第三話
「かのアメリカの実業家クレメント・ストーンは言ったんだよ…… あらゆる偉業の出発点は、目的を明確にすることから、とね。」
「ということで、私達はなんでエンバークに向かってるの?」
エンバークに向かう馬車での移動中、もうすでに王都の光景に飽きてしまったのか、女勇者シェラは馬車の天井を見ながらそう言った。
「じいさん曰く、エンバークにある情報屋がいて、そいつに秘宝の一つである勇者の盾のありかを聞きに行かないといけないらしい」
「魔王はその盾と聖剣がないと殺せないらしいからな」
朝ごはんに王都名物カエルの肉団子を食べながら俺は答えた。
「意外にいけるなこれ、」
ちなみにカエルは鶏肉と魚肉ソーセージを混ぜた味がした。
「てか、情報屋に話聞くとか別の人がやってくれても良くない?」
「その方が安全だし」
「わざわざここに来て2日目の私達に行かせる意味ないよ」
シェラはというと蜂蜜シメジというごっついもんを食べながらこの国への文句を吐きつける。
「ふはっ、まじそれな」
そして俺がその文句に同調しないとは限らないのであった。
2時間くらい経っただろうか、この世界には腕時計がないので時間感覚が狂ってしまう。
ふと顔を上げると目の前には大きな森林地帯が広がっていた。
ここも王都の一部らしく魔物は存在しないらしい。
まだ異世界2日目で魔物を、見たことがない俺は未だモンスターへの恐怖心というものはない。
ていうか冷静に考えて異世界2日目の若者に魔王倒すために旅させるとかまじバケモンだなあいつら……
とまぁ、こんな感じで昨日まであった、俺達二人の異世界熱というものはこの馬車での退屈な時間で覚めに覚めてしまっていた。
そして、王城を出発する際、剣と盾はもらったがパンピーの俺に扱えるわけがなく、シェラですら聖剣はなんか重いと言ってすぐに馬車の物入れに投げ捨てていた。
つまり、今現在俺たちが戦える手段は存在しないわけだ。
なので王都を出る前にモンスターと戦うという実践を積みたいのだが王都にはモンスターがいないのでこれまただいぶ詰みである。
「まじで暇だね〜」
「やっばい、普通に日本に帰りたくなってきた」
やめてくれ、それは俺にもだいぶ効く。
――そんなこんなで退屈と不安を耐え抜きながら俺たちは魔物に襲われることもなくついにエンバークの門前に到着した。
馬車主に送料を払い終えシェラの元へ急ぐ。
「ここが……エンバークか」
街の門は開け放たれ、旅人や商人、それに馬車がゆるやかに出入りしている。門番の鎧にはこの地方特有の三本角の紋章が刻まれており、警備はしっかりしていそうだ。
王からもらった通行証を提示して門をくぐると、石畳のメインストリートが真っすぐ中央広場へと伸びていた。両脇には雑貨屋、鍛冶屋、宿屋、パン屋、薬草屋……小さな店舗がびっしりと並んでいて、どこからともなく焼きたてのパンと香辛料の香りが漂ってくる。
建物はすべて二階建てほどで、外壁は白い漆喰に木の梁が交差した素朴な造り。窓には色とりどりの花が吊るされ、どこかのんびりとした空気が流れていた。
「すごいね異世界……」
「本当に漫画の世界みたいだよ」
シェラはエンバークの街並みに見惚れていた。
「本当だな、王都とはまた違った良さがある」
「まぁ見惚れるのはここまでにしてとりあえず定番ムーブの宿探しと情報収集だな」
そうして俺たちは10分ほどで宿を見つけて宿の予約を済ませてから二手に分かれて町中の人から情報を集めて回ることにした。
「それじゃあ2年後、シャボンディ諸島で!!」
俺はシェラに冗談めかして言うが、
「ん?2年後?どういうこと?まずシャボンディ諸島ってどこ?ここってエンバークだよね?それに普通に考えて2年も情報収集はいらないんじゃない?」
「………………」
「3時間後にこの宿集合で……」
こうして俺たちの楽しい情報収集が始まった。
街は意外に賑わっていて、王都ほどではないがなかなかの人でごった返している。
そして俺は手当たり次第に住民に情報屋やこの世界の状況について聞いて回った。
「情報屋?知らないねぇ」
「ひょひょ?じょうぽーやぽぽぽぉぉぉうい」
「知らないや。そんなことより兄ちゃんうちの子達どう?可愛いでしょ、ね?ね?一発、一発どう?」
「この星は自分で動いてんだ!!そんなこともしらねぇで―」
「ひょえひょっひょっひょっじょひょひょひょひょ」
「おい小僧この星は丸いんだよ!そんなこともしらねぇで―」
「…………なんだ兄ちゃん!見せもんじゃねえよ!どっかいけ!」
………OK了解……………この町やべぇぇぇぇぇぇ
何だこの町。
さっきのやつに関しては情報料としてお金渡そうとしたら野糞突き返されたぞ。
てか俺が話しかけた奴らの半分以上が薬中かこの時代の異端者だったし。
ともあれこれは早く退散しなヤバいことなってまう……
シェラはどこだ?もう約束の集合時間過ぎてるってのに。
予約した宿で体を休めながら特段何もなかった情報を紙にまとめているとドアが開いた。
そこには髪をポニーテールにまとめたシェラがいて、
「やっほー、情報屋多分見つかったかも」
「うぇぇ?」
どうやら俺には情報収集の才能がないらしいです。
読んでくださりありがとうございます!!




