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GⅡー47 スノウガトルの報酬は?


 翌日、元気に手を振ってプレセラ達がガトル狩りに出掛けて行った。

 後ろから付いて行くテレサさんが金棒を持って私にウインクしている。暖炉際から手を振って送り出したけど、あれでプレセラ達を折檻しないか心配になってきたぞ。作ってあげたのは失敗だったかな?


「まあ、妖炎が一緒なら心配ねえだろう。上手く行けばこれで終わりだな」

「そうなるわね。まだ赤の5つだけど、それなりに使えるわ。出来れば白にしたかったんだけど2年では無理でしょうね」

 青の中位、ダノン並みのハンターが加わってくれれば安心できるのだが……。その辺りは彼女達の親に任せる事になるだろうな。


 暖炉の傍でシガレイを楽しみながらダノンとお茶を飲んでいると、ギルドの扉が開き、ガリウスが入って来た。私を見付けて歩いて来たので、ダノンがベンチで座っていた場所を移動し、暖炉際を開けている。


「とんでもない騒ぎになってるぞ」

 おもしろそうな顔をして私に告げると、ドカリとベンチに腰を下ろす。

「狩れたのが2頭だから、王女と御后にあげたんだけど。騒ぎにはならないはずよ」

 そう言った私に笑いながらお茶をマリーに注文している。


「そこまでは良い。俺達は狩れなかったがガドラーを2頭仕留めた。またライナス殿の名が上がったな」

「奥さんも鼻が高いでしょうね。公爵の地位は安泰って事かしら?」

「それは良いのだが、例の巻き狩りをした連中が問題だな。真実審判が開かれ、偽証とまでは判断されなかったが、今回の責任を問われたようだ。ハンターの意見を重視するように国王自らが言ったらしい。少しは無茶な狩りを減らせるだろう」


 別に騒ぎでは無さそうだけど? どちらかというと風通しが良くなったようにも思える。


「そんな騒ぎが収まったところに、この町からスノウガトルの毛皮が届いた。俺達にはどうでも良い話だが、婦女子にはそうもいかないらしい。あの大きさだから帽子にしても5つは作れるようだ。最上の部分は御二方になっても、残り3つがどの貴族の御夫人に贈られるのかと言う事で、王宮は大騒ぎになっている」


 どうでも良いような騒ぎだな。とは言っても、それに振り回される貴族の当主達の困惑が目に浮かぶようだ。


「俺とライナス殿は、雪レイムの帽子を贈ったのだが、あれでも十分に思えるのだがな……。女心は分からぬものだ」

 ぶつぶつ言いながらも、ちゃんと嫁さんにお土産を渡してるのは大したものだと感心していると、ガリウスが腰のバッグから書状を取り出した。


「御后様と王女様のサインがある。ミチル殿であれば礼金は全て寄付してしまうだろう。それは我等が行うにしても、やはり何かを渡さねばなるまいと言っていたそうだ。武器をいくら作っても御后様がその代金を払うとある。公爵様が呆れていたが、どうするんだ?」

 

 そう言って、書状を渡してくれた。これはお言葉に甘えなくては御后様の矜持にも係わりそうだ。


「あの狩りなんだけど、ギルドに集まっていたハンターほとんど全員で行ったようなものなの。彼らの武器の更新に使っても良いかしら?」

「いくら新しくしても金貨10枚は超えまい。分相応なら問題ないだろう。俺が武器屋に話を付ける。ミチル殿は参加者にその旨を話してくれ」


 隣でダノンが喜んでるぞ。まあ、ダノンも対象者ではあるんだよね。


「ダノン。ミチル殿の狩りはどうだったのだ?」

「それが、生憎と俺は裏手だったんだ。そろそろクレイ達が来るだろう。クレイはミチル殿が見える位置を自分で選びやがった。奴なら詳しく話してくれるだろう」


 残念そうな顔でダノンが説明している。あの配置を書いた紙をまだ持っていたみたいだ。

 ふんふんと頷きながらガリウスがお茶を飲む手を休めて聞いている。


 たぶんプレセラ達の報告もあるのだろう。ベクトの腕を利いてだいぶ感心しているぞ。戻ったら手合わせを何て考えて無いだろうな。


「なるほど、この場所では見えんな。だが、プレセラ達を守ってくれたのはありがたい」

「いや、奴らもかなりの腕だ。アンでさえガトルに矢を何本も当ててたからな」


 たぶん、その話は両親にも公爵を通して話されるのだろう。一人前として彼らが王都に帰るのももう直ぐだな。


「それで、卒業試験という訳か。ガトル8頭……。普通なら白のレベルが欲しいところだ」

「ベクトなら問題ねえ。カインドが感心していたからな。待って討ち取ることがちゃんと出来てると言っていた。問題はラズーだな。テレサを目標にしたみたいだ」

「あの妖炎をか? 旦那は頑丈な奴を探さねばならんな」


 そんな事で大笑いを始めた。全くもって失礼な連中だな。テレサさんの一面だけを見てる気がするぞ。


 そんなところに、クレイ達が入って来る。早速私達のところに椅子を持ち寄って集まって来た。同じ年頃の子供を持つ親同士、色々と話が弾んでいた。

 

「ミチルさんの片手剣ですが……。私にはいつ抜かれたか分かりませんでした。たぶんですが、最初の1頭はすれ違いざま。後の1頭は一旦スノウガトルとすれ違ったんですが、その後で反転攻撃をしたところでスノウガトルは倒れました。私にはミチルさんが足を雪に滑らせて後ろに倒れるように見えたのですが……」

「後ろから飛び掛かるのを避けたんだろう。避けながら腹を片手剣で斬り割いたわけか……。俺にはまだそこまでは出来んな。長剣ではその動きは不可能だ。ガトルは「片手剣が良いと聞いたことがあるが、例え半D(15cm)の刀身の違いでも俺は長い方を選ぶからな」


 そんな話を男達でしているのも問題だな。

 嫁さん連中は腰のバッグから編み物を取り出して、何かを編み始めた。子供のセーターなのかな?


「ええ! 良いんですか?」

 突然の大声に嫁さん連中が編み手を置いてクレイの方を眺めている。

「ああ、王女様と御后様からの褒美になるな。ミチル殿が代金を受け取らぬ事を知って御后様達は教会に寄付すると同時に今回の狩りに参加したハンターの武器を新調することで褒美とした。この町の武器屋は鍛冶屋でもある。腕も良いと聞いているから良い物を作ってくれ」


 とは言え、誰もがという訳ではないから、後でダノンにリストを作って送って貰おう。

 かなりの出費だと思うけど、そんなにあの毛皮に価値があるんだろうか?

 綺麗なのは認めるけど……。


次々にハンター仲間達がやって来る。ダノンが一々その話を説明しているみたいだ。皆喜んでいるところを見ると、それなりに自分の武器の改造点に気が付いているんだろうな。武器のちょっとしたカスタマイズ。それが出来ればさらに上を目指すハンターになれるだろう。


 そんな事で、今日は皆で作る武器を相談し合っている。

 たまにはのんびりと、夢のある話も良いのかもしれない。夕暮れ前にはそんな連中が揃ってカインドさんの宿に向かった。

 飲みながら話すんだろうか? それほど変わった物にはならないだろうけど、初めて武器のカスタマイズを行うのだ。それがたぶん一番うれしいんだろうな。


 キティ達はそんな話には加わらなかったようだ。私と一緒にミレリーさんの家に帰ると、テーブルでミレリーさんと話し込んでいるネリーちゃんがいた。

 いつもの席に座ると、キティとリトネがお茶を皆に入れてくれる。


「あらら、気が付きませんで申し訳ありません。それで、本当なんですの?」

「今朝早くガリウスが書状を持ってきました。何も問題がありません。ミレリーさんも前の片手剣を新調出来ますよ」


 そんな私の言葉に、ミレリーさんが首を傾げている。

 少し分かる気もする。そこそこの武器があればそれなりに狩りができる。ある意味カスタマイズの武器は自己満足の製品でもあるのだ。


「ここは御后様の計らいを受けておいてください。壁に飾っておくのも良いかもしれませんよ」

「私達はすでにこれを持ってます。やはり何か作った方が良いのでしょうか?」

 ネリーちゃんはバトンを持ってる。罠造り用の短剣も持っているから確かにそれでいいのかも知れない。でも、弓なら丁度良いかもしれない。

 キティは一通り持っているけど、弓を少し強いものに換えるのも良いだろう。

 主に使う武器を更新しなくとも、セカンド武器を作ったり、更新することになるのかな? 私も対象になるはずだから、何か考えないといけないな。


 そんな話で夕食が楽しく過ぎていく。

 ミレリーさんもついに武器を作る事にしたようだ。

 私の小太刀を模した物を作ると言っていたが、どんな物ができるか私も楽しみに待つことにしよう。


 翌日、ギルドでプレセラの帰りを待つ。

 少し背伸びした依頼を受けさせたのだが、どれ位の傷を作って来るのだろうか? ライズが【サフロ】を使えるはずだから、軽い怪我なら問題は無いはずなんだが……。


 昼過ぎになり、罠猟の連中が帰って来る。

 ネリーちゃん達も罠を一回りして来たんだろう。キティと一緒にギルドに入って来た。毛皮を取り出して、報酬を受け取り皆で分けるとキティを連れて直ぐに出掛けて行く。武器屋に向かったに違いない。私には内緒のようだけど、どんな武器を新調するか楽しみだな。


 ロディ達は小さな袋を取りでしている。

 近場で野犬でも狩ったのだろうか? 報酬を受け取ると直ぐに出掛けて行くのも裏を知っているとおもしろく感じる。


 バタンと扉が開くと、ラケス達が入って来た。素早く彼女達の様子を眺める。身のこなしに違和感はないから深い傷を負った者はいないようだ。最後に入って来たテレサさんが私の方にやって来ると、どっこらしょと言いながらベンチに腰を下ろす。片手を上げてお茶を注文しておく。かなり体が冷えているはずだ。


「さすがに、ミチルさんの薫陶を受けただけの事はあるね。もう、一人前さね」

「怪我は?」

「誰もしてないよ。ラケスの言い付けをちゃんと守ってたね。私は後ろにいたんだが、レントスが狩りの最中は後ろを見ていた。群がるガトルに背を向けられるのは中々いないよ」

 本の虫も度胸が付いたと言う事なんだろうな。

「そろそろ、ラズーには【メルト】を持たせた方が良いだろうね。中々【メル】の使い方が上手くなったよ」


 ラズーが目指すテレサさんがそう言うなら間違いないだろう。

 どうやら、プレセラとしてギルドでの単独活動ができるまでになった、と言う事になるのかな。 


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