第37話 ルーキー海賊
リテル達は驚いた。
宿を飛び出して道に出ると、何人もの人が雨の中でも関係なく走り逃げている。
逃げる人々の中には寿司屋のニザスがいた。
「お前達も逃げろ。
まさか・・・戦うわけじゃないだろうな?
一人前の旅人といえどまだ海賊に敵う実力じゃない!」
手を肩に置き、激しく揺さぶる。
店主の本気さが伝わってくる。
ホールンも逃げるように促すが、それでもリテルは拒否した。
「港を守ってほしいが、無茶だとわかっている。
グレイン海賊の船長、雨海のジャック=ウォータンは二刀流激色波。
最近のルーキーの頃から大器の片鱗を見せ、暴れているんだぞ!
魔法も特性も通用しないという情報だって出ているんだ!」
そしてグレイン海賊がこの王国へ上陸した。
「もろごし置いてけー!!」
掛け声と共に金品を漁る。
店主は海賊がすぐそこまで迫っていることに焦り、リテルの手を強引に引っ張る。
リテルは店主の手を振り払った。
「リテルがその気ならわしもついて行く。」
翼で空を飛び、海賊に接近した。
リテルと同年代ぐらいの黒髪パーマで、青い海賊帽子を身につけた奴が船長のようだ。
ジャックはリテルに気づき、喜んだ。
「ガキ虫が一匹か?!
俺に勝てると思ったのか?自惚れた奴だな。ゾー、相手しろ。」
ゾーと呼ばれる男がリテルの前に立ち塞がった。
しかしリテルの前では無力、舌で捕まえて地面に叩きつけた。
その光景にジャックは笑った。
「俺はお前を力量を見誤っていたようだな。
しかし、俺には勝てねぇ!」
ジャックは右手のひらを空に向け、雨粒を手から腕にかけて纏った。
「俺はどんな物でもこの手に纏うことができる。
たとえ全てを燃え尽くす業火でも、誰もが慄く雷でさえ俺は怯えねぇ。
引き寄せろ、吸獄!!」
今度は左手の平をリテルの方へ向けて特性を発動した。
その瞬間、リテルの体はジャックの方へ引き寄せられる。
それを狙ったジャックは構えを取り、固く纏った水で殴る準備をした。
ジャック=ウォータン。
特性、「纏力」。
物体を引き寄せ、腕から手にかけて纏うことができる。
人に対して使うとき、引き寄せることが可能。
リテルはこのまま吸い込まれてしまうと、もろに攻撃を受けてしまう。
そうはさせないと、リテルは舌と翼を使い、その引力から自分を引き剥がした。
「いい特性を持ってるじゃねえか。
この技から抜け出したのは今までお前一人だけだ。
名前を聞いておこう。
名はなんだ?」
正直に答えると、海賊の仲間の一人がジャックに何か耳元で囁いた。
「お前があいつらから国を守った奴か?
そりゃ相当の実力を持っている訳だ。
それでも俺には勝てない。」
右手の平を次は空に向け、偶然なのか必然なのか落ちてきた雷を纏った。
ジャックの両手には雷と水が纏った。
その間にリテル以外の仲間も到着した。
「全員、雷雨餌食となれ!」
ジャックが両手を合わせ、右手に電気と水を纏わせた。
その右手をリテル達の方向へ振りかざす。
一気に放たれた二つの属性がリテル達を襲う。
リテルは咄嗟に舌でみんなを覆う。
一瞬の激痛がリテルの両腕に突き刺さった。
舌は損傷したが、再生により修復された。
痛みは癒えないけれど、傷はない。
「もう一度いくぜ。」
再度リテルは庇うがこれを続けて行くと、体が持たないと考えたリテルは攻撃の手に出た。
間合いを詰め、剣を振る。
しかし固く纏った水がリテルの攻撃を防ぐ。
今度は舌で捕まえると、店主のニザスが言っていた通り、特性を弾かれた。
能砕を持つジャックはリテルの拘束に動じない。
カイの斬りつけにも対処した。
ゼヴァの水魔法も当然効かなかった。
それは能砕と同じ「激色波」の類いを持っているからだ。
その激色波は「超砕」。
魔法に対して反発することができ、超砕の量が多いほど反発は大きくなる。
能砕と超砕を持つジャックは生半端な特性と魔法ではどうしようもなかった。




