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G-046 ロディ達の新たな仲間


 ぽかぽかと暖かい季節に成ってきた。

 暖炉から窓辺のテーブルに移り、日々緑が増してくる外の風景を眺めながら、ギルドで時間を潰す今日この頃である。

 

 薬草目当てのハンターの大部分が町を去り、住民も今は普段の暮らしに戻っている。農家は春の種蒔きにいそがしそうだな。

 クレイやマーシャ達は森に入って狩りをしているようだ。グラム達はダノンと一緒に罠猟をしているが森の縁を狩場にしているから、グラムの母親達もマリーも安心だろう。

 そして、ロディ達は荒地を中心に薬草採取をしている。精々野犬が出るぐらいだから、彼等で十分対処できる筈だ。


 つまらなそうに、シガレイを咥えていた私に、セリーがお茶を運んでくれた。

 私の前に座ると、トレイに載せたマイカップのお茶を飲んでいる。

 マリーはカウンターで帳簿を見ているようだから、ちょっと私と息抜きをしようということかな?


 「何時もロディがお世話になってます。今では一人前の口調で話すんですよ。おかげで食事の話題に事欠きません」

 「ロディは大成はしないかも知れないけど、皆に好かれるハンターになるわ。町に定住するハンターとしては十分よ。今年はむりでしょうけど、来年には後衛となるハンターを捜す必要があるわね」


 「それなんですけど、ロディ達の元遊び仲間の女の子が3人いるんです。この頃はロディ達だけで活動してるものですから、それを遠くから見てるだけなんです。ちょとかわいそうに思えて……」


 ちびっ子達が、ちびっ子仲間から卒業していくとそんな感じになるのかな?

 今までは皆で薬草等を探しながら一緒にいたんだけれど、今はそうではない。何となく取り残された感じがするんだろうな。

 増してや、女の子は早熟だ。ある意味、ロディ達に好意を持っていたのかもしれない。

 それは微笑ましいものだが、この場合はどうしたら良いのか検討が付かないぞ。

 ん!……ちょっと待てよ。ネリーちゃんもそんな事を匂わせていたような気がするな。

 確か、前衛はいるから友達と後衛になるようなことを言っていたぞ。

 

 「ロディ達に必要な存在は後衛です。彼女達が後衛に成れれば良いんですけどね」

 「後衛ですか?……簡単に言えば魔道師的な存在ですよね。女の子は男の子と違って無駄遣いはしませんから、赤の2つならば魔法を2つ位は買えるでしょう。

 でも、そんな彼女達をロディは受け入れることが出来るでしょうか?」


 「罠猟だけで暮らすなら、必要は無いかもしれないわ。でも、後衛がいれば格段に依頼を受けられる種類が増えるのよ。今はようやく野犬を狩る位だけれど、群れを相手にするには後衛がいるわ」

 「ロディ達の仲間を増やすなら他のハンターではなくてライズ達が良いです。気心も知れてますし、安心できます!」


 マリーも過保護だけど、セリーもブラコンのようだな。

 もっとも、ライズ達が魔道師になるかどうかで決まるような気がするんだけどね。


 「午後にでも呼んで来ますから、ミチルさん、よろしくお願いします」

 

 私に丸投げ?

 ぽかんと口を開けている私を無視して、セリーはカウンターに戻って行った。

               ・

               ・

               ・


 その日の午後、私のテーブルに3人の女の子が座っていた。

 私をジッと見ているんだけど、さてどうやって話を進めていこうかな。


 「去年までは、ロディ達と一緒に薬草を採っていたよね。

 でも、そろそろ薬草採取は小さな子達に譲ってハンターとして暮らすか、それとも町で暮らすかを考える年頃に成ったみたいね。

 ロディ達はハンターとして暮らすことを選んだみたいだけど、貴方達はどうするのかしら? 薬草を採って暮すのも1つの方法だけど、ハンターとして暮らすのだったら少しは力になって上げられるわよ」


 「私達はずっと一緒にハンターを続けられると思っていました。でも……」


 なるほど、ロディ達だけで先走ったという事か。

 一言、彼女達に話しても良かったと思うぞ。


 「それはロディ達に問題があるわね。でも、彼等だけでも罠猟なら行なえるのよ。罠猟なら少ない人数で済むわ。

 もし、彼等が罠猟だけで暮らそうと思っているならどうしようも無いけど、もっと積極的な狩りをすることを考えているなら貴方達が一緒に狩りに参加する手段があるの」

 「それって?」


 「魔道師になるのよ。ロディ達を前衛において貴方達が後ろから支援する。この方法で6人のパーティなら、赤の高レベルになれば野犬を群れで狩れるわ。白の中位ならばガトルさえ狩ることが出来る筈よ」


 女の子3人が額を寄せ合って小声で相談を始めたぞ。

 ちょっと椅子を引いてシガレイに火を点けると、その成り行きを見守ることにした。


 「ロディ達の狩りの方法で、私達が必要かどうかが分るんですね?」

 「受身の狩りなら、今のまま。積極的に狩るなら貴方達が必要になるわ」


 「直接聞いてみます!」


 そう言うと、3人とも席を立ってギルドを駆け出して行った。

 そんな光景を見てマリー達が驚いてギルドの扉を見ているぞ。

 まぁ、確かに本人達の問題なんだから、私が決めることではない。もし罠猟で暮すと言っても、彼女達はガッカリするだろうけど、この町を離れる心配がなくなるから安心できるのかも知れないな。一緒に働けなくとも一緒の町で暮らせるのだ。

 ひょっとして、彼女達の初恋って奴か?

 これは、おもしろくなりそうだぞ。

 

 心配そうな顔をしてセリーがやってきたけど、大丈夫と言ってあげた。

 これは当人達の問題であって、私達が介入すべき問題ではない。

 どちらを選んでも、それを見守ってあげるのが私達のスタンスだと思うな。


 夕方近くにダノンが1人でギルドに戻って来た。

 私のテーブルにやってくると、早速パイプを取り出す。


 「北の門に来たところで、娘っ子3人にロディ達が捕まってしまった。まるで浮気がバレた亭主を取り押さえるみたいに連れて行ったぞ」

 「ちょっとしたロディ達の先走りの結果よ。一緒に薬草を採っていた仲間に何の相談も無く罠猟を初めたからみたい」


 「それは問題だな。どんな顔をしてやってくるかが楽しみだ」


 ダノンにも少し裏が分ったようだ。たぶん同じような経験をしたのかもしれない。

 ダノンの前のパーティはこの町で罠猟を続けているが、彼等もまた幼馴染のパーティだったからな。

 

 夕方になって冷えてきたので暖炉の傍のベンチに移動して、ロディ達を待つことにする。

 どんな結果になったとしても、これからの彼等の身の上を左右するのだ。ちょっと興味があるのは私だけでは無さそうだ。ダノンやマリーそしてセリーも、ギルドの扉が開くたびに入ってくるハンターを見ているぞ。


 私はシガレイを咥えながら時間の過ぎるのを待つ。

 バタンっと扉が開いて、入ってきたのは昼間の女の子達だ。その後を生贄のヤギのような感じで3人が入ってくる。

 普段のロディの様子ではないけど……、どうやら押し切られたみたいだな。

 思わず笑みがこぼれる。

 ダノンもそんなロディを見て、私に小さく頷いていた。


 カウンターに行ってなにやら相談を始めたようだ。セリーが相手をしているけど、ちょっとロディを見て微笑んでいるところを見ると、セリーの希望が叶ったという事だな。

しばらくして、私達の所に6人でやってきた。


 「ライズ達とパーティを組みことになりました。今後ともよろしくお願いします」

 

 そう言って私とダノンにロディ達が頭を下げる。


 「頑張れよ!」


 そう言ってダノンがロディの背中を叩く。

 その光景をにこにこしながら見ていた私は、ロディ達に席に着くように言った。

 ダノンがベンチを立って、テーブルから椅子を持ってきた。

 空いたベンチと私の隣に新しいパーティが座って私を見つめている。

 ここは1つ訓示ってことになるのかな?


 「先ずはおめでとう。長い付き合いになるわよ。喧嘩をせずに互いを補佐すれば上位のハンターを目指せるわ。

 貴方達は6人なんだから、かなり優位に狩りをすることができる。でも、それにはパーティの中で自分が何をするのかをキチンと決めておく必要があると思うの。

 誰が前衛になって誰が後衛になるか。そして、出来れば前衛にも後衛にもなれる存在、中衛が欲しいわね。

 まだ、自分達の武器を購入していない貴方達なら、自分の性格にあった位置を決められるわ。良く話し合って決めなさい」


 「その辺りが良く理解できないんです。前衛はクレイさんやグラムさん達のような人達ですよね。長剣ってことになるんでしょう。そして、後衛はマーシャさんやケイミーさんのような魔道師ってことになります。となると、中衛ってどんな人なんですか?」

 「パメラが典型的な中衛よ。前衛の隙をカバーして、後衛の防衛も担当できるわ。使うのは槍と片手剣だけどね」


 ネコ族の者は生まれながらの中衛要員だと思う。

 鋭い観察眼と機敏な動き。あれは人間に真似することは不可能だ。

 

 「パメラと同じように成れなくても、魔法ではなく武器を使える魔道師や弓や槍を使うことで中衛になる事ができるわ」

 「相手と距離を置ける武器という事ですか?」


 気が着いたようだ。

 ちょっとした距離。これが意外と重要になる。前衛の隙を埋めて、後衛を守るには戦闘が出来る範囲が広いほど効果的だ。

 

 「ロディ達には杖を教えているわ。杖の戦闘範囲は広いのよ。中衛が要らないほどにね。でも、貴方達も守られるだけの存在にはなって欲しくないわ」

 「後衛ではなくて中衛を心掛けろってことですね。大丈夫です。ロディよりも私のほうがずっと強いですから!」


 私は思わず微笑んだ。

 ひょっとして、私と同じような存在になるのだろうか?それならば鍛えてあげなければな。


 「ゆっくり話し合いなさい。でもね、武器は自分の腕と同じように使える物を選ぶのよ。……そうだ! パーティ登録をしたんでしょ。ねぇ、何て名前にしたの?」

 「『ベラトリス』と名乗ることにしました」


 ベラトリスって星の名前だよな。確か冬の明るい星だった筈だ。

 でも、あれって確か気の強い女神の名前だったような気がするぞ。何となくロディ達の将来を暗示しているようでもある。

 ダノンも苦笑いをしている。やはり考える事は同じってことだろうな。



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