第26話 幸せのために
なんとか旅人団を作ることができたオイカゼ旅人団。
リテルは特性スリにあったが問題なし。
希少特性などお構いなしにデバフ特性を奪ってくれたスリには感謝だ。
そうこうしている内に空は暗くなってきた。
夜になると涼しくなる。
今夜は五爵就任祝いのパーティーがこの国全体で行われる。
装飾もかなりこだわっている。
パーティーも気になるが、今夜泊まる宿を探さなければ。
「ユー達にピッタリな宿を紹介する!
ミンセン・ヴェル男爵の領土、ケンパーク区域のアンカッセン。」
アンカッセンはラレラレット王国の中で一番大きな宿で、数多くの旅人が泊まっている。
この宿は魔人が経営しており、魔人嫌いな奴は高い金を払えば人が経営している宿に泊まることができる。
これは魔人でも生活費を稼げるように国が作った経済回しだ。
もちろん俺達は魔人差別はしないのでアンカッセンで泊まることにした。
アンカッセンは綺麗、清潔、おもてなしを兼ね備えた、どの王国でも最高の宿とも言われている宿である。
ラレラレット王国に長くいる旅人はこの宿目的でもある。
宿で部屋を取ったリテル達はパーティーへ向かった。
そこでは夜でも子供がいたり、大人が酒に酔っていたりしていた。
屋台も国中に広がっていてどこでも物が売ってある。
俺達は祭を楽しんだ。
その頃陛下を除く、五爵の会議後にて。
ワシはこの国の公爵。
約十二年程この地位に君臨。
今は会議後なので自室で待機している。
地位を保つことはいいのだが、年々ブルーイチ侯爵が妙に気になってくる。
なんと言い表したらよいのか。
殺気高い視線を感じる。
見つめられている時はできる限り動揺を隠しているが怖い。
いつか殺されてしまうかもと夜も安易に眠りにつくことができない。
今回の会議でもワシが気に食わないのか時々話を遮る。
もしかすると何か企んでいるのかもしれない。
窓を開け、部屋から見渡す景色は城下町一帯を映す。
祭はいつ見ても高揚する。
足を運ぼう。
自室の扉から出たところにはブルーイチ侯爵が立っていた。
「な、なんのようだ?」
暗闇の中で佇むブルーイチ侯爵の姿は異様だった。
一歩近づけど動く身振りは一切ない。
腹をくくり歩み寄ると、そこにあったのは斜めに向いた鏡だった。
ワシはそこで理解した。
ブルーイチ侯爵は人柄がよく、時にはマジックで人々を脅かし、楽しませる。
表柄はワシよりいい評価だっただろう。
ただ、内面は欲に飢えた肉食動物だ。
鏡に反射した方向を見ると、刃渡りの長い剣でワシを突き刺した。
「ブルーイチ・・・一体なんの真似だ・・・?」
ワシは人生で初めて死に直面した。
ここは警備が硬いから誰も入ってこれない。
つまり目撃者もほぼ無し。
助かる見込みはない。
これが公爵の仕打ちか・・・
ブレる目でなんとかブルーイチの腕を掴む。
「これで遂に私の願いが叶う。
どうか許してくれ?
この刃の先に家族が待っているんだ。
神が見ているのなら、どうか身届けてほしい。
これが罪ではなく、選択として。」
夜、騒がしい王国で静かな刃音が響いた。




