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シンカータイカー   作者: よぐると
ロス・ガデーンズ王国
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第53話 正義のズレ

 獣研、ディープロス(ポイント)の基地にて。

 ディープロス(ポイント)の助手、ゾウリ=ウランが進行役として会議があった。

 ゾウリは長身で細身の白髪の中年の男性。

 ディープロス(ポイント)がこの獣研の担当を任せられ、ほぼ同時期に任せられ、長い付き合いである。


「研究員N.118アメハ、ロス・ガデーンズ王国の庭林で消息不明。

 わしが任せた荷物持たせ、要するに狼獣のオオイナサタタツや環境生物の体液、毛、体の一部を保管した計23本中19本を持たせた。

 しかしアメハの消息不明により現在それら全てが紛失した。

 なので現在の案では二通りの案が提案されている。

 捜索を付近の旅人あるいは、本部から捜索隊を派遣してもらう。

 そして二つ目は、見捨てる・・・。」


 ゾウリの二つの案にはメリットもデメリットもある。

 その駆け引きが彼らの足を止めていた。


 庭林ではアメハのように遭難した人を捜索する人が現れるのだが、その捜索は非常に難しい。

 広大な森と霧の発生により、ロス・ガデーンズ王国を守っていた自然のベールが、捜索する人を二の舞にさせてしまう。

 鳥人系の魔人に強力をしてもらうこともできるが、上空からの視界も良好でもなく、地表を覆う葉が邪魔をする。

 地図を踏み外せば死も同然と言っても過言ではない。


 ゾウリの判断はここにいる研究員は知っていた。

 助けに行くというのは概ね捨て身と同じだと。

 派遣を森へ割いてまでアメハを助ける価値があるかどうかということが、彼らの命の天秤にかけられる。


 手を口の前で組む者、腕を組み深く座る者、俯き顔は影で隠れる者、静厳な空間が包み込む。

 そしてゾウリはボソリと一言。


「捜索案を撤回する・・・・・・・・・。」


 彼らの心の葛藤は重く彼らの口を塞ぐ。

 喉から空気が入ってこないと思えるほど、誰も口を動かすことはない。


 ぴくりとも動かない空気の波。

 誰が正しくて、誰が間違っているのか、わからない。



 するとガタガタを地下の階段を駆け上がる一人の研究員の足音が聞こえた。


「ディープロス(ポイント)さん!

 変異(ベドロ)が狼獣、オオイナサタタツから微量の数が発見されました。」


 とそう飛び出してきたのは、生物の分析分野に長けた研究員。

 インショー=コバルト。

 普段から独特な分厚い特殊なメガネをかけていて、興味があるものには他を突き飛ばして、駆けつける曲者。

 活発な男である。


 変異(ベドロ)の発見に驚く一同。

 

「庭林にまで変異(ベドロ)が侵蝕し始めたのか・・・

 現在各地で発見されているものと同一、極獣、魔物の魔力が一段階上昇傾向。

 本部に通達をお願いします!」


 インショーは再び走り出し、階段を駆け降りた。


「やはり研究のために庭林に再び行った方がいいのでは・・・。」


 と、一人の研究員が言った。

 

 そしてほんの数秒、ディープロス(ポイント)は決定した。


「研究兼捜索を実行する。」

「「はい!」」


 緊張から解き放たれた研究室。

 彼らは庭林に行く準備を始め、本部へ一通、連絡をいれた。

 捜索許可を得るため。


「許可を求む。」


 そうディープロス(ポイント)は言った。

 しかし許可は下されなかった。

 それに応じたのは本部最高権力者のイタダキ。

 通話越しから流れ出る低く冷たい声がディープロス(ポイント)へ告げた。


「受諾はしない。

 政府本部が付近の陣を派遣する。

 研究員N.118の回収は我々の仕事だ。」

「回収ではなく引き戻して欲しいのですが・・・。」 

「前にも言ったはずだ。

 獣研の研究には機密性が必要。

 例え優れた者が逸れたとしても処分する。

 漏洩する可能性がある者、物体は全て、悉く滅殺する。」


 政府の回収というのは処分すること。

 ディープロス(ポイント)の計画では回収ではない。

 引き戻すこと。

 しかしその意見はその後の話し合いでも一歩たりとも譲ってはくれなかった。

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