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シンカータイカー   作者: よぐると
ロス・ガデーンズ王国
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第54話 自慢の筋肉

 変異(ベドロ)の蓄積が魔物、極獣の体を蝕み始めた。

 ロス・ガデーンズ王国の庭林にも問答無用で感染する。

 初めに気付いたのはディープロス(ポイント)の獣研基地。

 行方が不明のアメハを引き戻すことと再び生物の変異(ベドロ)を調べるために庭林に再度行くのだが、政府は承諾してくれず、アメハは政府に回収されてしまう状況になってしまった。


 

 アメハと出会って4日目、植獣メプル・ブアムアダムと出会って2日目になった。

 ロス・ガデーンズ王国には夜に行われる祭がある。

 その祭りとは主に狼獣を祀るためにある。

 祭の名は「ササエゲ」。



「イナサちゃんが私を助けたーー?!」


 フギレはリテルからフギレの気絶後の狼獣のことについて伝えられた。

 フギレの頭を締め付けていた頭痛はきっぱりと消え、狂喜乱舞で騒いだ。


「人生で初めてイナサちゃんの心が私に近づいた!

 しかし意識がない時か。惜しい経験!

 これは早速、礼をするために会いに行くしかない!」

「待ちな、弟。」


 シュトルフが現れた。

 右手には丸く包んだ物で手玉のように遊んでいる。 


「俺がもう礼をしてやった。

 喜んで受け取ってくれたさ。」

「なぜ知っていた?

 それより変なことはしてないだろうな。」


 フギレはシュトルフを睨みながら言った。

 シュトルフは昔から人に迷惑をかけていて、その悪い手癖は一向に直らない。

 シュトルフを信頼していないフギレは狼獣に何かされていないのか心配であった。


 シュトルフが去った後、フギレは先ほどの言葉を信用できず、一人で狼獣を探しに行った。


 すると餅の源の次男のイノリが大きな箱を持って、祭の手伝いをして欲しいと頼んできた。

 承諾して、イノリは指差した先の荷物を運んで欲しいと言った。

 そこには大量の荷物があった。


「これ全部?」

「そうだよ。ほんとは皆んなで運ぶけど、まだ来てなくて。」


 積み重なった箱を見上げて腰が重くなっていると、ムロフがスッと手を一番下の箱にそえた。

 そして5個の箱を軽々と持ち上げた。


 その光景にイノリは驚く。

 一方リテル達は当たり前の光景であって、感謝を言うだけだった。

 そこにイノリの兄のキキリがムロフに挑戦してきた。

 その挑戦とは箱をどれだけ持ち上げられるのか競うことだった。

 キキリはムロフに劣らず立派な体つきをしていて、祭りがある際はこの箱を一気に運んでいるそうだ。

 ムロフは潔くその挑戦を受け入れた。


 まずはお互い5個から。

 両者共に片手で持ち上げることができた。

 

 次に飛んで9個。

 ムロフは余裕で持ち上げたが、キキリには少し負荷がかかってきた。


 まだまだ続いて12個、16個、ついに20個に達した。

 ムロフは力を入れて20個を持ち上げたが、キキリには厳しそうだった。

 しかしキキリは諦めなかった。

 箱をしっかりと掴み、胸突き八丁を覚悟にいざ全身を奮わす。


 箱と奮闘して10秒が経過。


 まだ数ミリしか箱は持ち上がらなかった。

 弟の応援で更に持ち上がるが、まだ完全には上がらない。


 いつの間にか、周りには人盛りができていた。

 見守られる中、キキリの長女のメノリが煽てるようにキキリを挑発した。

 メノリの言葉が火種となり、キキリの心に更に火と怒りがついた。

 

「くそがー!」


 怒り任せな掛け声と一緒に、高く積まれた箱を頭上に持ってきた。

 歓声が上がる。


 キキリは片膝を立てて座り込んだ。

 それと同時に、ムロフを褒めた。


「凄いな、俺の方が長く生きて筋肉もつけているのに超えてくるなんてな。」

「まぁ特性には勝てないよな。」

「反転させてもう一度勝負してみる?」


 ゼヴァがムロフに特性変化を促してくる。


「・・・勘弁してくれ。」


 キキリの挑戦は終了した。

 すると人盛りの様子を見て、釣られてきたカガガは見事だったと告げた。

 キキリは手を首後ろに回して、満更でもないように「あざっす。」と言った。


 カガガはうむ。と言うように頷いた。


「熱くなるのはいいが、日暮れまでに準備は終わるだろうな?」


 一同、我に返り、目的を思い出してそそくさと持ち場へ帰った。




 全ての箱を運び、時間通りに祭の準備が完了した。

 夕日ももうすぐ落ちる頃、国中の蝋燭に火が灯った。

 フギレは狼獣を既に訪れ、帰ってきていた。


 畳が敷かれた台の上には太鼓を持った人が3人。

 中央には2人が素顔を隠して面をしている。

 双方の面は赤と青。

 赤い面をつけた人の両手には竹刀を持って、青い面をつけた人の手には長い槍のような物を持っている。


 日が落ちたと同時に、その祭は始まった。

 ドン、ドンと太鼓の音が森に響いた。

 

「偉大なる狼のきしかた語り続く。

 窮地の国を救ひし勇さまを示して、喜ぶ。・・・」


 などを掛け声に中央の2人は道具を交えて踊り始めた。

 その舞は祭りの終わりまで終わらない狂地の踊り。


「どうだ旅人達!

 これが我らが永らく踊り継いできた本格祭!

 イナサちゃんもこの祭に遅刻したことはなし!

 イナサちゃんも大満足の傑作だ。」


 フギレが騒いでいると、カガガの櫓の上に大きな何かが数人の手によって置かれた。

 あれは狼獣への捧げのようだ。

 最上級の肉や仕込みがされていて極獣には勿体無いと思えるほど絶品だそうだ。

 貴族も羨む、狼獣にだけ許された行為である。

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