第41話 ぽつんと海の上
突然の立ちくらみで倒れてしまうリテルは焼き魚の匂いで目を覚ます。
知らない場所、俺は誰かの家にいるようだ。
夜の虫が鳴いている。
木造の家の外では一人、火の前に座っていた。
その男は、白い髭が長く、結構歳をとっていた。
「起きたか若造。」
どことなく師匠の声に似ている。
「どうしてここにいる?」
「極獣に海に引き込まれ、ここへ漂流してきて・・・」
「命を救えて何よりだ。」
この男はパンドラ=クロテウス。
この島、メサキ島で生活している老人。
クロテウスと聞いて俺は師匠と関わりがあるのか問う。
なんと師匠の父だった。
俺は驚いた。
自分がパノラロの弟子だと言うと、パンドラは笑う。
「あいつが弟子を作るわけないだろう。
父である私が何を言っても無視するばっかりの奴が、弟子を作るなどと。」
リテルは弟子だと後押ししてもう一度言った。
パンドラは真に受けなかった。
それでもパンドラに一つ聞きたいことがあった。
「生死の賢者」とは一体何なのか、と。
その質問にそっぽをむいていたパンドラは片眉をピクリと上げる。
「お前、その名前を知っているということは本当に弟子のようだな。
それが一体何なのか。」
俺は唾をゴクリと飲み込んだ。
しかしパンドラでも全ての詳細はわからないそうだが、知っていることだけ全部話した。
生死の賢者は、先祖から何度も継承してきて今に至る。
パンドラもパノラロも継承してきた。
そして今、現在持っているのがリテル。
なぜ、継承を繋いでいるのかと言うと、詳しくはわからない。
だが、決して途絶えてはならないそうだ。
つまりリテルが次世代の継承者に託すまで死んではいけないということだ。
「お前は未来ずっと「生死の賢者」を失ってはならない。」
パンドラは眉間にシワを寄せて、リテルの目を見て語った。
お前にはその覚悟があるのか?と言わんばかりの目で俺の目を覗かれた。
するとパンドラは笑い、場が和んだ。
「そんな硬い雰囲気で私は話したいわけではない。
ま、私の知っていることはこのぐらいだ。
ところでそのことはまだ世間に知られていないだろうな?」
世間にはなんとか誤魔化している、と言うと安堵したように夜空を見上げた。
パンドラは火で焼いていた魚を手に取り、俺に渡して、一緒に食べた。
その夜は家に泊まらせてもらった。
パシャパシャパシャ!!
どこかの波の少ない海の上で水が跳ねる音が聞こえた。
夜の月に照らされ、ムロフは走っていた。
大海原を渡るその筋肉の姿は魚を仰天させた。
走った海の先はもちろん港。
遭難から一日で自力で帰ってきたのだった。
浜から国の中を走り抜け、ウナバラ港宿に着いた。
いつの間にか素足になっているムロフは部屋の扉を開けた。
そこにはすでに帰っていたホールン、サイダン、ゼヴァの姿が。
しかし部屋にはもう一人いた。
シャッツが溶け込んでいたのだった。
漂流していたムロフを見た途端にみんなが腕を上げて喜んだ。
喜んでいるとリテルとカイの姿がなく、ムロフは底から喜べなかった。
リテルは星空の下でパンドラと話していた。
「そうか、お前のその名はパノラロから貰ったのか。
血縁は違えどもう家族、俺の孫ということか。」
半日足らずで親しくなることができたリテルとパンドラだった。
翌朝、リテルはパンドラの後をつけて浜辺に向かった。
パンドラは港の方向の海を指差して言った。
「ここを真っ直ぐに行けば、お前の帰りたい場所に変えることができる。
ただ、急ぐでない。
海の上を飛べるといえど海の上は天候の移り変わりが多い。
今日の夜に行くといい。」
それまでリテルは島にいることになった。
島にいる間、パンドラと島の森に入り、魔物の拠点の前に来た。
その魔物はプロテクティバー。
二足歩行に爬虫類のような見た目で、全身は緑色。
目はギョロギョロと動き、気持ち悪い。
過去にパンドラを襲ったが、返り討ちになり、今は大人しく暮らしている。
パンドラはプロテクティバーを集めた後、リテルを一人にして逃げた。
一緒に戦ってくれるのかと思ったがそうで無いことを知り、仰天した。
その間に四匹のプロテクティバーは間をジリジリと詰めて来ていた。
その四匹は三メートルぐらいの石槍を構えた。
リテルも剣を構えて備えていると、リテルの右足に一匹のプロテクティバーの舌が絡まった。
足払いをしても頑なに離さない。
「!?」
俺は振り回された。
パンドラの助けに来る姿は一切なく、もう自力で抜け出せと言っているようだ。
力強く握っていた剣で舌を切り離した。
振り回された影響で背中を打ったが、再生のおかげですぐに治った。
今度は俺が舌を使って四匹を殴った。
全員ノックアウトした。
しかしパンドラは戻って来ず、家のある場所に帰った。




