第40話 再会の海岸とカイの目覚め
海流に流されて港に着いたホールン、ゼヴァ、サイダン。
三人は白衣を着たおじさんに恩人である魔人に会うよう勧められた。
岩の下を通り抜けた先に男が座っていた。
声をかけ、その大きな角がある男は振り返った。
その男はシャッツだった。
「シャッツ?!」
全員、思わず声が出てしまった。
シャッツ・ヴェル=ヴィリーブンは以前にリアー・デタイルの軍勢に呑まれて姿を消していたからだ。
「起きたかお前ら。
あの極獣は俺が追い払ったぜ。」
口角を上げながらシャッツは笑顔を見せた。
「シ、シャッツ生きてたのか・・・
そういえばリテルやカイはどうしたんだよ。
食べられたのか?」
ホールンは取り乱してシャッツに問い詰めた。
「食べられてねぇ。
海流にさらわれただけだ。」
シャッツはリテル達が海に放り投げられた時のことを語ってくれた。
船が横転して渦に落ちたところを遠くの岸の場所から見ていたのだった。
見覚えのある顔が見え、水牛に変身し、海に飛び込んだ。 激しく流れる海の中を走り、ゼヴァをはじめに見つけた。
体は人間、頭は水牛という形で、その後もホールン、サイダンを掴む。
しかしリテルもカイもムロフもすでに海流に遠くへ流されていた。
名残惜しくも海から引き上げようとした時、あの極獣が突撃してきた。
間一髪のところで避け、踵で頭を打ちつけて追い払う。
これが海での一連の流れだった。
「海流に流されたのか。
今すぐに探しに行きたいけど、もう夕日が落ちる。
捜索は明日か・・・」
海流に流され、島についたカイ。
そこは陸続きの浜辺だった。
「おーい。
おーい。」
何度か連呼する声で起きるカイ。
顔を上げて声に応えて返事すると、そこには得体の知れないものがいた。
頭部は粗末な木材でできていて、全身は原型を止めない紫色の四肢と胴体。
カイはガバッと体を起こし、即座に刀を抜いた。
「おどれ、何もんじゃ!」
その紫の素性の知れない者は必死に弁明する。
「おいらは何もしないよー!」
間抜けな声で叫んだ。
カイは一体誰なのか聞いた。
「おいらは言わばチの妖精。
人でも魔人でも魔物でもないのだ。」
チの妖精?
知らない生き物だ。
ますます油断し難い。
「まあ、その武器を置いてくれよ。」
それからチの妖精はなぜカイのところへ来たのか教えた。
「あんたは今、友達と離れ、遭難しているのだ。
つまり、おいらが友達の元へ案内するのだ。」
しかしカイはまだチの妖精を疑っている。
悪の心はなさそうじゃが、迂闊についていっても良いのじゃろうか・・・
そもそも、チの精霊というのも、何が「チ」だ。
血のチか、それとも地じゃろうか?
「その顔、おいらをまだ信用していないようだな。
・・・・・・
あんたは今、どこの場所かも知らずにここにいるのに、手を貸すおいらの手を叩き捨ててどこに行く気なんだ。」
なかなかしぶといチの精霊にカイは折れて、ついて行くことにした。
「初めから素直についてくればいいのだ。
まず、ここはジュガンドラ平原。」
ジュガンドラ平原とはジュガンドラ山の南にあるジュガンドラ森林のさらに下の南にある平原のこと。
ジュガンドラ地方はブレイサー港王国を含み、中央フラット地方の西にあたる場所だ。
この地方には人通りが少なく、整備されている場所もごく一部。
基本的に大半は野生の住処とも言われている。
そんな場所にいるカイだが、苦労してブレイサー港王国にチの妖精と共に行くのだった・・・・・・
「一丁前にわしを誘うが、道筋は立っているんじゃろうな?」
「おいらに道はいらない。星と直感がおいらを導くのだ。」
わしは本当にこんな奴についていっていいのじゃろうか・・・
カイは平原で獣を狩り、木の実を採ってブレイサー港王国に向かう。




