激突!鉄の塊!
現代日本、大勢の人々が行き交うスクランブル交差点に男が立っていた。
その男の名は阿久里勝男
身長195cm 体重110kgの大男は、ある一点を見つめていた。
ビラ配りをしていた金髪のイケメンをただじっと見つめていた。
「なんて素敵な方…」
勝男は思わずそう呟いた。
金髪のイケメンはビラ配りしていただけだが、勝男にはその動きの全てが美しく見えた。
勝男はイケメンに話しかけた。
しかしイケメンは逃げ出した。
ピンクの服を着た大男が迫ってきたからだ。
線路沿いをひたすらに走る。
イケメンは死を覚悟した。
捕まったら死ぬ、そう思い必死に逃げた。
しかし勝男は既にイケメンのすぐ後ろまで迫っていた。
イケメンはフェンスをよじ登り、線路を渡ろうとした。
しかしそこへ電車が走ってくる。
イケメンは硬直してしまった。
もうだめだ…、そう思ったとき、後ろから大男に突き飛ばされた。
その直後、大男に電車が激突する。
「うおおおおおおおおおお!!!!!」
勝男は電車を受け止めた。しかし電車は止まらない。
凄まじい衝撃を全身に受けながら、勝男は電車にブレーキをかける。
足が地面を抉りながらも、勝男は踏ん張る。
衝突から30m離れたところで、とうとう電車は止まった。
勝男は膝から崩れ落ちた。
(あの方は無事かしら…?)
薄れゆく意識の中、勝男はイケメンが無事なことを見届けて、息を引き取った。
勝男が電車を止める必要はありません