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倉庫の中で二人きり(現実的には一人)

短めですあ

 わたしには好きな人がいた。家族だって友達だってたくさんいた。


 けれど、もう二度と会うことも話すことも見ることさえもかなわなくなっちゃった。

 

 それは、わたしがもう死んでしまったから。ただし、死んでしまったといっても幽霊になっているわけではないんだよね。


 わたしは一度死に、もう一度生まれ変わったのヨ。…よく転生とか言われているアレなのヨ。


 まあ、転生の先は、なんか貴族で金持ちのお屋敷でとても裕福な暮らしをさせてもらっておりました。  あ、ちなみに地球ではない異世界っぽいところね。名前だってネモフィラなんておかしな名前だし。


 今のわたしの年齢は約2歳(精神年齢は大体高校生くらい)で、とってもとっても愛らしい可愛らしい(言い直した)ぽよんぽよんなお腹のふわふわの髪のお姿なんだけど、とにかく問題が発生しました。


 …いや、でもなんだか言うのをためらってしまうような内容で、別に誰に話しかけているわけでもないから頭の中のお友達とお話しをしているのだけれど…。


 ……言っちゃう?ねえ、言っちゃう?ベリ子ちゃん(わたしの頭の中の住人)、貴方どう思う?


 え、言っちゃえって?うんうん言っちゃおっか。





 はい、わたし誘拐されましたーー。


 冒頭で話したことと全く関係ないんだけど、とりあえずわたし誘拐されちゃったのよ。 


 ていうか本当に関係ないね、最初の3,4くらいの言葉以外は全部どうでもよくなっちゃってるみたい。


 でも毛布に包まれて変な倉庫っぽいところに置かれてからもう一日経ってしまって…頭おかしくなっちゃいそうでベリ子ちゃん(本名ベリースマリアコルト)なんてお友達を作って必死に耐えていたのよ~。


 つまりメイドっぽいお世話係りみたいな人とお庭でお散歩していたときにお菓子が飛んでいるのが見えたからついつい追っかけて行っちゃって気がついたら周りに誰もいなくて、それでマスクしたひとに毛布で包まれてこんなところまで来ちゃったわけなのだよ。


 だけど、わたしが誘拐されることの意味っていったらお金でしょ?もしかしてわたしが可愛いからなんて無いよね。

 

 あとねあとね、もひとつ問題があるの。問題といってもね、生まれたときからわかっていたんだけどね、考えないようにしてただけなんだけどね。


 わたしね、女の子じゃないのよ。髪の毛はふわふわといっても真っ黒黒だし子供にしてはに長い髪だけど男の子なのよ。

 

 あ、中身はもちろん女だよ?


 それでね、それでねベリ子ちゃん。なんでいきなりこんな話しだしたかというとね、とにかくいろいろストレスになってってさ…。わかってくれる?

 

 んー?なんだって?まだ頭の中のお友達を引きずってるのかって?


 だって寂しいんだもの…一人だし。やっぱり家でも外でも倉庫たぶんでもわたしは一人なのね…。


 お父様は仕事で全く帰ってこないしお母様はわたしを着せ替え人形としか見ていないだろうしメイドとかお兄様とか(そうです、わたしには血の繋がった兄がいるのです)も嫌々わたしの面倒見てるし…もちろん物分りのいい問題を起こさないいい子でいるけど…それに前世でも好きな人に相手にもされなかったし…。


 ……前世の私の好きな人ってそういえば彼女いたんだったかなぁ?幼馴染でもなんでもないただ一度きりだけ隣の席になっただけのわたしなんて彼女がいれば相手にしなくて当たり前なのだけれどやっぱり辛い物は辛い。


 きっとわたしの好きな人に彼女がいたことを知るのはわたしだけなんだろうなー他の人には秘密みたいなふいんきあったからなー、あれ?クラスのお調子者な男子に目撃されてばらされたんだっけ?…あの時は凄くあせってたなー…


 「い、いや違う!俺は安奈と付き合ってるんじゃない!安奈に迷惑だろう!」


 とか言っちゃってさー…。わたしには苗字よびで他人みたいな感じだったのに安奈あんなだなんて名前で呼んじゃってるし、誰もいない教室で2人仲良さげに話してたりさぁ…(怨)。


 



 



 ところで、わたしはいったいいつになればここから助け出してもらえるのでしょうか。

 もしかして、毛布に包まってるだけで自分で抜け出せるのか?

 ちょっと、これで試してみて抜け出せたら泣くぞ。わたしの一日はなんだったんだ…時計無いから大体一日ってだけだけど…。

 それに喉渇いたしお腹減ったなぁ。


 とりあえずぴったりくっついちゃってる密着性で粘着質(自分で言っていて意味よくわかってない)な毛布を引っぺがして見ますか。

 

 おっ、なんだか普通にとれた。えー…やっぱり包まってるだけかぁ。。

 とてももこもこして気持ちいいしデザインも可愛い毛布だな、ボタンと紐がついていてコンパクトに畳めるみたいだし持っていこうっと。


 

 倉庫の中は薄暗く、また何も無いみたい。どこかで見覚えのあるような倉庫らしい倉庫ではなく、がらんとして風が外から入り込んでいてすこし不気味。

 そもそもここが本当に倉庫なのかはわからないけれど、今はその問題は考えないことにした。

 わたしの今生きているこの世界では、魔法こそ無いがとてもファンタジーな世界だった。猫耳や兎の耳がついた獣人族がいたり耳の長いエルフと呼ばれる弓矢の名手が少数ながらいたり炎や風の妖精の力を借りて生活(魔法ではない)する人種だってたくさんいるのだ。こんな倉庫だってきっとあるに違いない。


 そういえばその中でわたしは、人間だった。長命族エルフ獣人族ケモノなどは人間とは呼ばれないが、わたしは本当に純粋な人間だったのだ。

 人間といっても地球などにわんさかいるような人間とはまた違い、力が強く個体によってはかわるけれど足が速かったり凄い高さまでジャンプできたり頭が良かったりとエルフ並みに人数が少なくはあるがとりあえずなんか凄いなァって感じなのだ。そう、うん凄いねェって感じだ。そこまで強くも無いけどね。


 そんなファンタジーなこの世界で、どうして日本にいたときのような倉庫があるのか。それは謎だが脱出出来てから考えることにしよう。


 倉庫の中には窓は無く、扉は一つでその扉の前にはリュックがあった。本当の意味で何も無いこの倉庫に一つだけぽつんとある先程までは見つけることの出来なかったそのリュックはすぐにわたしの視界に飛び込むように来た。さっき無かったのに何であるねん。びっくりするわアホ。

 わたしはよてよてとお腹が減ってぼおっとする頭を叩いて歩いてリュックの元までゆっくり歩いた。





 


 あー…腹減った。喉乾いたわ。そういや昨日晩御飯食べてないじゃない、昼ごはんも。昼ごはん前の運動でお腹へってお腹へってついついクッキーを追っちゃったんだっけねー。食い意地張ってるんじゃないよ。


 あ、リュックの中に食べ物とか入ってないかな? 

 やば、わたしあったまいー。


 さてさて…何か入っていないかなァ?ごそごそ。

 ごそごそごそごそ。ゴキブリのようにごそごそ。


 …なんか馬鹿らしくなってきました。

 中に入っていたのは、空のビンと着替えとかっさかさでいっぱい入っているパンもどきと増えるわかめ的な増える果物(パッケージにそう書いてある)。本とノートと鉛筆と、ナイフと手袋とゴムっぽい皿。この皿って最近売れてる新商品じゃん。ていうか結構入ってるんだな…まだ中の5分の一ぐらいだ。

 えーと、何かの分厚い攻略本と懐中電灯と電池と…ってこんなものこの世界にあったっけ!?

 …ま、いっか。次見てみようっと、裁縫セットとロープと銀マットと寝袋とソーラー電池のランプとなんかカサカサするジャンバーと小さい折りたたみ傘みたいな四角い謎のもの、このへんほとんど前世の物だな…。


 それはそうと、なんでこんなに物が入っているんだ?

 周りに誰もいなくてそのうえで子供用のリュックがあるってことはこのリュックをこっそり持っていっても誰にも気付かれないんだろうけどさ。

 この中身だったらサバイバルでもできちゃうよ!

 

 …え、なに、まさか図星?いや、でもサバイバルなんてするわけないし…ドアを開けたら普通に自分の家の前だったりすると思うし…。


 ええい、ドアを開けてしまえ馬鹿もんがァ!!



 ガチャ、キィィィィィィィ…(これは実際の効果音ではなくネモの頭の中だけの物である)





 




 あ、わたし死にました。

 

 まさかここがジャングル的な森で人が他にもいてなんてことが有り得るわけありませぬ。

 

 はい、これきっとわたしの夢ですねーーーーーー。






 「お、おい!あそこに小さい子供がいるぞ!」


 「…子供ぉ?ってまだあんなに小せぇのに…ああ、俺ら本当にどうなっちまうんだよ…」





 はい、これきっと現実ですねーーーーーーーー。

 

 


 


 

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