第27話 侯爵の変
見てしまった・・・
ホップアップ公爵がブルーイチ侯爵に殺害されてしまうところを・・・
俺はどうすればいい。
陛下は今、政府本部にいる。
そうすれば誰に話せばいい?
前々からブルーイチ侯爵がホップアップ公爵を狙っていたことに薄々気づいていたが、こんな未来になるとは・・・
一旦、冷静に退散しよう。
落ち着け、俺。
ホップアップ公爵が殺害された時、リテル達は祭を満喫していた。
「リテル!
今度はこっちに行こう。」
祭に浮かれるホールンに引っ張られ振り回されていた。
「切り上げの見定め時を考えてよ。」
魔人なのにどうして僕は人の体力に負けてるんだ・・・
「はいはい。
あと最後だけ。
美味しいフルーツがあるんだ。」
ホールンが最後に向かった場所はデザート屋。
「最後は〆のフルーツでしょ。
ラレラレット王国には有名なフルーツがあるんだ。
フルーツ好きのゼヴァも・・・
あれ?ゼヴァは?」
振り返ってもゼヴァの姿は見えない。
人混みの中で逸れてしまった。
逸れたゼヴァはこの国の伯爵、ジャッジメント伯爵と細道で出会っていた。
「夜一人でうろつくと危ないですよ、お嬢さん。」
ゼヴァが逸れた理由は酔った輩集団に絡まれていたからだ。
そこで暗闇から現れたのはジャッジメント伯爵。
伯爵の精悍な様子には異様に大きな力を感じる。
その様子に怖気付いた輩達は詫び、一目散に逃げた。
「お一人ですか?
お連れはいませんか?」
「友達と逸れて・・・」
雑踏に飲まれたどり着いたのか。
可哀想に。
今は追ってくる者もいないだろう、逸れた友達の元へまで手伝おう。
ゼヴァは友達がフルーツのある店に向かって行ったと伯爵に教えると、伯爵はすぐそこの壁に両手を出し、引き裂くと何処かへつながる穴ができた。
「この道を進めば目的の店に行ける。
ついてきなさい。」
不思議な空間を歩むと、伯爵は出口を作った。
出口の外には大きくムロフが見えた。
無事合流することはできたが、リテル達は驚いていた。
「どうしてジャッジメント伯爵がここへ?」
「この子が迷子だったようでね。
付き添いだ。
それと・・・君達なら頼めることができるであろう話がある。
急ぎめで頼めるか?」
恩人に拒否はできない。
速攻で話を聞くことにした。
ホールンはガックリしていたが、いつでもフルーツは食べられると慰め、ホテルへ戻った。
「王に認められた君達になら話せる。
無垢であり、心の芯を持った君達だけお願いできる話だ。」
ジャッジメント伯爵はホップアップ公爵がブルーイチ侯爵に殺害されてしまったことについて話した。
衝撃的な切り出しだったが心を落ち着かせ、真剣に耳を立てた。
今は陛下が離席しており不在で、ブルーイチ侯爵を追放することができない。
しかし、陛下の悪行をした者は牢へ入れることはできる。
そこで手伝ってほしいのは、ブルーイチ侯爵が暴れた時。
伯爵ができる限り大きな事態にはさせないようにするが、もしものために構えてほしいということだ。
ブルーイチ侯爵は足音を消す「消足」、異次元から物を取り出すことができる「呼穴」を持っている。
一見手ぶらでも油断できず、背後も警戒しないといけない。
取り押さえるまででもいいから手伝いしてくれと。
ジャッジメント伯爵の予想ではブルーイチ侯爵は自室にいる。
城前で待機してほしいと告げた。
計画の実行は明日。
ブルーイチ侯爵の姿が現れた時に即開始する。
その日はジャッジメント伯爵は帰り、準備してくるようだ。
突然の出来事で眠れない夜を過ごした。
次の日の早朝、ジャッジメント伯爵は出迎えてくれた。
人は少ないがゴミがちらほら転がった国を歩き、城前に到着した。
「ここで待っていてくれ。」
一言だけ残して、城の扉を開けて入っていた。
ジャッジメント伯爵はブルーイチ侯爵とホップアップ公爵の自室前の門番へ話し、通してくれと言う。
が、頑なに通してくれない。
ブルーイチ侯爵は何か門番に仕掛けたと俺は思った。
仕方なく、壁抜けをしてブルーイチ侯爵の自室前に出た。
血痕も死体も無い・・・
前に見た時はあったのだが、ブルーイチ侯爵が隠したか・・・
知らぬ顔で行こう。
ドアをノックするとブルーイチ侯爵が顔を出した。
「なんの用だ?
手短にな。」
俺はドアは半開きどころか顔を出せる程度しか開かない様子を見て、中に何かあると感じ取った。
「ホップアップ公爵を探しているが、見つからない。
何かご存知ですか?」
「私は知らぬぞ。
さぁ、帰った。」
冷たく返答された。
怪しい、実際のブルーイチ侯爵はもっと暖かく返してくれたはず・・・
普段のブルーイチ侯爵を装えていない偽者と見た。
「お前、ブルーイチ侯爵ではないな。
変装を解きたまえ!
何者だ。」
舌打ちを鳴らして、ドアをガッと開け、俺の脇腹へと刃を突き出してきた。
間一髪で避けるのはいいのだが、ブルーイチ侯爵はすでに何処かへ逃亡している。
こいつに掛けている時間はない。
すぐに奴を捕まえなければ、と振り返り逃げた先で壁に穴を開けた瞬間、後ろから俺の腹を刃が貫いた。




