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GⅡー59 灰を撒けば姿が見える


 ネリーちゃん達のガトル狩りはとりあえず後回しにして、メズーニを何とかしなければならない。

 一応、魔物だけど水棲だから湖の南東にある湿地に向かう事になる。もう1日先を急ぐことになりそうだ。


 翌日の夕刻には、湿地を見下ろせる小高い丘の斜面で野営をする。

 メズーニが住み着くと、他の獣達があまり見えなくなるんだよな。姿を見せない狩人に怯えてしまうのだろうか?

 ガトル辺りならば匂いで容易にメズーニの存在がわかると思うのだが……。


「明日はいよいよ狩りを行うわ。とは言っても、2段階の狩りを行うの。最初はシバレイネを狩って、餌としてばら撒く。シバレイネの皮は装飾品になるから狩ったら皮を剥いで頂戴」


 夕食が終わったところで、明日の狩りの段取りについて説明を始めた。

 お茶のカップを持ちながら皆が真剣に耳を傾けている。


「メズーニの狩りが難しいのは、相手が見えないというか、見えずらいことにあるの。それだから獲物に容易に近付いて、前足の伸びた爪で攻撃できるんだけど……」

「あの傷がそうなんですね。ですが、ネコ族であれば接近に気が付くのはたやすいのではないでしょうか?」


 グラムの質問に笑みを浮かべて頷いた。


「接近した事は分かるはずよ。でも姿が見えないから戸惑うと思うわ。パメラにケイニアとキティなら分かると思うけど、相手が見えなくとも自分の勘を疑わないように注意してね。それと、上手く狩れればミケルが匂いを覚えるから、次の狩りはもっと簡単になるわ」

「匂いで方向と距離が分るからな。100D(30m)以内なら確実だ」


 うんうんと頷きながらミケルが呟く。イヌ族の追跡能力は、相手の接近にも使えるからね。


「だけど、今回は初めてだから、変わった匂い……。そうね、生臭い匂いに注意すれば良いわ」


 少しはマシって事になるんだろう。風があると曖昧な情報になるのだが、ネコ族の勘以外に頼れる手段があると言う事はありがたい話に違いない。


「話を続けるわ。今回は私以外メズーニを知らないから、安全策で行きます。餌をばら撒くのは林の間にするわ。餌を撒いたところで、枯れ枝を周囲にばらまく。それが終わったところで全員木に登るの……」


 木の枝に腰を下ろしてメズーニの接近を待てば良い。ネコ族の3人が接近を教えてくれるだろうし、餌に近付けば枯れ枝を踏む音がする。


「枯れ枝を踏む音を目安に矢を放ちなさい。怒って立ち上がると体の保護色が消えるから、皆で攻撃すれば良いわ。【アクセラ】を事前に掛けてあげるから、ガトル程度の動きなら相手にできるでしょう?」

「魔法で攻撃しても?」

「メズーニの換金部位は心臓近くの魔石だから、どんどん放ってもだいじょうぶよ」


 話を終えたところでシガレイに火を点けた。

 パーティ仲間で色々と話をしているから、役割分担を決めているんだろう。

 私1人でも十分に狩れる相手だから、2つのパーティの構成種族を上手く使えれば容易に狩れる相手と言えなくもない。

 相手が見えなくとも、その存在と位置を知るすべは色々とあるのだ。基本は教えてあげたから、グラム達はどんな応用をするのかが楽しみでもある。


 交替で焚き火の番をして、翌朝早く東南に広がる湿地に向かう。

 出発するときに、グラム達が皮袋に焚き火の灰を詰め込んでいたけど、目つぶしにでも使うのだろうか?

 袋から撒くぐらいでは役に立たないと思うけどな。


 2時間程歩くと湿地に出た。

 湿地と言っても、じめじめした苔が生えてる位で、水たまりがあちこちにあるわけではない。それでも、シバレイネやレイドルのような生き物は多いのだ。

 足元に注意しながら先ずはシバレイネを探すことになる。


「あそこにいるにゃ!」

 

 パメラが見付けたのは2匹のシバレイネだ。まだこちらには気付いていないようだが、50mも離れた場所でよくも見付けたものだ。

 十分にベテランのハンター領域に入っている気がするな。


 どこ、どこ? とハンター仲間が確認している。騒いで入るけど、あの距離なら問題は無いだろう。

 パメラが2人のネコ族を率いて左に回り、グラムはケイムと仲間を連れて右回りに近付いて行く。両側から挟み撃ちにするようだが、少し慎重すぎるようにも思える。

 残った私達は周囲を確認しながら結果を待つことにした。


「黒1つというところでしょうか? 中々作戦が出来てます」

「そうね。もうちょっと大胆に行っても良いように思えるけど、この町のハンターって意外と慎重なのよね」


 私が原因なのかな? いや、たぶんダノンの教えによるものだろう。

 少し臆病な方が良いという私の言葉を実践的に指導したのかも知れない。


 グラム達が一斉に襲い掛かり、直ぐに片手を上げて私達の方を見ているから、無事に狩ることができたのだろうが、シバレイネは白の獲物だからね。それ程苦労は無かったろう。本来ならば、シバレイネで腕を上げたところでスラバ狩りに移行するのだが、グラム達は反対になってしまったようだ。

 

「さて、いよいよ始めるわよ!」


 残ったハンター達を引き連れてグラム達がシバレイネの解体を行っている場所に向かうと、周囲の状況を確認する。

 見通しが良く、3m程の高さに枝を出した木々がたくさんある。これなら場所的にも問題が無い。


「皆、集まって頂戴。先ずは【アクセラ】を掛けとくわ。シバレイネの1匹はそのままで良いけど、もう1匹は周囲に切り刻んで撒き散らしてね。それはグラム達に任せて残った私達は枯れ枝を集めるわよ」


 【アクセラ】で身体機能を上げておけば、万が一の事態にも少しはマシな対応が出来る。すでにシバレイネの肉の匂いは辺りに満ちているのだ。いつ、何が襲ってくるか分からない状況ではある。


 枯れ枝をばら撒くと、シバレイネの死骸のある周辺の木々に上って、枝に腰を下ろした。腰のベルトを紐で幹に縛っているから滑り落ちる心配はないはずだ。

 後は、待つだけになる……。


 隣に腰を下ろしたキティの耳がしきりに動き始めた。尻尾も心なし膨らんでいるように見える。メズーニの接近を感じているのかもしれないな。

 パメラの様子を見ると、キョロキョロと落ち着きのない仕草で辺りを見回している。いよいよ狩りが始められるぞ。


 ポキ……、と枝の折れる音がしたと同時に矢が2本射かけられる。

 と同時に、グラム達が持っていた袋を矢が飛んで行った方向に投げつけた。

 灰が辺りに広がると小さな影が浮かび出ると、今度は一斉に矢と火炎弾が飛んでいく。


 なるほどね。擬態を破ったことになるのかな? 昨夜彼等が考えたんだろうけど、中々の方法だ。周囲の風景に同化しているだけで、消えているわけではないから灰をまぶせば姿を見せてくれると言う事になる。


 動かなくなったメズーニを見て皆が下りようとした時だ。


「まだ何かいるにゃ!」


 パメラが大声を上げた。

 何だろうと周囲を探る。確かに嫌な感じがするな。キティの尻尾はさっきよりも膨らんでいるということは……。


「皆、ジッとしてるのよ。メズーニの傍に、もうすぐ出てくるわ。頭は攻撃しないでね」


 この場合も、獣達の関係が大事になる。湿地を好み、シバレイネを好むとなればメズーニ以外で考えられるのは土竜になる。

 土竜というと何となく恐ろしく聞こえるが、大きなミミズみたいなものだ。白5つ位の技量があるなら容易く狩れるのだが、いつ地面の中から出てくるか分からないのが難点でもある。

 だけど、この状態ならばシバレイネの死骸の直ぐ傍に出てくるに違いない。はたして、どれ位の奴が出てくるんだろうか?


 やがて、シバレイネの直ぐ近くの地面が盛り上がると腿の太さ程のあるミミズが姿を現した。

 グラムの合図で一斉に矢と火炎弾が浴びせられ頭が近くに転がり落ちる。本体はドサリと水をたっぷり含んだ苔の上に倒れ込む。

 これで、終わりだろう。私達は枝から下りて、交換部位を探すことになる。


「土竜は何も無いんですか?」

「頭にある触手の奥に毒袋があるわ。紫色だから直ぐにわかるはずよ。ギルドの上旬価格で銀貨1枚になるはず……」


 私の話を最後まで聞かずに土竜の頭を採取用ナイフで解体し始めた。

 毒と言ってもあまり利き目の無い血液毒の一種らしく、使い道はただ1つ。イボを取り除くことができるようだ。ホクロにも効果があるらしく、王都ではそれなりに人気があるらしい。

 とは言っても、1回で治ることが無いと言っていたから、私には信仰療法の1つではないかと思っているくらいだ。

 とは言っても、ギルドに持って行けばそれなりの値段で引き取ってくれるのが良いところなんだけどね。


 メズーニの魔石を見付けたところで、さっさと狩場を去ることにした。

 狩場は長くいる場所では無い。次にどんな獣がやって来るか分からないのだ。

 昨夜の野宿場所に戻って、少し遅めの昼食を取る。

 本当は、ガトル狩りに来たんだけどね。途中にガトルがいれば良いんだけど……。


「獣が怯えているのはメズーニのせいだったのでしょうか?」

「とも、限らないわね。まだ何か、私達の狩り場に紛れ込んでいる可能性があるわ。ユニコーンやドラゴン、メズーニはこの辺りではあまり見かけない獣なの。東で大きな異変でもあったのかしら?」


 かなりの数が西に向かったのだろう。ガリクス辺りなら知っているかも知れないが、中々顔を見せないからな。

 翌日にどうにかガトルの小さな群れを見付けて、トビー達が殲滅した。すでに白の中位だから、10匹程度なら何ら問題はない。

 グラム達と一緒にシガレイを咥えて眺めていたぐらいだ。


「トビー達も一人前ですね」

「頑張らないと、追い抜かれるわよ。何といってもミケルがいるからね。グラム達の狩りは待ち伏せになるでしょうけど、トビー達は追跡ができるのが大きいわ」

「イヌ族がいればそうなるにゃ。私達は無理せずに今のままで良いにゃ」


 パメラの言葉にグラムが頷いている。

 確かに無理は禁物。それが分っていればハンターとして大成することができるだろう。

 もっと、無理をしないロディ達のパーティもいるけど、彼等はしっかりと町に根を下ろしたハンターだ。将来のダノンになってくれれば良い。


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