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GⅡー49 新たな仲間


 マリーと警邏隊副隊長のリオンの結婚披露宴は、カインドさんの宿の1階を貸し切って行われた。

 予想以上に祝福してくれる人達が訪れて、ダノン達が急きょ食堂からテーブルを取り払う騒ぎもあったけど、やはり大勢の仲間に祝って貰えるんだから幸せにならないとね。

 半日以上騒いでミレリーさんの家に戻った時には、2人ともかなり酔っていたように思える。

 ダノンはグラム達に運ばれていったけど、だいじょうぶかな?

 あまり心配しなくとも、美人のお嫁さんに介抱して貰ってるかも知れないな。ちょっと羨ましくなってしまった。


 濃いお茶を2人で飲みながら、マリーの結婚式の余韻に浸る。

 皆、少しずつ歳を重ねていくんだな。私の容貌は変化しないから、同じ町にいられるのは精々十数年だろう。見掛けの年代差が出てくるとどうしても疎遠になってしまうのだ。

 

 数日が過ぎると、再び何事も無かったように皆が暮らし始める。

 次はロディの番になるんだろうけど、もう少し先になるんだろうな。

 

「ギルドを止めるのかと思ってましたけど……」

「子供でもできれば考えるでしょうけど、家でジッとしてるよりは良いのかも知れませんね」

 ギルドを2日休んだだけで、直ぐにいつものカウンターに立っていた。

 マリーらしいと言えばそうなんだろうけど、ギルドのカウンターにいるのはお姉さんであって、人妻なのは問題じゃないのかな?

 そんな事を考えるのは私だけかも知れないけど、いつまでマリーが仕事を続けるか、ちょっと興味が沸いて来た。


 季節は春の終わりになる。あれほど賑わっていた春先の薬草採取の騒ぎが過ぎ去って、子供達が近くの荒地で薬草を採取している。

 その下で、少し探すのが面倒な薬草をネリーちゃん達が採取しているみたいだ。出て来ても精々野犬だから、十分に対処できるだろうし、その先にはロディやグラムが小型の獣を狩っているだろう。

 私達は何を狙おうかな?


「プレセラ達が王都に戻ってしまったので、私はテレサ達とパーティを組むことにしました。一度は廃業してますから日帰りが可能な狩りを楽しむつもりです」

「私もキティ達と狩りをする事になりますが、まだ無理はしないようにします」


 互いに頷いて微笑みを交わす。

 ミレリーさん達3人を加えたらどうなるんだろう? かなりおもしろい狩りが出来そうな気もするな。


「たまには一緒にパーティを組みたいですね」

「テレサもそんな事を言ってましたよ。でも、たぶん私達のパーティは短い間で終わりそうな気がします」


 カインドさんの具合でも悪いのだろうか?

 あれだけ鍛え上げられた体だから、おかしなところは無かったように思えるのだが……。

 っ! ひょっとして、気が付いたんだろうか? 私だけが気が付いたと思ってたんだけど。


「待ってるって事ですか?」

「やはり、ミチルさんもそう思いますか? 私達はそんな気がしてならないんです」


 やはり……。現役を続けていれば十分に銀になっていた人達だからな。

 ダノン達には分からなかっただろう。

 その時が来れば、歓迎してくれると思うんだけどね。


 トントンと玄関の扉の音がする。

 ミレリーさんが腰を上げて玄関に向かうと、玄関口で誰かと話をしているようだ。直ぐに招き入れた人物は私の良く知る女性だった。

 私も立ち上がって彼女に近付くと互いにハグをしあい、お互いの無事を確認する。


「しばらくぶりね。レイリル」

「ミチルさんも元気そうで何よりです!」


 私とミレリーさんが暖炉側に移動して、レイリルともう一人の女性をテーブルの反対側に座らせた。

 ミレリーさんがお茶のカップを私達に配り終えたところで、レイリルが用件を話し出した。


「ミチルさんに教えて頂いた手術で怪我人をだいぶ救う事が出来ました。貴族の子弟を鍛えられているお話を聞きましたが、それが終わったことを大神官が耳にして私をここに寄越したのです」

「でも、レイリルには一通り教えたような気がするけど?」

「ですから、新たに私の同僚である神官見習いのオブリーを連れて来ました。私の手術を習おうと大勢の者がやって来ますが、治療する患者が多いのです……」


 何となく分かって来た。

 新たなレイリルを作ろうと言う事なんだろうな。王都の人口は20万人を超えているだろう。それに足して外科医が1人では確かにてんてこ舞いに違いない。

 さらに、国王や大神官の言い付けで他の村にも回らなかならないんだからご苦労さまと言ってあげたい気分だ。


「私に手術を教えて頂いた時の条件は今でも覚えています。同じ条件でお願いしたいと思いますが、ミチルさんが新たな魔法を欲しがるとは思えません。たぶん、町の懇意のハンターに教えることになると思いますから、【メルト】を3人、【メル】、【デルトン】、【サフロ】を各3人と言う事でお願いしたいのです」


「困ったわね。旅の途中でネコ族に託された娘の面倒を見てるの。今はいつもギルドにいるわけじゃないのよ」

「だいじょうぶです。オブリーも元ハンター。それも黒6つのハンターでしたから……」


 思わずミレリーさんと顔を見合わせてしまった。

 そんなハンターが廃業して神官になったとなれば……。

 私達の当惑した姿にレイリルの隣に座った娘が深くかぶったフードを落して私達に顔を向けた。

 典型的なエルフ族だ。緑の髪に緑の目。面長の白い顔でとがった耳が頭の左右から髪をを割って出ている。

 だが、端正な顔には斜めに傷跡が残っていた。

 【サフロ】で傷を消さなかったんだろうか? 美人の顔が台無しになっている。


「かなり深そうね。傷を消さなかったのは、戒めかしら?」

「黒6つのハンター5人でソウハンを狩ろうとしたのですが、現れた数が依頼数より多く……」


 良くある話だ。数が倍半分位はままある事なんだが、ソウハンとは……。良く顔の傷だけで助かったものだ。


「ソウハン3匹に、その場で2人殺されました。私の盾になった2人は、村にたどり着いてから亡くなりました。私に出来たことは、パラニアムを飲ませてあげること位しか……」

「ソウハン3匹を相手に良く助かったわね。亡くなった4人の技量が良く分かるわ」


 ソウハンはカマキリの大きいやつだ。立つと私よりも少し大きいかもしれない。ソウハンの武器はカマキリと同じように前足の鎌なんだが、並みの片手剣よりよく切れる。しかも動きは【アクセル】状態よりも素早い。

 ある意味、片手剣を使う最高峰と言っても良いんじゃないかな。そんなソウハンを3匹相手にするとなれば、思わずため息が漏れてしまう。


「初めて聞く名前ですが?」

「この国にはいませんわ。もう少し南に行った王国の深い森の中です。ソウハン3匹となれば覚悟が要ります。グライザムでさえ易々と倒すかも知れません」

「そんな獣なんですか?」

「いえ、虫なんです。カマキリが大きくなって私よりも背が高いような奴なんですけどね」


 この辺りにいたら、とんでもない事になる。もっとも、かなり森の奥まで行かなければ見つからないだろうから、ソウハンを実際に見たハンターはそれ程多くは無いはずだ。


「どうでしょう。よろしければ黒姫様が指導しているパーティに私を臨時に入れてくださいませんか? 魔法は得意ではありませんが、長剣なら少しはお役に立てます」


 ええ! 思わず声を出すところだった。

 前衛のエルフと言えば私位だと思っていたけど、エルフで前衛、しかも長剣とは……。長生きをするといろんな人に巡り合えるな。


「一緒に行動して、けが人が出たら一緒に治療すると言う事かしら? それなら問題ないわ。元が黒6つなら色々と手伝って貰えそうね。宿は、教会になるのかしら?」

 私の問いに小さく頷いた。

 だったら、明日の朝から頑張って貰おう。

 レイリルは私に深く頭を下げると、オブリーを連れて出て行った。


 ミレリーさんが、小さなカップに蜂蜜酒を入れて私に勧めてくれた。

 自分でも飲みながら深くため息をついている。


「それにしてもグリザムが霞んで見える虫がいるんですね。そんな経験を持てば神官になろうとするのも理解できます」

「ソウハンの鎌は片手剣位の大きさなんです。良い鉄が鍛えられなかった時代には、その鎌を片手剣にしたと聞いたことがあります」


 これで、助っ人付だけど、プレアデスのメンバーは充実した事になる。

 クレイと依頼書の調整も必要になるかも。


「そうなると、初級魔法はダノンに任せれば良いでしょう。【メルト】は、ケイミーとリトネ、それにネリーちゃんに渡します」

「ネリーには、まだ早いと思いますが?」

「ガトル相手には持っていた方が安心できます。魔法力を大量に使いますから、精々2回までの使用になるでしょうけど……」


 それでも使い続ければ3、4回は行けるんじゃないかな? 素質があれば5回は確実だ。テレサさんなんか5回使ってもまだ他の魔法が使えるからね。


「後で教えてあげましょう。魔法を使う者はテレサを目標にしているようですからね」

 ミレリーさんの言葉に思わず2人で破顔する。

 結構派手に【メルト】を使ってるんだけど、獲物には中々当てたことが無いんだよね。

 ハンターの鏡みたいな魔導士だといつも感心してしまう。


 その夜。キティ達が帰って来ると、いつもの楽しい夕食が始まる。

 質素な食事だけど、狩りの様子をキティ達が話してくれるから、私とミレリーさんの楽しみでもある。

 

「いよいよ、プレアデスとして狩りを始めるわよ。ネリーちゃんのところから2人抜けてしまうけど、カインドさん達が加わってくれるから、今まで通りの狩りが出来ると思うわ。それと、ネリーちゃんに【メルト】を渡すから明日の朝、ギルドに寄ってくれない?」

「えっ! 良いんですか?」


 吃驚した表情で私を見ている。リトネはちょっと残念そうだけどちゃんと用意しているから大丈夫だぞ。キティには必要はない。レイリルに【アクセル】を付与して貰えば良い。



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