赤いリボンのとどけもの
ある町のはずれに、小さな花屋さんがありました。
お店の名前は「ひなた花店」。
春になると、店の前の道は、チューリップやパンジーで色とりどりになります。
そのお店に、花屋さんのお手つだいをしている女の子がいました。
名前はみおちゃん。
長い黒髪を、いつも赤いリボンで結んでいます。
みおちゃんは、花を包むのがとても上手でした。
大きな花束でも、小さな一輪でも、
どんな花も、そっと大事に、やさしくくるんであげるのです。
ある寒い冬の日のこと。
空には雪のくもがたれこんで、町はしずかでした。
そのとき、お店のドアが、ちりん、と鳴りました。
「こんにちは……」
入ってきたのは、小さな男の子でした。
手袋もしていない手は、まっしろに冷えています。
男の子は、どこか不安そうな顔で言いました。
「おはなをください。おかあさんに、わたしたいんです」
みおちゃんはあたたかい笑顔で、男の子に近づきました。
「どんなお花がいいの?」
男の子はこたえました。
「きょう、ぼくの誕生日なのに、おかあさん、しごとでかえってこないって……だから、ぼくが先にありがとう言いたいの」
みおちゃんは胸がきゅんとしました。
なんてやさしい気持ちなんだろう、と。
「じゃあね、ぴったりのお花があるよ」
みおちゃんは、小さな白いカーネーションを三本えらびました。
それから、花束を包む紙をひろげました。
でも、ただの紙だけではたりません。
そこで、みおちゃんは髪を結んでいた赤いリボンをそっとほどきました。
「これ、使ってもいいかな?」
男の子はびっくりしたように目を丸くしました。
「でも、それ、みおちゃんのたいせつな……」
「うん。たいせつ。でもね、いまいちばんリボンが必要なのは、きっと君だよ」
みおちゃんはリボンで花束をきゅっと結びました。
すると、不思議なことが起きました。
赤いリボンがふわりと光り、花束のまわりに、あたたかい空気が生まれたのです。
冬の風も、雪の冷たさも、花たちを傷つけられません。
「わあ……」
男の子の顔が、ぱっと明るくなりました。
「ありがとう! すぐにおうちにもっていく!」
「うん、いってらっしゃい。お母さん、きっとよろこんでくれるよ」
男の子は花束をぎゅっと抱えて、走り出しました。
扉があくと、そこからは雪の光が差し込みました。
そのあとしばらくして、お店の外からにぎやかな足音が近づいてきました。
ドアがちりん、と鳴り、あの男の子が、今度はお母さんといっしょに立っていました。
「さっきは、ありがとうございました」
「とても、うれしかったです……!」
お母さんの目には、きらきら光る涙。
男の子は、誇らしそうに胸をはって言いました。
「ぼくね、ありがとうっていえたんだ!」
みおちゃんは、それを聞いて心の中でそっと喜びました。
「また来てね。今度はね……」
みおちゃんは、ポケットから小さな箱を取り出しました。
「あたらしい赤いリボン、買ってきたから。大丈夫」
男の子とお母さんは笑顔でうなずきました。
「ほんとうにありがとう!」
「こちらこそ、ありがとう!」
雪はまだしんしんと降っていましたが、町の空気は、どこかあたたかくなったようでした。
赤いリボンには、きっと誰かの心をそっとつよくしてくれる、そんな魔法があるのでしょう。




