もちもちうさぎのおしょうがつ
お正月の朝、町の屋根の上には、ふわふわの雪がつもっていました。
空気はつめたくて、ほっぺたがぴりっとします。
そんな中、ぴょこぴょこ跳ねていたのは、小さな白いうさぎの もちもちです。
「ぴょん! 今日はおしょうがつ! なにか、たのしいこと、おきないかな?」
もちもちは耳をぴんと立てました。
やねの上から、町のほうをのぞきこむと、家の中からはにぎやかな声が聞こえてきます。
「おめでとう!」
「おぞうに、できたよー!」
「かるた、しよう!」
もちもちは、うらやましくなりました。
「いいなあ……ぼくも、だれかとおしょうがつしたいなあ」
そこへ、ひゅううう、と風が吹きました。
雪をまきあげながら、青いマントをはためかせてあらわれたのは……
「おや? そんな顔をして、どうしたというのじゃ?」
ながいひげをはやした、ふしぎなおじいさんでした。
おじいさんはつえをとんとんと雪に突きさすと、にっこり笑いました。
「わしは おしょうがつのかみさま。おぬし、ひとりでさびしいのかえ?」
「えっ、かみさま!? うん……ぼく、だれかとおしょうがつしたいの」
「よろしい。ならば、友だちをさがすがよい。お正月は、願いがかなう日じゃからな」
そう言うと、神さまは杖をふりました。
すると、もちもちの前に小さな赤いおもちの袋があらわれました。
「それは“もちもちのたね”じゃ。だれかにわけてやると、きっと友だちになってくれるぞ」
「ありがとう、かみさま!」
もちもちはお礼を言うと、雪の町へぴょんぴょんとおりていきました。
最初に出会ったのは、小さな犬のころん。
大きな声で泣いていました。
「くすん……ぼく、おさんぽに行きたいのに、あしがつめたくて歩けないよぉ」
「そうだ! これ、あげる!」
もちもちは袋から、まんまるのおもちをひとつ取り出してころんに渡しました。
ころんがぺろっとなめると、
「わあっ! あしがぽかぽかするよ! うごけるようになった! ありがとう!」
「いいよ! ぼくはもちもち! おしょうがつ、いっしょにすごさない?」
「うん!」
二匹は仲良く雪の道をすすんでいきます。
つぎに会ったのは、木の上でふるえていた小鳥のぴぴ。
「さむくて、はねがこおって、うごけないの……」
「まってて! はい、もちもちのたね!」
ぴぴが小さなおもちをくちばしでちょんとつつくと、ふんわりあたたかい羽がひろがりました。
「とべる! ありがとう、もちもち!」
「いっしょにおしょうがつ、すごそ!」
「すごす!」
三匹はうれしそうに、雪の公園へむかいました。
公園には、ほかにもさびしそうな動物たちがたくさんいました。
ねずみのちゅう、きつねのこん、ハリネズミのちくちく……
みんな、どこかで泣いていました。
「だいじょうぶ! これ、わけてあげる!」
もちもちは袋の中のたねをひとつずつ配りました。
すると、
「からだがあったかい!」
「おなかがぐーってならなくなった!」
「さみしくなくなってきた!」
気がつくと、もちもちのまわりには、たくさんの友だちが輪になっていました。
「よーし! かるたしよう!」
「ゆきだるまもつくろう!」
「うんうん!」
みんなは笑って、雪の上でお正月あそびをはじめました。
ころんが大きな雪の玉をころがし、ぴぴがてっぺんに小枝を運び、ちくちくが細かいところをととのえました。
そしてついに、まんまるでかわいい雪だるまが完成しました。
「わあー! すっごくじょうず!」
もちもちは大きくジャンプして、耳をぴこぴこ揺らしました。
そのとき、空から、きらきらした光がふりそそいできました。
朝日がのぼり、お正月のひかりが世界を照らしたのです。
「わあ……きれい」
光の中に、おしょうがつの神さまの影が見えました。
「よくやったのう、もちもち。おぬしの願いは、ちゃんとかなったようじゃな」
「うん! お正月、みんなでいっしょだと、すっごくあったかい!」
「それを忘れるでないぞ。お正月とは、心がつながる日のことじゃ」
神さまはほほえみ、光の粒になって空に消えていきました。
「みんな今年も、よろしくね!!」
「よろしくー!!」
雪の上には、たくさんの笑い声が響きました。
もちもちは、胸の中がぽかぽかするのを感じました。
ひとりぼっちだったはずのお正月が、いちばんあたたかい日になったのです。
2026年もよろしくお願い致します。




