表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/90

赤いリボンのとどけもの

 ある町のはずれに、小さな花屋さんがありました。

 お店の名前は「ひなた花店」。

 春になると、店の前の道は、チューリップやパンジーで色とりどりになります。

 そのお店に、花屋さんのお手つだいをしている女の子がいました。

 名前はみおちゃん。

 長い黒髪を、いつも赤いリボンで結んでいます。

 みおちゃんは、花を包むのがとても上手でした。

 大きな花束でも、小さな一輪でも、

 どんな花も、そっと大事に、やさしくくるんであげるのです。


 ある寒い冬の日のこと。

 空には雪のくもがたれこんで、町はしずかでした。

 そのとき、お店のドアが、ちりん、と鳴りました。

「こんにちは……」

 入ってきたのは、小さな男の子でした。

 手袋もしていない手は、まっしろに冷えています。

 男の子は、どこか不安そうな顔で言いました。

「おはなをください。おかあさんに、わたしたいんです」

 みおちゃんはあたたかい笑顔で、男の子に近づきました。

「どんなお花がいいの?」

 男の子はこたえました。

「きょう、ぼくの誕生日なのに、おかあさん、しごとでかえってこないって……だから、ぼくが先にありがとう言いたいの」

 みおちゃんは胸がきゅんとしました。

 なんてやさしい気持ちなんだろう、と。

「じゃあね、ぴったりのお花があるよ」

 みおちゃんは、小さな白いカーネーションを三本えらびました。

 それから、花束を包む紙をひろげました。

 でも、ただの紙だけではたりません。

 そこで、みおちゃんは髪を結んでいた赤いリボンをそっとほどきました。

「これ、使ってもいいかな?」

 男の子はびっくりしたように目を丸くしました。

「でも、それ、みおちゃんのたいせつな……」

「うん。たいせつ。でもね、いまいちばんリボンが必要なのは、きっと君だよ」

 みおちゃんはリボンで花束をきゅっと結びました。

 すると、不思議なことが起きました。


 赤いリボンがふわりと光り、花束のまわりに、あたたかい空気が生まれたのです。

 冬の風も、雪の冷たさも、花たちを傷つけられません。

「わあ……」

 男の子の顔が、ぱっと明るくなりました。

「ありがとう! すぐにおうちにもっていく!」

「うん、いってらっしゃい。お母さん、きっとよろこんでくれるよ」

 男の子は花束をぎゅっと抱えて、走り出しました。

 扉があくと、そこからは雪の光が差し込みました。


 そのあとしばらくして、お店の外からにぎやかな足音が近づいてきました。

 ドアがちりん、と鳴り、あの男の子が、今度はお母さんといっしょに立っていました。

「さっきは、ありがとうございました」

「とても、うれしかったです……!」

 お母さんの目には、きらきら光る涙。

 男の子は、誇らしそうに胸をはって言いました。

「ぼくね、ありがとうっていえたんだ!」

 みおちゃんは、それを聞いて心の中でそっと喜びました。

「また来てね。今度はね……」

 みおちゃんは、ポケットから小さな箱を取り出しました。

「あたらしい赤いリボン、買ってきたから。大丈夫」

 男の子とお母さんは笑顔でうなずきました。

「ほんとうにありがとう!」

「こちらこそ、ありがとう!」


 雪はまだしんしんと降っていましたが、町の空気は、どこかあたたかくなったようでした。


 赤いリボンには、きっと誰かの心をそっとつよくしてくれる、そんな魔法があるのでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ