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GⅡー50 プレアディスの復活


 翌日、朝食を終えた私達はギルドに向かう。

 今日は色々とやることがあるから、依頼書を選ぶところまでになりそうだ。

 

 ギルドの扉を開けると、奥のテーブルにレイリル達が座っていた。私を待っていたんだろうな。皆を連れて、テーブルに向かうとレイリルの向かい側に腰を下ろす。キティにダノンを呼んで来てもらうと、何事かとダノンが駆けつけて来た。


「座って、ダノン。レイリルは知ってるでしょう。彼女が次の人物を連れてきたの。私への礼は前回とほとんど同じだけど、【サフロ】、【メル】、【デルトン】を3つ貰えるわ。誰に渡すかはダノンに任せるから選んで頂戴。【メルト】は私の独断で、ネリーちゃんとリトネ、それにケイミーに渡すことにするわ」

「大盤振る舞いだな。まあ、悪い話じゃねえ。もうすぐグラム達がやって来るだろう。喜ぶだろうよ。だが、他の魔法は少し考えなくちゃならねえな」


「【メルト】は私が譲渡しますが【メル】等はオブリーが譲渡出来ます。早くに戻らねばなりません……」

「直ぐにやって来るさ。その前にネリーとリトネに渡しとくんだな」

 そう言ってカウンターに引き返して、マリーと話し込んで帰って来た。グラム達がやって来たら直ぐに知らせるように頼んだに違いない。

 

「それでは2人に【メルト】を渡します……」

 早速、魔法の譲渡が行われた。

 それ程時間をおかずに、グラム達がギルドにやって来る。カウンターでケイミーが驚いているぞ。それでも嬉しそうな表情でやって来たところで、直ぐに魔法が渡される。


「それでは私は王都に戻ります。ミチル様、オブリーをよろしくお願いします」

 私に丁寧に頭を下げるとギルドを出て行った。教会にでも馬車を止めていたのだろうか?

 入れ替わりにクレイ達のパーティがやって来たから、ここで彼女を紹介しておいた方が良さそうだ。


「皆、揃ってるわね。新しく私のパーティに加わったオブリーよ。手術を習いたくて王都から来たの。エルフ族で神官見習いだけど、元は黒6つのハンターだから私のパーティには丁度良いわ。何かあれば知らせて頂戴」


 そんな私の話に、皆が驚いたようだ。ダノンがパイプを落して慌てて拾っている。


「待ってくれ。プレアデスのパーティならリトネもいるし、姫さんだっているんだ。今更、魔導士等……」

 私とオブリーの笑い顔にダノンの言葉が尻つぼみに小さくなる。


「まさかとは思いますが、ミチルさんと同じ、前衛だと!」

 クレイの言葉に、私達が頷き返す。

 たぶん、オブリーの顔に斜めに走る傷痕で、そう判断したんだろう。


「ちょっと待ってくれ。だけど……、エルフ族なんだよな?」

 まだ、疑っているようだ。私だって、エルフの前衛要員何て私以外に会ったことが無かったけど、世の中は広いと言う事なんだろうな。


「はい、エルフ族です。エルフ族は魔法に優れてはいますが、稀に私のようにあまり魔法力を持たない者も生まれます。私が使える魔法は【アクセル】だけです」


 皆がシーンとしている。私と同じと考えているようだけど、私の魔法力はエルフ族をも越えている。


「だとしたら、その傷が分らねえ。やはりグライザムって事か?」

「ソウハンです。3匹を相手にして4人を失いました……」


 ロディにカウンターから図鑑を貸して貰うように言いつけると、直ぐに大きな図鑑を持ってきた。

 ダノンが図鑑をめくりながらソウハンを探している。まだ、図鑑の整理が出来て行ないようだ。


「これだ! カマキリじゃねえのか? 何だと! こんなのがこの世界にはいるのか?」

「この辺りにはいないわよ。ずっと東南の先に王国を3つほど離れた場所にある森に生息してるわ。私も3匹だと自信が無いわ」


 図鑑に記載されたソウハンの注意書きをクレイとダノンがジッと眺めていた。

 剣士並みの動きで両腕の剣を振うと書いてあるはずだから、クレイも気にはなるようだな。ガリクスよりは腕が落ちるというところなんだけどね。


「分かった。だが、そうなるといつでもギルドにいるとは限らないって事になるな」

「そうなの。なるべく日帰りの仕事を選ぶけど、1泊はあり得るわ」

「なら、マリー。あの包みを渡し解けば安心だろう。手術用具の主だった奴が入っているそうだ。パラニアの小瓶と火酒の小瓶もある。後衛のリトネにバッグごと預けておけば安心だろう」


 マリーがカウンターの奥から持ってきたバッグをテーブルに乗せて私の方に押しだした。

 小さな革製のバッグには背負い紐が付いている。ショルダーバッグのように肩から掛けて置けそうだ。中には、ナイフやピンセット、小さなノコギリまであるぞ。ちょっとした手術はこれで出来そうだ。

 100cc程の小瓶にはパデニアと火酒の文字が書かれているから間違う事も無いだろう。


「預かっておくわ。リトネ、肩から下げるか、リトネの魔法のバッグに入れといてくれない?」

 リトネがバッグを受け取って方から斜めに下げている。

 あれならバトンを振って落とすことも無いはずだ。


「だが、姫さん達にリトネが合流したら、ネリー達の用心棒はテレサさん達って事かい?」

「そうなるわ。旦那さんと交替しながらでしょうけどね。早くネリーちゃん達の仲間が欲しいわ。マリーも良さそうなハンターは紹介してあげてね」


 マリーが頷いてくれたけど、こればっかりは相性もあるし、難しい話なんだよな。

 ミレリーさんも、宿屋のご夫婦とのんびり狩りを楽しみたいに違いない。

 早いところ、良い出物を探さないといけないだろうな。


「それで、今のところ狩場は問題ないの?」

「そうだなぁ、特にないぞ。ポツポツと新顔のハンターがやって来るが、皆自分の技量を考えてるな。どっちかというと、物足りない感じだ」


 それも、問題がありそうだ。となると中型の獣を狙う事になるだろう。

 小型のカモシカのようなリストルでも狙うんだろうか? あまり獲りすぎると野犬やガトルが飢える事になりかねないな。


「ロディやネリーちゃん達は近場の森ね。そうなるとグラムやクレイ達は?」

「明日はロディ達とイネガル狩りです。2匹なら2つのパーティで大丈夫だと思います」


 ふんふんと頷きながらシガレイを咥える。

 その外側なら、問題なさそうだ。少しガトルを間引きしといた方が良さそうでもある。


「黒5つ以上の依頼ってなにか無いの?」

「今はありません。昨日はスピアビーの依頼がありましたが、黒4つのハンター達が受けてくれました」


 スピアビーは長い針を持つ子犬程の蜂だ。たまに森に巣を作るのだが、こちらから襲わない限り人間を襲う事は無い。


「依頼の数は?」

「10匹以上と書いてありました」

「何ですって!」


 これはひょっとしたら不味い事になってるかも知れない。

 普段でも数匹が目撃される位なのだ。スピアビーはミツバチのように巣を作らない。形は似てるけど全く別の昆虫だと思う。

 さらに、狩った獲物を肉団子にするから、顎の力もかなりのものだ。ナイフのようなよく切れる顎を持っている。

 

「単独パーティなら3匹までよ。10匹を相手にしたら……。明日出掛けてみるわ。どの辺りかしら?」


 バタバタと足音を立ててマリーがカウンターから地図をわしづかみにして戻って来た。


「この辺りだと……、目撃者が」

 マリーの指差した場所は、湖の裏側辺りだな。行くだけで2日は掛かりそうだ。

 集まった面子を眺めて同行者となり得る人物を探すが、精々クレイだけになってしまうな……。

 ここは、ミレリーさんとテレサさんにお願いしようかな?

 カインドさんならネリーちゃん達の面倒をキチンと見てくれるだろう。


「まだ、ミレリーさん達は来てないのかな?」

「そう言えば見てないな。カインド達を連れて行くのか?」

「ミレリーさんとテレサさんなら丁度良いわ。直ぐに呼んで来て頂戴。キティ達は雑貨屋に行って携帯食料を買って来て。6人で5日分よ」


 銀貨をキティに預けると、リトネと一緒に走って行った。

 新しいシガレイに火を点けたところで、ロディに水筒の水を補給してくれるように頼み込んだ。

 10ℓは入りそうな大型の水筒だから、後は各自の持つ水筒で十分だろう。


 3人の熟練ハンターがギルドに顔を見せたのは、キティ達が帰って来て直ぐの事だった。

「私達が必要なんて、今度は何を狩るんだい?」

 テレサさんの嬉しそうな言葉にミレリーさんも同じ表情で頷いている。


「スピアビーの大群なの。10匹はいるらしいわ。キティ達が一緒に行きますか羅、カインドさんはネリーちゃん達をお願いしたいんですけど……」

「まあ、ミチルさんの頼みじゃ引き受けなくちゃならねえな。だが、次は俺を連れてってくれよ」


 残念そうな表情のカインドさんに、申し訳なさそうに私は頭を下げる。


「何言ってんだい。ネリー達も森の中の狩りだからね。外はグラムやロディ達がいても、野犬はすり抜けてくるんだ。傷でも負わせたら承知しないよ!」


 相変わらずだな。これもカインドさんへの激励なんだろうか?

 えらい嫁さんを貰ったものだと、この場の2人を除く全員が思ったに違いない。ロディなんかちょっと引いてるけど、たぶん自分の将来を見てしまったのかも知れないな。


「では、直ぐに発ちましょう。黒4つのパーティが向かったらしいんです」

「そりゃ事だね。大丈夫、直ぐに行けるよ」

「私もです。ネリー、家を頼んだわよ」


 ネリーちゃんがお母さんに頷いているのを見て、私も腰を上げた。

 新しいプレセラと2人の御夫人が一緒だ。

 オブリーの長剣の腕もこれで分るかも知れないな。

 

 ギルドを出ると早足で北の門を目指す。

 キティとリトネも毎日のように守衛の往復をしているから、だいぶ足腰が丈夫になったようだ。

 無言で風のように荒地の坂を下っていく私達は、かつてのプレアディスから比べると歩みが遅いのかも知れないけど、これからだんだんと近付いて行く事だろう。

 今では土の帰ったかつての仲間達もキティ達を応援してくれるはずだ。


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