第49話 森の主
ロス・ガデーンズ王国の任務をフギレと引き受けて、森の一部を拠点とする魔物のすみかに乗り込んだ。
そこにいたのは変異を取り込んだウドララーが待ち受けていた。
シャッツの激流によりウドララー達を蹴散らす。
そして咆哮と共にベドロドン・ウドララーが降臨。
リテルとシャッツを苦戦に落とし込む。
ベドロドン・ウドララーの拳がリテルに当たる直前、何かがリテルとベドロドン・ウドララーの間を閃光の如く、雷のように迸る。
その衝撃にリテルを襲う手前の拳が引き下がる。
「待たせた!私の相棒、狼獣 イナサちゃんの登場だ!」
フギレが復帰すると共に狼獣、オオイナサタタツを戦線に召喚した。
極獣 狼獣 オオイナサタツ。
極獣の中でも一種しか存在が確認されていない狼獣。
大型の狼の見た目で、耳付近の毛が長いのが特徴。
風よりも早く移動することが可能。
その速度から繰り出される牙はいかなる者も食らうだけでは終わらない。
「行くよ!イナサちゃんの疾風怒濤の渾撃をしかと眼に焼き付けろ!」
フギレの合図で狼獣は木々を伝い、時には宙を舞い、ベドロ達に幾多の連撃を刻んだ。
あっという間に拠点とベドロ達はボロボロ。
ベドロドン・ウドララーの影も姿も消えていた。
そして討伐後にカイ達と合流。
カイ達一同は何が起きたのかと、口を開けたまま静止していた。
無事、狼獣とフギレのお陰で任務を達成。
オオイナサタタツは風を巻き上げながら森へ帰った。
「どうだ!イナサちゃんの迅撃、大迫力の突風!艶やかに靡く毛!
年中間近で見たいものだ。
しかし・・・私が何度かイナサちゃんを呼ぶのだが、なかなか連携が取れなくてね。
さっきの気分屋のイナサちゃんはたまたま応えてくれたのさ。
かれこれ数十年は共に会っているはずなのに・・・。」
フギレの特性はなし。
特性のない人は多く、農業や商業を主軸として生活している。
しかし特性がなくとも、フギレが森の知恵から教わった進化を遂げた風魔法は移動や戦闘にも範囲は展開する。
特性では真似をしにくい柔軟な変化性で、巧みに扱うフギレはもはや特性がある人を超える力を持っている。
狼獣によって散らばった魔物の拠点の片付けをしていると、フギレの兄であるシュトルフが現れた。
片足をウドララーの死体の上に置いて、言った。
「フギレ、今回は風まかせでオオイナサタタツが力を貸してくれたが、大層不確定な選択をするもんだ。
俺なら仕上がった炎で奴らの雑魚い所を狙い、気づく前に魔物鍋の完成よ。
脳出来の悪い弟を持ったわ。」
シュトルフはウドララーの死体をグチョリと踏み潰し、鼻で笑いながら去った。
「気にしないでくれ、兄はああいう気性だ。
片付けが済んだら国へ帰ろう。」
片付けを終え、ロス・ガデーンズ王国に帰還したオイカゼ旅人団とフギレ。
旅人任務所に報告をするため、大通りを歩いていた。
その道中、道端の長椅子でメソメソと目を覆っている女の子がいた。
薄茶色の帽子を被り、背丈の低い。
隣には女性が女の子の背中を摩っていた。
女の子が顔を上げると、リテルの名を呼んだ。
拍子抜け、リテルは困惑した。
その女の子は涙を拭いながらリテルに話した。
「俺の名前知ってんの?!」
「僕のこと覚えてますか?
政府極獣生物研究員のアメハ=オガネソンです。
えっと・・・学校で薬品をこぼしていた人です・・・。」
脳の端から飛び出た記憶が、数人の頭のモヤを払った。
そして、アメハは森で迷子になっていたことを告げた。
それは少し前、ディープロス点が狼獣のオオイナサタタツの調査をしにきた時の頃。
調査が終わった後、アメハは帰り道で何やかんやあり逸れてしまった。
広大な森での遭難は壮大な物語だった。
手に持っていた生物本を取り出し、食用の昆虫を判別し、食べる生活を繰り返し、ついにロス・ガデーンズ王国に帰ってきたのだ。
しかしディープロス点は迎えに来ない。
まるで森で行方不明の死人のように扱われている気がしているようだ。
そうしてこの状況である。
「獣研の人に見捨てられたのかな・・・。
怒られたり、迷惑かけたり散々だったからなー・・・。」
するとフギレは言った。
「森の捜索は、さらに遭難者を増やす原因になりやすい。
触らぬ神に祟り無し、やむを得ない最善の行動に過ぎない。
しかし!ここへ戻ってきたからには我々も責任を負うべき!
オトモするよ。」
フギレは協力する気だが、アメハが所属している獣研との距離は遠い。
準備をするのに時間がかかる。
数日間はここに滞在しなければならなかった。
アメハを連れて旅人任務所に報告を終えた。
またしてもシュトルフが机に座っていた。
今回は何も口を出してこなかったが、不気味にニヤニヤとこちらを見ていた。




