表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シンカータイカー   作者: よぐると
ラレラレット王国編
35/48

第33話 尽くした祝福

 陛下がイェーローズ村に行っている間、国民はオイカゼ旅人団を祝うために祝祭の準備をしていた。

 そのときリテル達はジャッジメント公爵に城へ誘われていた。

 

 花柄のステンドグラスの窓から光が差し込んでいる広間で、机を挟んでジャッジメントと話す。

 

「ブルーイチの件はすまない。

 子供にこんな重大な荷を負わせてしまった俺は情けないな。」


 ブルーイチに刺された腹をさすりながら言った。


「そういえば・・・君達は中央フラット王国出身なんだってな。

 ちゃんと名前を覚えておこうと思って、任務所から旅人カードを覗いた。

 中央フラット王国は最近、いや現在ぐらいで消滅した。

 何か知っているのか?」


 流石にギポーとの戦いで国をぶっ壊したとかいえねーしなー・・・

 もしそんなこと言ったら、政府に捕まって人生が終わってしまう。

 ありそうな言い訳でも言っておくか。


 国に帰ってきた時にはもうなかっただとか誤魔化しながら、リレー作文のように話した。


「それは災難だった。

 君達は今後波乱万丈な旅を送りそうだな。」


 少し話しをした時、ミンセン・ヴェル男爵が入ってきた。

 ミンセン・ヴェル男爵はブルーイチとヨサヌス子爵の火葬を済ましてきたようだ。


 ミンセン・ヴェル男爵は悔やむ。

 やはり心が痛い。

 長年共に上がってきた年来の友のような人の顔を見れずに終わるのは。


 手を腰に当て、息が口から筒抜けるように吐いた。

 それから空いた席に座った。


 ジャッジメント公爵は言う。


「ミンセン・ヴェル男爵はかなり子爵と仲が良さそうに見えた。

 その友を失う気持ちは俺にはわかる。

 俺にも数十年前に弟を亡くしたことがある。

 突然行方不明になった弟を見つけることができたのなら、と今でも思う。」


 肩を落としている男爵を慰める。

 

 すると陛下が帰ってきた。

 いつものにこやかな顔ではなく、どこか悲しんでいる顔に見える。


「火葬は済んだか?」


 残念そうに陛下は言った。


 ミンセン・ヴェル男爵はその様子に少し違和感を持ちつつも、肯定した。


「遺骨はもう壺の中に入れている。

 いつでも「罪の魂(クリム・アニマ)」に入れることができる。」


 陛下はその予定だったが、変更することを言った。

 それは埋葬する場所を変えるということ。

 当然、ミンセン・ヴェル男爵は疑問を持つ。


「罪人にいくら情をかけるつもりで?

 我は彼がすぐに地獄へ行ってほしいのだ。」

「情けではない。

 この国の為・・・だ。」


 何か他のことを含むように答えた。


「この国の為?

 罪人ならば罪を背負って国に謝るのが真っ当ではないか?」


 その通りだとしか言えない。

 ただ私が彼をあの世に送れば、霊となり、災いを訪れさすだろう。


「変えるほどの事情があるのだ。

 その壺をもってこい。」


 側近は辿々しく、白の表面に青い紋様の入った壺を持ってきた。

 

「私は今からこの壺を持って埋葬する。」

「それなら俺も行・・・」

「私一人でいい。

 祝祭開始までに帰ってくる。」


 ジャッジメント公爵の言葉を振り払って扉を閉ざした。


 悪くも慈悲深い陛下だ。



 カカト谷の見える少し離れた緑のある丘で陛下は足を止めた。

 そしてそっと壺を置き、陛下らしくない胡座をかいた。

 ブルーイチと本当に話しているかのように、壺に話しかけた。


「君は素晴らしい父親として生きた。

 全てを捧げたその生涯は愛そのものだった。

 生涯を誇りに持ち、地獄で償ってほしい。」 


 陛下は土を掘り、壺を埋めた。

 



 陛下が帰ってきたのは夕日が落ちる前、祝祭の始まる前だった。


「もうそろそろだな。

 主役はお前らだ。

 存分に楽しめ!」


 公爵がリテルの背中を手で叩き、送り出した。


 リテル達は城の扉が開くと同時に大勢の人とレッドカーペットに迎えられた。

 人も魔人も差別のないこの国は最高の王国だ。


 リテル達は夜の星に照らされながら祝祭を楽しむ。

 ホールンが食べることができなかったフルーツ、「セコスギル」を食べる。

 ゼヴァもフルーツが好きで、弾んだ声でホールンと話した。


「そんなに喜ぶなんて思ってなかったよ。」


 お祝いに陛下から国復旧後とは思えない量の食べ物が出てきた。

 肉に野菜、スープをもてなされた。


 食事中、リテルはつぶやいた。


「この国にいるのも後少しか・・・」

「もう行くのか?」


 ホールンはこの国を離れることが名残惜しいようだ。 


「旅をしてるんだから次に行くのは当然だ。

 それに、惜しいと思えばまた行きたくなるだろ?」

「なるほど。

 じゃ、僕は悔いのないように満喫してこようかな。」

「話聞いてたか?」


 食事中にふと遠くを見るとカラルが見えた。

 カラルは食事を羨ましそうに見ていた。


 俺が手招きをすると、嬉しそうに駆け寄った。

 俺はカラルに食べ物を分けると、人の姿になり食べ始めた。

 長い黄色の髪に高い鼻の姿だ。

 ラクダだったとは思えない筋肉を持ち、ムロフが食べていた手を止めるほどだった。


 平和が戻ってきた王国ではもう緊張は欠片もなく、みんなが笑えるぐらいの祭になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ