第47話 次こそ安全な旅を
死から謎の復活を遂げたリテル。
オイカゼ旅人団は集結し、祝いと詫びの寿司を食べた。
寿司を食べて、宿に帰っていた。
帰った頃にはもう夜になっていて部屋にはカイ以外がいる。
カイはチの妖精と二人で夜の浜辺で話していた。
ちなみにチの妖精はカイにしか認識できないため、リテル達はカイが一人外に出ている状況。
「チの妖精は何者なんじゃ?」
王国までの道案内、戦闘での共闘、自分にしか見えない存在、それらを含めて質問した。
チの妖精はすぐには答えず、その間海の波音が鳴る。
「おいらはずっとそばにいたのだ。」
その返答にどのくらいの時期からだ?と言うと具体的に言ってくれず、ずっと、としか言わない。
最後にチの妖精とは何の存在なのかと問う。
「おいらの存在?
正しい道を歩むための導きといったところなのだ。」
「正義を進めといことか?」
「正義とは数の暴力でも成り立つ。
おいらがあんたに求めているのは、あんたの正義さ。
あんたの正義は完璧なのだ。」
突然あたりは静まり返る。
チの妖精の声も聞こえなくなったので隣を振り返ると、そこにはチの妖精はいなかった。
付近を探しても見つからない。
「消えたんか・・・?」
カイは一人になって宿に戻った。
そこではリテル達が次に行く場所を決めている最中だった。
カイも混ざり、話が進む。
行き先の候補は、3つ。
大山の国、南西の島国、大森林の国。
まず初めに候補から外したのは南西の島国、アウトサイドネシア王国。
今回の経験から海に対して少し恐怖ができたため。
次に大山の国、ニチュパンリ王国。
山の上に存在している数少ない王国の種類の一つで、人口の大半が魔人という珍しい王国。
そして大森林の王国、ロス・ガデーンズ王国。
略称はロス王国。
王国自体には変哲もない国なのだが、魅力はそこでしか見れない不思議な生物が多いということ。
毎日違う動物や昆虫、はたまたそれらに分類されない生き物と出会うことができる。
その魅力に惹かれたのはサイダンだった。
なんとサイダンは昆虫に興味があり、サイダンにとっていつか行ってみたい場所であった。
極獣の生息地息ではあるものの、事件発生率は長年で低い。
たまにはのんびりとできる旅ができると思い、ロス王国に決定した。
次の行き先を決定して翌日、国を出発することになった。
多くの人々に見送られ、ロス王国への道を進む。
ここからロス王国に行く旅人や通行人は滅多に通ることはなく、整備が施されていない場所も多々ある。
馬車で砂利道の上を移動するため結構揺れる。
森のトンネルの道中には一つだけ宿がある。
しかし無人宿なので、部屋のみが用意されている。
朝から夕方まで馬車を動かした。
夕方には宿に到着した。
「結構年季が入った宿だな。一応手入れはされてるみたいだけど。」
高く鳴る木のドアを開け、中に入る。
中は外の外見とは裏腹にしっかりと掃除されていて、虫や雨水が入っている様子はない。
宿としては劣りのない部屋だ。
埃があってもベットの下ぐらい綺麗だった。
しかし無人ゆえ、食事が出てくるわけではない。
そのため、自分達で山菜や狩りをして賄わなければならない。
ジュガンドラ山付近は木の実を生やす木や植物が多く、自給するには余裕がある。
次に肉だが、鹿獣 コルノボーン・チェルヴォーがここらの生物を一時的に増やしたため、すぐ森に入れば動物は見つかる。
今夜は猪の肉と山菜炒めを食べた。
そして就寝する時間がやってきたのだが・・・
「リテルー!!リテルー!寝るんだ!」
シャッツがとてもうるさい。
少し長い間別れていたため、嬉しさが爆発し、騒いでいる。
「こら!ベットの上で飛ぶな!」
シャッツは叱られ、しょげる。
そしてシャッツは俺の布団に入ってきた。
暑さを感じながら眠りについた。
翌朝、俺の腹の上を横切っているシャッツをどかして、起きた。
なんだか寝付けなかったが、起きるしかない。
シャッツを揺さぶり、起こす。
夜とは違い、朝のシャッツは全然うるさくない。
ずっとこのままでいいのになーと思いつつ、広場に降りた。
すでにカイとムロフは起きていた。
「鈍る前に鍛えるものよ。」
朝のトレーニングを終えたようだ。
続いてゾロゾロとホールンやゼヴァも2階から降りてくる。
朝食を済ませて、日が昇りたての頃に宿を出発した。
人里離れた山奥の朝は冷え込み、寂しい。
動物もまだ活発に動いていないため、静かな森を進む。
ゴロゴロと車輪が鳴る音を聞き、うとうとしていると、一人の老いた旅人が現れた。
片手にはペンを、もう片方には数枚重なった紙を手に、歩いている。
右上当たりを見続けていて不気味に思える。
しかしシャッツに怖さなどない。
「何してんのおっさん。」
パッとこちらを見た。
まるで馬車を今まで認識してなかったかのような様子だった。
「私は景色や生き物を言葉で表して、本にしているのだよ。
至る所を回って、歩いて、見て、聞いて。
感覚を言葉に変えている変なおっさんだよ。」
「もしかして言眺蘇書物というやつか?」
「ようわかったな。渋い奴よのう。」
言眺蘇書物を代表とする1人。
カッサク=ホクサー。
耳が長く尖っており、長寿の家系に生まれた三嶽人種。
山嶽人種とは現在では長生きする血を引いた人種のことを指すが、山に住んでいた人たちのことをさしていた頃もあった。
現在、確認されている最高年齢は五百歳以上である。
カッサクの年齢は二百九十歳。
長く生きれば暇を持て余すので世界を歩き回り、書いているのだそう。
「もしや、ロス・ガデーンズ王国にいくつもりのようだな。
私が今ここで私が書いた言眺蘇書物を読み上げよう。」
言眺蘇書物〜寝ざらむ子へ一話〜
小夜、冷やっこい月明かりの盛夏にて
青く聳える背高き樹木
目疑えど、信じ難き怪奇妙景
ミシミシ、つたう背肌に
招き行く行くと森に消息は絶え絶え
眠らぬ児を震わすその木は御徘霊式木。
ロス・ガデーンズ王国の自然の豊かさを感じさせてくれるのかと思いきや、肝の冷える言眺蘇書物を語ってきた。
「ロス・ガデーンズ王国の魅力を歌うより、興味を唆る歌の方が楽しかろう?
魅力は己の目で見ることを勧める。
さらば。」
カッサクはまた右上を見ながら荒れ道を歩き、別れた。
「御徘霊式木ってなんだ?」
ホールンがカイに聞いた。
御徘霊式木とは言眺蘇書物で有名な、動く木を表して名付けられた名前。
霊や妖精が取り憑いて根を足のように動かしたという迷信から言眺蘇書物と共に生まれた。
一部では昔に木系の極獣がいたのでは、と推測をされている。
「動く木か。そんなのがロス王国にいるのか?」
「あの話は作り話とも言われているんじゃ。
絵本を読むことと変わらん。」
カッサクの言眺蘇書物の話題で馬車の中は盛り上がる。
そうしている内に、ロス王国の案内板に着いたのだった。




