第六話
第六話
今の日付はわからない。だが異世界に巻き込まれ転移してから今日で3日目だ。
そして明日は今後をかけた大勝負を行う日である。
そんな明日を控えているのに俺のメンタルは最悪のものだった。
「明日、大丈夫そーなの?」
シェラが俺に尋ねた。
「あぁ、大丈夫だ……でも、今は俺のメンタルがな……今日魔道具屋で薬中5人に囲まれてな……本当に今なんか泣きそうなんだ……」
俺は顔に両手を当ててベッドにうずくまる。
「大変だったね、でも私も今日は大変だったんだよね」
「すまん、俺今他人の大変な話聞けるほど安定してないんだ……」
「あ、ごめん……」
そうしてその晩、俺達は一言も喋ることなく眠りについた。
――気持ちのいい朝、昨日の薬中によってブレイクされたメンタルは一度寝ると元通りになっていた。
「シェラ起きろ〜」
「ふぁぁ〜」
シェラは無防備な体を俺に向けて起き上がった。
「おはよー」
「本当に暑すぎるんだけど〜この部屋」
彼女はシャツをパタパタさせながらこちらを向く。
「あんま、刺激の強い服装するなよ……」
朝の高刺激に俺の上の脳と下の脳は耐えられなくなり俯きながらそう言った。
「暑いんだもーん、ていうか今日やる作戦って何時くらいに決行予定なの〜?」
シェラは俺に尋ねる。
「オークション開始が夜からだからそのだいぶ前の、昼前くらいにはダフネ市には行きたいな」
「そうだ、今これを渡しておこう」
俺は昨日苦労して魔道具屋で購入した、とあるマントを2枚出した。
「ちゃっちゃかちゃっちゃちゃーーん、透明マント〜」
――透明マント
そう、名前の通りこれを羽織った使用者が透明になるという実際にあったらヤバすぎる道具である。(実際にあった)
エンバークについた初日、もう有効な情報を手に入れることができないと思い、最後の希望で立ち寄った魔道具屋。
そこにえげつない値段でこれが置いてあったのだ。
「マジで高かったんだが軍資金を全て叩いたら買うことができたので買ったんだ」
「何これ!!すっごい!使ってみてもいい?」
「あぁ、もちろん」
俺は誇らしく頷いた。
「…………どう?今私がいる場所わかる?」
ふと目を離した瞬間シェラが視界から消えた。
昨日街ゆく人にこのマントを使ったから効果は重々承知しているが、いざ使用している人を見ると本当にわからないものだ。
「すっげぇ、こりゃいけるぞ!」
俺はシェラがどこにいるのかなんて考えもせずに興奮した。
するとシェラは不貞腐れたように
「ばぁぁ!!ここでした!も〜ちゃんと探してよね!」
バサっと言う音と共に、シェラは俺の足元に身を屈めて現れた。
びっくりはしたが、シェラの上目遣いや口を開けて驚かす表情があまりにも可愛すぎたため、パッと目をそらして続ける。
「あ、あぁごめんごめん」
「よ…よし、じゃあ今日の作戦を説明するぞ」
「了解でやんす!」
シェラは額に手を当てて反応した。
「まず、今から朝食を取った後、市場に向かう。ちなみに足がつかないように市場に行くまでの道もこの透明マントを使って移動するぞ。」
「そして市場に着いたら、バレないように八百屋の奥にあるという秘密通路へ侵入して、運営がオークション準備をし始めた時に、その情報屋の本3冊を盗む」
「なるほど、なるほど……」
「じゃあ私はもし見つかった時に戦う役をすればいいんだね?」
シェラは力瘤を作って言った。
「戦うって……お前魔法とか剣とか扱えないだろ?」
まだ異世界に来て4日とない。そんな短期間で戦闘経験のない少女が戦えるようになるのか?
そういう疑問を持ち彼女に尋ねる。
「うふふふ……実は昨日のことだよ、私はあるおじさんに出会ってね……なんと!魔法を教えてもらいました!!」
「なにーー!!!ってマジか……」
「てかおじさんに教えてもらったってどういうことだ?」
シェラはピースを作りながら自慢げに語った。
「昨日、私は魔法を使ってみようと試行錯誤しているとね、色々あって、あるおじさんと仲良くなったんだよ。
それで、そのおじさんが実は魔法大学の教授らしくてね、魔法というものを教えてもらったんだー」
「それはそのおじさんに感謝だな……さぞ素晴らしい人であったに違いない」
「それでどういう魔法が使えるようになったんだ?」
シェラはまたも自慢げに人差し指を俺に向ける。
するとシェラの指が発光して大きな光が部屋中を包み込んだ。
俺の目はその高濃度の光に串刺しにされた。
「目、目がぁぁぁぁ、お、おでの目がぁぁぁぁぁ」
慌てた様子でシェラは光を消した。
「あっ!ごめん強くしすぎちゃったみたい。まだ調整は難しくて……」
俺は自分の目を覆い、毛布にくるまり、うなだれながらシェラに、説教をした。
「よしわかった!お前の凄さはわかったから。それは絶対に緊急時以外使うなよ!そして使う時は絶対に大声で使うことを表明しろ!」
反省したようにシェラは返事をした。
そして30分後……
俺達は宿屋の絶妙にまずい朝食を食べ終え、
ついにオークション本強奪作戦を決行することになった。




