰好でクツも村で使っていたような粗末なものなんだ。エレインに至ってはスカートだ、これから森に入るというのにスカートでは満足に動けないだろう。


「装備が足りてないんだ。ほら、森に入るのに、そんな粗末なクツじゃ足をケガしてしまう。エレインだってスカートじゃないか、せめてズボンに穿きかえたほうがいいんじゃないか?」


「そっか、そういやそうだな。でも、クツとかどうするんだ? オレとガイは金ないし、少々ケガしても今日稼いだ魔石で買うしかないんじゃないか? パックとエレインも金なんて持ってないだろ?」


「そうだなー、おいらも手持ちの金はないぜ、エレインはどうだ?」


「あの、その、わたしも街に来る時に行商人さんに連れてきてもらうのに使ってしまって……、その、まったくないんです、ごめんなさい」


 そっか、そうだよな、普通はそうなんだよな。でもオレには、わずかだが金がある。村に居る間に貯めたなけなしの魔石ではあるけど。


「それなんだけど、オレはちょっとだけだけど魔石を持ってるんだ」


「そうなのか? だったら、サンタはクツとか買えばいいさ、オレたちは今日稼いだ魔石で明日にでも買うことにするからさ」


「いや、ここはオレの魔石を使って徒党の装備を整えたい」


「はぁ? いや、その申し出はありがたいけど、いいのか?」


「いいんだ、徒党のみんなの安全性が高まるということは、オレの安全性も高まるってことだからいいんだ」


「そうか……、そういうことなら、お言葉に甘えさせてもらってもいいかな」


「それじゃ、ダランさん、みんなの分のクツとエレインが穿けるズボンって、売ってるところ知ってますか?」


「中古で良けりゃここにもあるぞ。そうだな、全員分のブーツとズボン一着だと、土魔石で七十個ってところだな」


「えっ? わ、わりと高いんですね」


「そりゃそうだろ、中古とはいえまだちゃんと使えるもんだからな。で? どうする?」


「えっと、水魔石って土魔石より高いんですよね? どれくらい高いんですか?」


「そうだな、この街では水魔石は土魔石五個分くらいで取引されているな」


「そうなんですか」


 オレは魔石を入れている袋の中身を確認した、土魔石が二十三個、水魔石が十個入っていた。ギリギリだ。立替えると言ったのに足りなかったら恥ずかしいってもんじゃなかったところだ。しかし、立替えるとなけなしの魔石がほぼ無くなってしまう。うーん、いや、ここで前言撤回なんて恥ずかしい真似はできない、ええい払ってしまえ。


「それじゃあ、これで支払いお願いします」


 オレはそういって袋から、土魔石二十個と水魔石十個を取り出した。ダランさんは、魔石を手に取り確かに魔石だということを確認してからカウンターの向こう側にある部屋に一度入っていき、しばらく探してクツを五足とズボンを一着持ってきてくれた。


「できればクツは靴屋にきちんと足にあったものを作ってもらったほうがいいぞ。その分高くつくがそれだけの価値はある。あとはそうだな、服ももっと丈夫なものを仕立てろ、そんなんじゃあ、すぐボロボロになっちまうぞ。それと、これはサービスだ」


 そう言うとダランさんは、五対の皮手袋を渡してくれた。


「森の中じゃ尖った枝とかトゲのある植物なんてものも多いからな、皮手袋で手を守っていないと傷だらけになるぞ。持っていけ」


「あ、ありがとうございます」


「普通、新米はケガして思い知ってから装備整えようとするもんだけどよ、お前は事前に準備しようとしてたからな。しかも身銭を切って仲間の安全を買おうなんて、ちょっとできねぇことだぜ。だからサービスしてやったんだよ」


 なんか、ダランさんはちょっとだけ照れくさそうにしてる。


「お嬢ちゃん、あっちに着替えができる部屋あるから、そこでズボンに穿きかえてきな」


「あ、はい」


 エレインは返事をすると、指し示された部屋に入って着替えをしに向かった。残ったメンバーはそれぞれブーツを履き、手袋を装着して待つことにした。


 しばらくしたらエレインが出てきた。上着とズボンのデザインがチグハグでお世辞にもおしゃれとは言えない恰好になってしまっていた。だが、これはしょうがないだろう。これから行くのは森なのだ、おしゃれより安全、それがなにより優先される仕事場なのだから。


「よっし、それじゃみんな、仕事にとりかかろうぜ」


 アキナがそう宣言した、その背中にみんなついていく、それはオレも一緒だった。

読んでくれてありがとうございます。

書いてるうちに長くなって一話に収まり切らなかった。

仲間に可愛い女の子が加わるのに拒否する男子が居るだろうか?

いやいない!!(断言)

しかし、完全にアキナがリーダーなってる。でも、主人公はサンタです。

一般的な人間は背が高い割に力が弱いという理由でのっぽ族と呼ばれてます。

ゴブリンは、小鬼族の一種、鬼族は基本的に背丈の割りに腕力が強いよ。

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