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GⅡー30 今度はクレイ達と

 武器屋の主人が要求した金額が金貨1枚と10枚の銀貨。果たして高いのかどうかは、その完成を待ってからになるな。

 家に帰り着くと直ぐに食事が始まる。私を待っていたようだ。


 「前衛の男の子がやってきたとキティちゃんが話してくれましたけど……」

 「私のパーティではなく、ラケス達のパーティです。冬の罠猟には是非とも欲しいですから。キティ達には私がいますから十分です」

 「私のところは、4人ですけど、やはりもう一人位は必要なんでしょうか?」


 そんな質問をネリーちゃんがしてくる。ネリーちゃんのところの男の子は槍を使うそうだ。2m程の短槍はなかなか使いでがあるだろう。その後ろをネリーちゃん達が守るのだから十分なんだろうけど、ガトルの群れは10頭ぐらいにしておきたいところだな。確かに、もう2人いるなら倍は可能だろう。


 「ガトル止まりならそれでも十分よ。後2年もすれば、リスティンやイネガル狩りの手伝いも出来るでしょうしね。でも、ネリーちゃんのところの男の子は槍だけなの?」

 「数打ちの片手剣を差してます。でも、使ったことは一度もありません」


 数打ちなら殴れるからそれでいいだろう。斬るとなったら少し教えなければいけないだろうな。だけど、今までの狩りで使ったことが無ければ、これからだって使わずに済む可能性がある。ロディに杖を教えてもらった方が良さそうだ。両手に片手剣の使い方と似ているところがあるからな。


 「確かに悩むところでしょうね。4人パーティなら、そこそこ狩りが出来ますし、他のパーティと組めばさらに上を狙えます。ですが……」

 「伸び悩む……。と言うところですね」

 

 ミレリーさんの言葉に私が言葉を繋げると、小さく頷いた。

 「そういう事なら、キティ達をしばらくネリーちゃんのパーティに預けようか? ネコ族が1人いると色々と便利なのよ。それにリトネだってエルフ族だから魔法を気兼ねなく使えるわ。リトネは後衛でキティは中衛だけど、ネリーちゃん達とはレベル差があるから、2人ともネリーちゃん達の後衛にすれば丁度いい感じになると思うの」


 「狙いはガトルですか?」

 「条件さえ整えば、ガトル数頭を目標に出来るパーティになるでしょう。野犬なら30匹は行けるはずです」

私の言葉にミレリーさんが頷き、ネリーちゃんは目を輝かせた。

 

「条件と言うのが気になります」

リトネが、首を傾げながら私を見る。


 「冬の狩りは、相手に襲ってもらうの。それを迎撃するのが基本になるわ。色々とやり方があるけど、それはそんな狩りをする時に教えるわ」

 

 最後にネリーちゃんが、『パーティメンバーと相談します』と言っていたけど、それはしょうがあるまい。このまま4人パーティで狩りを進めてもとりあえずの問題はないのだから。


 それから数日過ぎると、キティ達はネリーちゃんのパーティと一緒に行動することになった。他のメンバーも、このままではあまりレベルが上がらないと感じていたようだな。リトネはネリーさんの勧めで、教会から私達の部屋に移って、キティと一緒にベッドを使っている。

 ミレリーさんの宿泊料は私が全額出すことになったけど、ミレリーさんは3人で一月銀貨30枚以上を受け取らない。


 「私も狩りをすることが出来ますし、それで十分です」

 そう言ってくれるのだが、ミレリーさんと、ダノン、それに宿屋のご夫婦で用心棒の計画を立てているらしい。

 アレクとグラムは対象外とのことだ。まあ、あの連中なら一人前と言っても良いだろうし、2つのパーティが合わさればリスティンだって十分に獲物に出来る。となると、残りはロディとネリーちゃんになるが、親子で同じパーティは問題がありそうだから、ミレリーさんはロディって事になるのだろう。ネリーちゃんのところには宿屋の2人が交代で行くんだろうか? そうなると、残ったダノンはどうするんだ?


 暑い夏が過ぎて、秋がやってきた。

 農家の収穫物を狙って、森から獣が畑にやってくると、それを狙う野犬達も移動してくる。

 赤や白レベルのハンター達がその技量を十分に発揮できる季節になったのだ。ギルドの中も活況を帯びてるな。数十人にハンターが増えているようにも思える。

 そんなある日、ダノンがちびっ子を連れてギルドから出て来るところに出会った。


 「あら? 今度はこの子達なの」

 「ああ、薬草採取を卒業して罠猟を始めるんだ。それなら俺が指導せにゃな」


 そんなことを言いながら、12歳ほどの子供を数人連れて南門に向かって歩いていく。ネリーちゃん達の次の世代なんだろうな。やはりこの町にはダノンが必要なようだ。早く嫁さんを貰えばいいのに、もうアラフォーになるんじゃないか?

 ダノンの後ろ姿を見送ったところで、ギルドの扉を開ける。カウンターの反対側にあるテーブル席を見ると、既に5人が私を待っていた。


 「さて、今日もラビー狩りと、薬草採取よ。ラケス、依頼書があるかどうか見てきてくれない?」

 ラケスが席を立って掲示板の依頼書を探している間に、シガレイに火を点けて4人を眺める。疲れた表情はしていないようだ。毎日数匹のラビーを狩れるようになってきたから、ラズー達も自信がついたように思える。問題は残りの3人なんだけど、ラビ―狩りをしている間に個人指導をする外にない。

 ベクトに教えたのは、真っ先にブーメランの飛ばし方だ。これが出来れば1人を教えている間に狩りが出来るからな。

 何とか1日で飛ばし方を覚えたところで、ベクトに長剣、ラケスに片手剣、そしてレントスに杖を教える。

 型を教えて、反復練習することで体に覚えこませる。そんな日々が一か月も過ぎたある日の事、狩りを終えてギルドに戻ってくると、私に依頼の品が届いた。


 「武器屋のご主人が届けに来ましたよ」

 「あら、やっと出来たみたいね。ベクトとラケスでテーブルに運んで頂戴」

 

 2人がテーブルに乗せた荷を解くと、出てきた武器を4人に分け与える。

 「ラケスには片手剣。私と同じように作ってあるけど、練度はまだ足りないわ。でも、これだけ鍛えた剣は王都でもそれ程ないと思うの。レントスにはこの杖よ。通常の魔法の杖と違ってそのまま相手を殴れるわ。アンとラズーはこの弓を使って頂戴。前の武器は売っても良いけど、出来ればダノンに預けて欲しいわ。安物だけど、それすら手に入れるのが大変なハンターだっているのよ」


 恵まれたハンターなんて、そんなにいるものじゃない。皆薬草を頑張って取って、それで数打ちの剣や低級な魔法を手に入れているのだ。使い古しだって、ダノンなら役に立ててくれるだろう。


 「新しい武器ですか……。皆変わってますね」

 「それなりの理由と利便性があるのよ。十分、ガトルに対抗できるわ。一応、青の上位になっても使えると思うわよ。弓は2年程したら、もっと強い弓に交換した方がよさそうだけどね」

 

 まだ少女だから、これからもっと腕力が着くだろう。どれだけ弓が上手くなるかたのしみだな。

 ラケスが武器を交換して、ひとまとめにするとカウンターに持って行った。

 戻ってくると、直ぐに新しい武器を身に着け始めた。今までの訓練がその武器を使って試すことになるのはいつの日だろうな。

 まだまだ練習が足りないが、雪が降る前には野犬を相手に出来るぐらいにしておきたいものだ。

                  ・

                  ・

                  ・


 いつものようにギルドの扉を開くと、暖炉傍にあるベンチに座っていたダノンが私を大声で呼ぶ。あまりの声にこっちが恥ずかしくなるぞ。

 とりあえず、プレセラ達が集まっているテーブルに片手を上げて、少し待って貰う。

 小さなテーブルを挟んでダノンの反対側に座ると、シガレイを取り出し指先に小さな【メル】を作って火を点ける。


 「姫さん。出たようだ」

 「出たって、何が?」

 

 ちゃんと主語を言って欲しいものだ。ガドラー辺りかな?


 「グライザムが尾根2つ先で目撃されてる。この季節、ハンターがあちこちからやってくる。グライザムの恐れを知らない連中が多いのが問題だ」

 

 そういう事か。カウンターを見て、マリーと目が合ったところで手招きする。直ぐに、やってき手渡しの隣に腰を下ろした。


 「ハンターのレベルはどうなってるの?」

 「黒3つが最高です。黒2つの3人と昨日狩りに出掛けました。イネガル2頭を狩るようです。次はアレクさん達ですね。この間黒2つになっています。青が4組に白が3組、赤は4組です」

  

 たぶん私が聞いてくることを予想していたんだろう、即答してくれた。だが、ちょっとレベルが足りないな。やはり私が出掛けることになりそうだ。問題は連れて行くパーティだが、グラムではまだ無理だろう。やはりクレイという事になるな。

 テーブルで、こっちを見ているラケスを呼び寄せると、今日は同行できないことを告げる。


 「分かりました。グライザムの話は聞いたことがあります。お気を付けて!」

 「場合によっては数日帰らないかも知れないわ。林に近づかなければ、そこそこの狩りができると思うの。もし、野犬が出ても逃げてはダメよ!」

 

 先ずは来ないだろうな。林の奥はネリーちゃん達の狩場だし、その奥はロディ達が猟をしているはずだ。それでも、絶対とは言えない。一言釘を刺しておけば気を付けるだろう。野犬ならば皆で殴れば十分撃退できるはずだ。

 ギルドを出て行く5人に手を振ると、再びダノンに視線を移す。


 「クレイ達を使うわ。黒2つなんでしょう? 私がグライザムを狩ったのは青の時代よ」

 「まあ、出来んことも無いんだろうが……。7人でだいじょうぶか?」

 「クレイ達も立派になったわ。2頭狩れれば自信も着くでしょう。次は、グラム達と一緒に狩れると思うの」


 私の言葉に納得しているな。グライザムを狩るなら、銀の実力が必要だとはよく言われる言葉だ。だけど、やり方さえ間違わなければ、黒でも十分に狩れる。この町の筆頭ハンターとしての実力を誇示するには十分だ。私が緊急時に介入するという事を、ダノンは暗黙の内に了解しているようだ。私だって、小さな子供を持つアレク達を危険な目にはさらしたく無い気はあるが、クレイ達の将来を考えると、一度経験させてやりたいと思う気持ちの方が勝っている。


 「クレイ達がやってきたら、引き留めておいて。ちょっと出掛けて来るわ」

 「たぶん昼過ぎには戻ってくるだろうな。ガトルの群れを狩りに出掛けたようだ」

 

 私は、ギルドを出て、武器屋に向かった。グライザム相手には槍は必要不可欠だからな。


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