第48話 花共に団子
ロス・ガデーンズ王国の案内板に着いたオイカゼ旅人団。
ロス王国への道は何本かに分かれていたり、曲がっていたりするようだ。
無作為に進めば迷うことなし。
ロス・ガデーンズ庭林は人を惑わす森で、遭難者が出るものの、外からの魔物や極獣から守る森ともなっている。
時に霧がかかるので注意が必要。
リテル達はじっくり看板に載ってる地図を見る。
「まるで迷路だな。
それに間違えた道には沼や池に着くのか。」
案内板の下にはいくつか紙に描かれた地図が巻いてあった。
地図さえあれば行けるだろうと思った矢先、少し進むと迷ってしまった。
道通りに進んだはずなのに、方向感覚で迷い、道を外してしまった。
これは困ったな。
リテルは場所を確認するために翼を生やし、上空へ飛んだ。
ロス王国はかなり先にあることがわかった。
リテルは馬車に戻った。
道中に新聞が落ちてたのでそれをサイダンは読んでいた。
リテルの指示通りに進むと遂にロス王国に到着することができた。
森の中に出来た王国の家々は華やかだった。
花が咲き、蔓までもが装飾のようだった。
「お前ら、旅人か?」
王国の番人らしきいかつい女性が近づき言った。
頷くと、突然質問された。
最近のロス王国では旅の人がなかなか来ず、新聞配達も滅多に来なくなっていて、外では何か問題が起きているのかと。
しかしリテル達に聞いても解決することができるアンサーを出すことが出来なかった。
「でも、森の中で迷ってきたよ。」
その女性はリテルの片手にある地図をチラリと見て言った。
「地図があるのに迷ったの?
それに迷うほど複雑じゃないと思うけど・・・。」
そういえばと、サイダンは落ちていた新聞を取り出した。
「これ、来なかった日と同じだ・・・」
女性の顔が曇る。
そして新聞をもったまま国の奥に消えていった。
リテル達は困惑しつつも王国に踏み入れた。
ロス王国といえば、という名物が存在する。
それは草結串団子だ。
ロス王国のみに生息する生き物の蜜や植物の果実を含んだ餅を串に刺し、特別な木の葉で包装する。
それができる技術と文化はロス王国の特権。
さらに歴史上、ロス王国は外との文化に触れることが少なかったので、他にも多くの独自の文化が築かれている。
まずは、それらを見るために草結串団子を扱う店に行った。
店名は餅の源。
店には三人兄弟の餅職人がおり、一人一人個性のある餅を作る。
長男のキキリ=ノヒノル。
餅に熱い思いを込め作る熱心な長男。
歯応えのある餅を作ることを得意とする。
長女のメノリ。
髪を括り、閑麗美味を求めた餅を作る。
甘味、風味を強調し甘党を惹きつける餅は誰もを魅了する。
次男のイノリ。
最年少で長男長女に比べ経験は劣るが、負けじと餅を理解し、体力は人一倍。
チーズのように伸びるほど柔らかく、質素な味がする餅を作る。
どの餅も評判が良く、特に長女の甘い串団子はずば抜けて売れる。
ここに来た旅人や郵便屋はたちまち店に並び買う。
もちろん、俺達も例外ではない。
各々が餅を買い、食べる。
草結串団子の大特徴は葉で包装すること。
この葉はジュガンの木の葉が使われていて、ジュガンの木の葉は匂いを閉じ込める。
一口入れるだけで、溢れる甘い匂いが鼻から抜ける。
流石餅の源と言わんばかりの出来だった。
餅を満喫していたところにさっきの女性が駆けてきた。
「国王がお呼びです。」
俺達は王国の中央にある櫓へ連れて行かれた。
国が少しざわついているので心配している。
そして国王と会見。
この王国を収めるのはカガガ=ジドール。
カガガ様と呼ばれている方で、気炎万丈な性格の持ち主。
思ったことをすぐに実行するタイプなので、側近に引き止められることがしばしば。
「急遽呼び出した。
まずは歓迎する。
ここ最近、いやもう少し前から立ち入る人の数が少なくなってきている。
新聞もままならず外の情報を確認することができない。
そのことは側近のシグミがお前らに聞いたと知っている。
もしやロス・ガデーンズ庭林に問題があるのか?」
地図に沿って歩いたはずなのに道を外したということは、地図と森の位置が不一致なのかも入れないと伝えた。
ただ俺達が方向音痴な可能性もありえるが・・・
「協力に感謝する。
我々は直ちに森を調査する。
では。」
会って間もなくカガガは兵を連れて森に入っていった。
櫓から降りてくると、猛々しい男性が話しかけてきた。
服装は野生の獣を模した毛並みが付いていて、まさに獣のようだった。
「やあ、君達。
もしやどこかの旅の方かな?
それなら丁度いい。
今、我々の旅人任務所には魔物討伐の依頼が溜まっている。
最近では旅人が少ないから魔物が森に侵入してくることが多々ある。
どうかな?よければ私もオトモしたい。
君達ならそう手強くない相手さ。
引き受けて欲しい。」
と言ったのはこの国の狩人だった。
この狩人はフギレ=イーレン。
森の均衡と抑制のため、森へ侵入する魔物を討伐することに励んでいるそうだ。
怒涛の熱込み口調で押し流された俺達はついていってしまった。
ロス・ガデーンズ旅人任務所の中では依頼紙があり、それを引き受けようとしたとき、背後からバカにしたような笑い声が聞こえた。
振り返ると、卓に座っている赤髪の男がいた。
「フギレ、俺を退けてガキ共に討伐させるのか?
俺なら丸焦げで掃除できるのによ。
どーして俺を雇わない?」
「とろ火を暴走させて森を惨事の経歴を持つやつに誰が頼むんだ。
単独任務禁止令も発令されている。
兄であれども敬うことは一つもない。」
どうやらフギレの兄のようだ。
弟と違い、気品のないこの男はシュトルフ=イーレン。
フギレはその後のシュトルフの言葉を無視する。
そして俺達はフギレの後を追い魔物が屯する場所へ向かった。
任務所に一人残るシュトルフ。
・・・。
シュトルフは右頬を上げ、不覚にも笑いが漏れる。
何か思いついたようだ。
森の中をフギレは暗記しているかのように右へ左へと歩く。
時々、後頭部を掻くときもあったが、無事魔物の占拠に到着した。
一本の太い木を支柱に、拠点を作り上げていた。
フギレは少し引っかかる。
魔物がこれを・・・。
そこらの魔物じゃ精々高くて火を起こす程度なはず・・・。
まあいいか。
「さあ!惜しまずじゃんっじゃん討伐してくれ。
私は少し離れた場所で見張っておくよ。
それじゃ!悪しき魔物を追い払え!
健闘を祈る!」
そう言ってフギレは走り去った。
「よし、俺の番だ!
突撃!風浪特攻隊長!!」
「待て!」
リテルが阻止する前にシャッツは拠点に激流と共に乗り込んだ。
シャッツが暴れないようリテルはシャッツの後を追った。
リテルとシャッツが見た光景は大勢のウドララーが巣食っていた。
それにただのウドララーではない。
ラレラレットの時とは活気が違う。
単色だったウドララーの体には不規則に黒く刻まれた模様がある。
生死の賢者が反応。
ここにいるウドララー達はリテルの予想通りただのウドララーではなかった。
体の黒く滲んだ模様は大きな変異という物質を取り込んだ影響のようだ。
ベドロを魔物が取り込むと、環境への適応能力の上昇、知力の上昇、力の上昇など作用は多い。
ベドロウドララー達はカイらに気付き、すぐに囲んだ。
「もう後には引けない。侮るんじゃないぞ、シャッツ。」
「大量だ!大量だ!見てろよ!波無ろ諸々(はもろもろもろ)、顕鎧・渦。」
シャッツは魔人ゆえ、魔法を扱うことがままならない。
なので火魔法や水魔法はシャッツに向いていない。
しかしシャッツの特性は水牛。
シャッツがこの特性を水属性が常に発動できるよう、リテル達と逸れている間で自力で身につけたのだ。
これは特性の覚醒にも近い。
シャッツの一つ抜けた力と自身の可能性が覚醒に近きものを引き出した。
そうしてシャッツは水の放出が可能になる。
魔法とは性質が違えど、特有の「顕鎧」により水の鎧を獲得した。
シャッツはリテルの周りを回るようにベドロウドララーを一掃する。
溢れでる激流で更に威力が増した力はベドロを吸収したとて受け切るには無力だった。
「どうだリテル!俺の最強奥義!」
リテルはこの有様に褒める以外できなかった。
その時、低く太い声がウドララーの拠点の奥から聞こえた。
「不倶戴天、親玉から譲られたこの地位の役目。
待ち侘びた、あの日から来る蟠り。
腹括れ!!」
凶悪な咆哮と現れたベドロドン・ウドララー。
ベドロウドララーの何倍もの威圧を放ち、隆々とした血管が皮膚に浮かんでいる。
掴まれてしまった仕舞いには骨を折られるだろう。
「なんじゃ今の音は?!」
ベドロドン・ウドララーの咆哮に下にいたカイ達は慄く。
「リテルとシャッツが危ないかもしれない。急ごう!」
木の板でできた階段を駆け上がっていると、ベドロウドララーに遭遇。
道を塞がれてしまった。
しかしベドロウドララーにも屈しない2人のペア。
ムロフとホールン、強力な筋肉ですぐに解決。
道は開かれた。
「急げ!」
カイ達が到着する前、リテルとシャッツはベドロドン・ウドララーの重い攻撃から避けていた。
安易に近づくと、強化された身体能力で捕まりそうになる。
そしてウドララーの性質として火を使うと皮膚を柔らかくできるのだが、火属性を二人は使えない。
逃げ惑う内に、相手はリテルの動きにだんだんと追いつく。
一振りの拳がリテルに当たる・・・。




