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GⅡー38  女4人? 集まれば


 下宿に帰ると、どうやら私が最後に帰宅したらしい。

 「ただいま!」と言いながら玄関の扉を開けると「「お帰りなさい」」と元気な子供達の声がリビングから返ってきた。


 「ご苦労さまでした。話はネリーから聞きましたよ。やはり、この町にはミチルさんが必要ですね」

 リビングのテーブルに着く私に、ミレリーさんがねぎらいの声を掛けてくれた。

 ネリーちゃん達が直ぐに食事の準備を始める。夕食の手伝いをして貰えるからミレリーさんもだいぶ楽になっただろう。


 「それにしても、ロディが怪我をしたとは驚きました。あれほど慎重な行動を何時もしているのですからね」

 「どうやら、誰かをかばったみたいですね。ある意味、リーダーとしての役目を果たしたという事ですが、怪我をしてはね」

 「見て見ぬ振りは、出来なかったんでしょうね」


 夕食は何時ものように、ネリーちゃん達の狩りの様子が報告される。

 キティもだいぶ弓の腕が上がったようだ。ラビーを4匹は中々だぞ。

 

 「皆で話し合ったんだけど、やはり中衛は必要ってことになったの。キティちゃん達がいつまでもいてくれる訳じゃないし、やはり来年には良いハンターを紹介して貰うんだ」

 「そうだね。パメラさん達みたいなハンターなら良いんだけどね」


 確かに、パメラは掘り出し物だろう。グラム達があれだけ腕を上げたのはパメラ達の働きがあってのものだ。魔法使い2人では、今のレベルには到底達していなかったに違いない。

 クレイのところにもネコ族の女性がいるから安心ではあるな。ロディのところは全て人間族だから周囲の監視はあまり当てには出来ないのかも知れない。だからこそ、ロディはレベルの低い内から周囲に気を配ってきたのだが……。


 「マリーお姉ちゃんに頼んであるんだ。キティちゃんみたいな子が来たら紹介してほしいって!」

 そんな事をキティに向かって言うもんだから、キティがキョトンとした表情をしているぞ。まだ、自分の種族の特徴を十分理解していないみたいだな。

 

 「もし、ネコ族の人が見つからなかったら、犬族の人も考えて見なさい。彼らの鼻の力は積極的な狩りをするなら是非とも欲しい能力なのよ」

 「ひょっとしたら、トラ族やエルフ族もそんな能力があるんですか?」

 

 丁度食事が終わったところだ。

 お茶を頂きながら、それぞれの種族の特徴をネリーちゃん達に教えてあげた。色んな種族の人達と狩りをすればいずれ分かることだけれど、あらかじめ知っていても良いだろう。


 「すると、私達人間族が一番狩りに向いていないような気がするんですけど……」

 「そうではないの。その種族の特徴を最大限に生かすパーティを作れば良いのよ。壁となり、直接攻撃に特化した前衛、広い攻撃範囲を持ち、全体を見ることが出来る中衛、遠方攻撃に特化した後衛の3つに分けて考えれば良いわ。そこでおもしろい事に気が付くはずよ。人間族は全てに対応できるの。でもね、他の種族からすれば劣る場合が多いのよ」


 必ずしも、それに当てはまらない者だっているのだ。私はエルフだけど前衛だし、ガリクスは人間族だけど、銀1つのトラ族よりは前衛をこなせるだろう。ドワーフが中衛になる場合だってあるぐらいだからな。


 私の話に、ネリーちゃんが悩み出したぞ。それをミレリーさんが微笑んで眺めている。それ以外に相性もあるから一概には決められないんだけどね。

 ついに、キティちゃんの手を曳いてお風呂に向かったようだ。残った私達は思わず笑い声を上げてしまった。


 「中衛に気が付いたのは中々ですが、さて、選ぶとなると難しい。それが分かればじゅうぶんですわ」

 「ですね。人任せにはできないと思います。でも、ミチルさんがこれはと思うハンターが現れたら教えてあげてくれませんか?」

 「それ位は考えてます。だいじょうぶですよ」


 そんな話をしていると、玄関の扉を叩く音がする。

 ミレリーさんが席を立って玄関に向かうと、2人の女性を伴って現れた。親子のようだが、娘さんの顔を見て思い出したぞ。セリーじゃないか。だいぶ丸みが出てきたな。王都に嫁に行ったと聞いていたけど、帰ってたんだ。

 ミレリーさんに私の前に座るよう促されていたけど、私の席で立ち止って丁寧に頭を下げた。


「息子の命をお助けいただきありがとうございました。これはささやかですがお礼でございます」

 そう言ってテーブルに小さな袋を置いた。礼金なんだろうか? まったく困った人達だ。セリーだって、私が礼金など受け取らない事を知っていたはずなんだが……。


「できることをしたまでです。これは受け取れません。セリーも知ってるでしょう?」

「知ってはいましたが、やはり命を助けて貰ってお礼の1つも無しでは……」


 世間体ってやつなんだろうか? そんな事は私以外の連中に気を使えば良いことだ。

 知らない仲じゃないんだから、それ位は甘えて貰っても問題ないと思うんだけどね。


「ミランダ。ミチルさんは、いまだかつて怪我の治療でお金を受け取ったことは無いわ。気にいなくてだいじょうぶよ」

「でも、ミレリーさん……」

「あなたの気が済まないなら、あなたが用意した礼金の1割をミチルさんの名前で教会に寄付すれば? 昔、町にいたミチルさんのお弟子はそうしていたわよ」


 ミレリーさんが小袋をテーブルから取って、ミランダさんに握らせている。母親だからな。息子の命は金に換えられないという事だろうが、ロディは知らぬ人物じゃない。たとえ虫の息でも、出来る限りの手は尽くしたと思うな。

 改めて2人揃って私に深々と頭を下げて、向かいの席に座った。ミレリーさんが2人にお茶を用意すると、私の隣に腰を下ろす。


「ロディが怪我をするとはちょっと信じられませんでした。そろそろ目を覚ましたころでしょうから、彼から経緯を聞きました?」

「私が問い詰めました。どうやら、王都からきたハンター達と協力してリスティン狩りをしたようです……」


 セリーが問い詰めたという事は、尋問したって事だろうな。怪我が悪くなってないだろうな?

 セリーの話では、青6つの4人組のハンターと同行したらしい。

 待ち伏せして狩りをするのは、私が教えた通りの事だが、場所がまずかったらしい。隠れていたライズが足を滑らせてリスティンの駆けて来る前に出てしまったらしい。とっさにロディが飛び下りてライズを藪に投げ込んだらしいが、ロディは間に合わなかったという事だ。

 恥ずべきことじゃないな。リーダーとして十分に仲間から信頼されるだろう。命を落しかけたけど、これでロディのお嫁さんは確定したんじゃないか?


「リスティンの角はロディのお腹を貫通してました。少し内臓が傷付きましたが、それは完治してます。一か月ほど静養すれば、また狩りが出来ますよ」

「本当に、ミチルさんがいてくれて助かりました」

「私もです。つい先ほどですよ。ミチルさんが戻ってきてるとマリーから聞いたのは……」


 2人とも、目に涙を浮かべている。

 ミレリーさんが、毎年のように死人が出たと言ってたからな。

 そういう意味では運が良かったという事なんだろう。

 

「でも、2人でここに来て良かったの? ロディの世話もあるでしょうに?」

「ライズが付き切りで看病してますわ」


 どうやら、話が変わってくれたな。そうか、そんな事になってるんだ。

 私を含めた4人の顔がにこりと微笑んだのは偶然ではないだろう。

 

「楽しみですね」

「ええ、ライズなら私も文句はありません。たぶん宿の夫婦みたいになるんでしょうね」

 将来のロディが簡単に想像できるのが怖くなるな。

 たぶん、全員がそれを思い浮かべているに違いない。ふふふ……と互いに目を見合わせて忍び笑いをしているぞ。


「そうなると、ますますマリーが焦ることになりそうだわ」

「ダノンさんが結婚したでしょう。それでかなり焦ってたわよ」


 セリーの言葉に私が追従すると、今度は全員で考え込んでしまった。

 やはりこの町には適材がいないらしい。これは、ちょっと大問題になりそうだぞ。

 2人が帰ったところで、ミレリーさんと蜂蜜酒を頂きながら、シガレイを楽しむ。

 自然と話題は、先ほどのマリーの将来になる。


「やはり、早めに相手を見付けなければならないでしょうね。マリーの両親も晩婚でしたからまだまだマリーを子供と思ってるんでしょうけどね」

「この間、ちょっと考えてたんですが……。マリーはグラムやロディ達の面倒を良く見るんですよね。ひょっとしたら、年下好みなんじゃないかと?」


 私の言葉に、ミレリーさんが思わず口に含んだ蜂蜜酒を喉に詰まらせたようだ。ゴホンゴホンと咳き込んでるぞ。


「あまり変な事を言わないでください。でも、そんな話がミチルさんから出るとなると……、あの話も信憑性がありますね」

 

 そんな前振りで話してくれたのは、テレサさんから聞いた話らしい。

 何でも、グラム達のパーティの様子を何時も見ているって事らしい。グラム達は男3人でパメラ達女性が2人いるんだよな。1人余るって事か? まさか狙ってるわけじゃないだろうな。


「三つの歳の差なんて、歳を取れば問題ありませんよ。姉さん女房は旦那がしっかりすると言われてますしね」

 さすがにロディでは離れすぎているか。3つ違いなら確かに問題も無さそうだ。

 だが、これには相手にだって選ぶ権利はあるからな。マリーの前でいつも首をすくめている3人には、荷が重すぎるだろうな。


「まあ、こればっかりは、私達がどうすることも出来ませんからね。精々、私達に頼ってきた時に、これはと思う人材の紹介をしてあげられるくらいでしょうね」

「ですね。ミラリイもそろそろ年頃ですから、人の心配どころではありませんが、町のうわさ好きの連中にはおもしろそうな話題でしょうね」


 まあ、第3者でいる分にはおもしろいに違いない。

 とは言っても、知らぬ中ではないし……、私もギルドでたむろしている時には、そんな目で他のハンターを見てみよう。

 マリーに釣りあう若者は早々いないと思うけど、何もしないで待っているよりは良いだろうな。

 


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