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第7話「決戦、公爵家の私兵団」

 森の木々の間から、金属鎧の擦れる音と、兵士たちの足音が響いてくる。

 先頭に立つのは、見覚えのある男だった。

 公爵家の騎士団長、ボルドだ。

 かつてリアを「才能なし」と嘲笑い、屋敷から追い出した張本人でもある。


「ふん、こんな魔境に掘っ立て小屋を建てて、ままごとか?」


 ボルドが大声で嘲る。

 背後には二十名の兵士と、数名の魔導師が控えている。


「おい、無能令嬢! 出てこい! 公爵閣下の慈悲により、連れ戻してやる。もちろん、この土地の権利と、後ろのドワーフどもを差し出すのが条件だがな」


 やはり狙いは資源と技術か。

 リアが前に進み出る。

 俺は彼女の横にぴたりと寄り添う。


「お断りします。私はもうベルンシュタイン家の人間ではありません。ここから立ち去ってください」


 リアの声は震えていなかった。

 凛とした、王者の響きさえあった。

 ボルドが顔を歪める。


「口答えするな! 貴様のような出来損ないが生きていられるのは誰のおかげだと……」


 ボルドが馬を進めようとした瞬間、

 ドォォン!

 目の前の地面が爆発した。

 シルヴィアの警告射撃だ。

 魔法を付与した矢が、正確にボルドの足元を穿っている。


「警告はしましたよ。次は眉間に当てます」


 木の上からシルヴィアが冷ややかな声で告げる。


「き、貴様ら……! たかが亜人風情が! 構わん、制圧しろ! 抵抗するなら殺してもいい!」


 ボルドの号令と共に、兵士たちが剣を抜き、魔導師が詠唱を始める。

 開戦だ。


「いけっ! わんこ隊!」


 リアが叫ぶと同時に、地面から十体のわんこゴーレムが飛び出した。


「なんだこの土人形は!?」


 油断した兵士たちに、ゴーレムたちが襲いかかる。

 見た目は可愛いが、その質量は岩そのものだ。

 兵士たちが次々と吹き飛ばされていく。


「えぇい、魔法部隊! 焼き払え!」


 魔導師たちが火球を放つ。

 だが、リアが前に手をかざした。


「防いで……『アクアウォール』!」


 巨大な水の壁が出現し、炎をすべて飲み込んだ。

 ただの水壁ではない、高密度の魔力が圧縮された鉄壁の防御だ。


「な、なんだその魔力は!? 貴様、魔力がなかったはずでは……」


 ボルドが驚愕する隙を見逃すな。

 俺はスキル『身体強化』を最大出力で発動し、地面を蹴った。

 銀色の流星となって戦場を駆ける。

 兵士たちの剣を躱し、魔導師たちの杖を噛み砕き、一瞬で敵陣の中枢へと切り込む。

 狙うはボルドのみ。


「ひぃッ! なんだこの犬は! 化け物か!」


 ボルドが剣を振り下ろすが、遅すぎる。

 俺はその腕を狙うのではなく、彼の乗っている馬の脚を払った(もちろん手加減して)。

 馬が崩れ落ち、ボルドは無様に地面に転がった。

 そこにガルドが躍り出て、ウォーハンマーをボルドの鼻先に突きつける。


「チェックメイトだ、若造」


 ボルドは顔面蒼白で震え上がった。

 周囲の兵士たちも、隊長の敗北と、ゴーレムや俺たちの圧倒的な強さを目の当たりにして戦意を喪失していた。


「ひ、引けぇぇ! 撤退だ!」


 ボルドは情けない姿で逃げ出した。

 兵士たちも我先にと森へ逃げ込んでいく。

 俺たちは深追いはしなかった。

 圧倒的な力を見せつけるだけで十分だ。


「勝った……!」


 リアがその場にへたり込む。

 俺は彼女に駆け寄り、顔を舐めた。

 よくやった、本当に強くなった。


「ありがとう、フェン。みんな……」


 シルヴィアとガルドも集まってくる。

 俺たちは夕暮れの森の中で、勝利の雄叫び(俺は遠吠え)を上げた。


 この戦いは、単なる防衛戦ではなかった。

 これは『建国』への狼煙だ。

 リアを無能と捨てた王国に対し、我々が独立勢力として立ち上がったことを証明する第一歩だ。

 だが、これで終わりではない。

 逃げ帰ったボルドは、必ず王都に報告する。

 次は国軍が動くかもしれない。

 あるいは、もっと強大な敵が。


 だが、今の俺たちなら恐れることはない。

 俺には最強の飼い主と、頼れる仲間たちがいるのだから。

 俺はリアを見つめた。

 彼女の瞳には、かつての弱々しさはもうない。

 そこにあるのは、未来を見据える女王の輝きだ。


 さあ、次はもっと忙しくなるぞ。

 俺は期待に尻尾を膨らませ、新たなクエストの到来を待った。


【クエスト発生:国家設立宣言を行い、領土を確定せよ】


 やれやれ、女神様も気が早い。

 だが、望むところだ。

 ここからが本当の『成り上がり』だ!

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