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G-043 中堅ハンターのために


 暁のグライザム問いうパーティは驚くことに4人とも黒の5つ以上だ。

 薬草採取で賑わっている僻地の町にやってきた理由をダノンが教えてくれた。


 「どうやら、姫さんと似たような考えらしいぜ。山に入る若手ハンターの先回りをして大型肉食獣を狩ろうって魂胆だ」

 「私と同じようにご隠居の依頼なのかしら?」


 「どうやら、そうじゃないみたいだ。普段は東の方で狩りをしているらしいが、雪解けの季節だけは山間の町や村に足を運ぶと言っていたな」


 早朝のギルドでグラム達と待ち合わせをしているのだろう。

 暖炉傍のベンチに座って私の昨夜の出来事を話してくれた。


 「都合が良いわね。昨日、ガドラーを狩りたいと言っていたハンター達がいるのよ。武者修行のハンターだと思うんだけど、青9つが4人だから諦めさせたわ。でも、グライザムのパーティならば余裕で面倒がみれる筈だわ」

 「だとしたら、この2つを何とかして貰ってくれ。どちらもガドラーだが、この辺りは中堅ハンターの良い狩場なんだ」


 バッグから地図を取出し、尾根2つ程離れた北東の場所を指差した。

 一つ目は、尾根の下に広がる森で、2つ目は昨年グライザムを狩った辺りだな。


 今回の薬草採取で赤5つ以下を入域禁止にした区域を示す地図を広げて、ダノンの告げた区域を写し取る。

 

 「上手く頼んでくれよ。それじゃあ、出掛けてくらぁ」

 

 グラム達がやってきたようだ。彼等に片手を上げてダノンが席を立った。

 カウンター近くで立ち話をすると、直に出掛けようとする彼等に、私は片手を振って激励する。


 お茶を飲んで待っていると、数組のハンターがやって来る。

 この時間だと、薬草採取では無さそうだ。

 大方、ガトルや野犬を狩るハンターなのだろう。

 そんな依頼が数枚張ってあったな。


 「お早うございます。昨日はどうも……」

 

 そう言って私の前のベンチに腰を下ろしたのは、ガドラーを狩りたいと言っていた青年達だ。

 私は、のんびりとお茶を飲みながら次の言葉を待った。


 「宿の酒場が盛り上がってました。そんなハンター達にガドラーを聞いたのですが。やはり、私達には少し早そうです。昨日は止めて頂いて有難うございました」

 「礼はいらないわ。……それでも、ガドラーを一度は見たいと思ってるの?」


 「興味はあります。ですが、命には代えられません」

 「ガトルは余裕で相手に出来るでしょ?」


 私の言葉に力強く頷いた。

 詳しく話を聞くと、男女4人のパーティは長剣が2人に魔道師が2人。そして魔道師であると同時に弓にも精通しているらしい。

 魔法は、まぁ普通だな。メルトは使えないが初級は殆どものにしているようだ。

 ということは、中流貴族の次男や次女ってことか……。親の後を継げないから早めにハンターに成ったのだろう。ある程度資金を融通して貰って魔法を買い込んだようだな。


 「という事は、【アクセル】と【デルトン】を使えるって事よね。少し、ここで待っていれば、ひょっとしてガドラー狩りに同行できるかもよ」

 「本当ですか? それなら、ここで待ってます。昨日狩ったガトルで2日程は狩りをせずに暮らせますから」


 そんな彼等と町の様子を話しながら待っていると、昨夜の男達がギルドに現れた。

 私を見とがめて、早速やって来る。


 「昨夜はすまねぇ。有難く飲ませて貰ったぜ。困った事があれば言い付けてくれ。あんたの頼みなら喜んでやらせてもらう」

 「早速で悪いんだけど、ちょっとお願いがあるのよ……」


 男を座らせるとテーブルの上に地図を広げる。

 町の位置と主要な目印を教えた後で、獲物のいる場所を示した目印を指差す。


 「ガドラーよ。こちらが1頭。こっちは2頭の目撃例があるの。この範囲から先は赤5つ以下を入域禁止にしているけど、雪が融ければ中堅の良い狩場よ。今の内に何とかしたいわ」

 「分かった。だが、青の中堅のパーティを紹介してくれ。ガドラーにはそれが必要だ」


 「こっちの4人は青9つ。ガドラーを狩りたいって言ったので止めたんだけど、一度は目に見させてやりたいわ」

 「なら、問題ねぇな。直傍で見せてやるぞ!」

 

 そう言って青年の背中をバンっと叩いた。

 ちょっと前のめりになってたぞ。

 直に、掲示板に仲間を行かせて依頼書を持ってきた。


 「なるほど、3頭だな。……一応臨時のパーティになる。悪いがレベルは俺達が上だから指示には従って貰うぞ。そして報酬は頭割りだ」

 「私達はそれで良いですけど……」


 「パーティが不足なら他のパーティと合同で獲物を狩るのは良くある事だ。その時は、どんなにレベルの差が開いても頭割りに変わりはねぇ。あんたらは他のパーティと組んで狩ることが初めてなんだろう。その辺は、良く教えてやる」


 私は改めてグライザムのパーティを率いる男に頭を下げてお願いする。

 そして彼等はテーブル席のほうに移ると狩りの相談を始めた。

 黒の9つだけあて、慎重だな。青年達にも良い経験になるに違いない。

                ・

                ・

                ・


 一段落が済んだところで、席を立ってギルドを後にした。

 マーシャ達の様子も気になるからな。

 南の門を出ると、昨日よりも人が出ているように見える。

 たぶんハンターが増えたんだろうな。


 南に道を歩いて、かなり土が顔を出した荒地を小川の方に向かって歩き出した。

 そして、遠くにマーシャ達が薬草採取をしている光景を眺めながら、昨日と同じように毛皮を敷いてシガレイを咥える。


 昼を過ぎて、日が傾くにつれて薬草採取の人影が少なくなるのは昨日と同じだ。

 新らしいシガレイに火を点けて立上がり、周囲を見回した時だ。

 マーシャ達が少し移動して、雑木をバッグにして林を見据えている。

 前衛の少年が持つ長剣が引き抜かれた。


 林の中から20匹程の野犬の群れが飛び出してきた。

 どうやらマーシャ達に狙いを付けたようだが、そのまま荒地を駆けあがった先には数人の町の住人が一生懸命に薬草を採取していた。


 急いで毛皮を畳むとバッグに押し込んで西に向かって駆け出す。

 こっちには来ないだろうが万が一ということもありえるからな。

 

 「危ないですよ!」

 

 私の声に振り返った婦人達に荒地の下を指差した。

 そこでは、マーシャ達が野犬を相手に頑張ってるようだ。


 婦人達は黙って頷くと足早に町に帰っていく。

 あらためてマーシャ達の様子を見ると、基本に忠実に棒で殴っている。

 あれが一番楽なんだけど、少し強さが足りないかな?

 手負いになると凶暴になるんだが、どうやら男の子達が盾になってマーシャ達を庇っている。うんうん、男の子ならそうでなくちゃな。

 手傷は負っても大怪我を負わなければ今のマーシャ達なら合格点だ。

 私が手を出さずとも何とかなりそうだな。


 10分も掛からなかったんだろうけど、私には長く感じたマーシャ達と野犬との戦いが終ると、早速手分けして野犬の処置を始めた。毛皮は林の中で剥いでいるようだ。

 まだ、荒地の土は凍っているのだろうか?

 それでも、同族の亡骸があればしばらくは野犬も近付かないだろう。

 

 こっちを見ていたので手を振ると向うも手を振ってくれた。

 そして帰り支度を始めたようだ。私も周囲を見まわしたが、既に薬草採取をしているのはハンターだけになっている。

 確かに、切り上げ時だな。

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               ・

               ・


 ギルドに戻ると、ダノン達が暖炉でくつろいでいる。

 「お疲れ様!」と言いながら、ベンチに腰を下ろすと、お茶のカップがすかさずグラムから渡された。


 「ありがとう。マーシャのところは野犬が出たわ。20位の群れだったけど、何とかし止めたわ」

 「そっちもか? 北も出たぞ。数は同じ位だが、クレイがいるからな。数匹流れてきた奴は俺達が始末した」


 ダノンの説明にグラム達が頷いている。

 

 「結構、使えるようになったわね。これからも頑張るのよ」

 

 私の言葉に胸を張って頷いてるから、クレイ達は失笑してるぞ。

 それでも、これでしばらくは持つだろう。

 群れを2つ潰しているから野犬達のテリトリー争いが始まるだろうし、それが一段落するには数日は掛かる。彼等に依頼した期日は後8日残っている。もう1回は襲撃があると考えた方が良いだろうな。


 そんな所に、マーシャ達が帰ってきた。薬草の売り上げに、野犬の牙と毛皮の報酬が入るから、今日は大満足に違いない。


 「野犬は21匹でした。ご心配お掛けしました」

 「ちゃんと全部倒したじゃない。ちょっと心配になって動いたけど、必要なかったなって反省してたのよ」


 「どうにかです。今年はガトルを目指そうと思っていたんですが、もう少し実力をつけてからにします」

 

 そんなマーシャに微笑みながら頷く。

 確かに少し早いな。でも、クレイと組むなら十分に倒せるぞ。

 それはクレイとマーシャへの宿題にしておこう。

 

 「とりあえず、しばらくは出ないと思うけど楽観は出来ないわ。しばらくはこのままの態勢で行きましょう」


 解散を告げて、私は下宿に帰る。

 途中にある酒場からは、酔った連中の大きな声が通りまで聞こえてくる。

 少しずつ暖かくなってはいるのだろうが、日が落ちた通りは結構冷えるな。

 そして下宿の扉を開けると、「お帰りなさい!」という元気なネリーチャンの声で迎えられた。


 「ただいま。今日も沢山採れたの?」

 「これが、2回目だよ。1回目はザルに広げて乾燥させてるの」

 

 そう言って、奥の椅子の上に載せた平たいザルを指差した。なるほど沢山のグリルが茹で上がって乗っている。

 このまま一晩、暖炉の傍に置いて水気を切って薬剤ギルドに引き渡すんだな。

 

 「あら、気が付きませんで……」

 「良いですよ。お構いなく。今が一番ですからね」


 そう言っては見たが、ミレリーさんは私にお茶を入れてくれた。

 薬草はネリーちゃんに任せて食事の準備を始めるみたいだな。


 「色々考えてみたんだけど……、私は魔道師になるんだ! 今年はだいぶ薬草も取れたし2つ位魔法が手に入りそうなの!」

 「そうなんだ。魔道師は後衛だけど大変なのよ」

 

 「うん。でも、皆で長剣を持ってもダメだと思うの。私とケイムちゃんで魔道師になろうって決めたんだ」

 

 確かに全員が長剣ではグラム達のようになってしまうな。

 ネリーちゃん達の方がマシに思えるぞ。ちゃんと前と後ろを考えてるみたいだし……。

 そういえば、グラム達の剣の腕は上達したんだろうか?

 少し教えてはあげたが、あれから構ってあげなかったな。

 初撃は教えたが、やはり次撃も教えたほうが良いだろうな。

 明日の朝にでもちょっと練習の成果を見てみよう。

 

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