第25話 始まりの話し合い
王は五爵と集会があるのであと二時間程、暇ができる。
今のうちに旅人団名でも考えておこうか?
「僕さ、ラレラレット王国に来たら見たい物があるんだ。
ラレラレット地上絵を。」
そういえばそんな有名なものがあったな。
賢者の存在が過去に実際にいたことを表しているだとか憶測がかなりある不思議な絵だ。
暇つぶしがてら観光しよう。
地上絵はここから数キロ先にある。
だからカラルとスーペの背中に乗ってラレラレットの地上絵に向かった。
砂漠とは違いサボテンも緑も一切ない。
一体どうやって家畜を育てているのだろうか?
「この崖の奥にラレラレットの地上絵がある。
ミーはここで休んでいるからねー。」
カラルは岩を枕に寝てしまった。
「ごめんね、カラ兄はおしゃべりだけど体力がなくてね。
ここからは僕が案内するよ。」
スーペに案内された場所は崖だ。
突然砂の中から突き出たように、不自然な岩が崖をつくっていた。
ここから下を覗けば地上絵全体に絵が見えるそうだ。
遮蔽物がないので風がかなり強い。
恐る恐る崖の先へと進むと見えたのは広大な地に広がる地上絵。
想像よりも遥かに大きく、鮮明だ。
古生代アタマデッカチ族は一体どんな技法で書き残したのか。
俺でもこんなに考えさせられる地上絵ならば、研究員はもっと考えているのだろう。
羽の生えた獣、無数の目を持つ獣、尾を咥える獣・・・
この世に本当にいたのか疑わしい生き物が描かれている。
その獣たちは人を囲っているように見える。
戦っているのか、はたまた人を守っているのかわからない。
数秒見るだけでも飲み込まれてしまうその魅力は、どんな人でも足を止めてしまうだろう。
「次の場所に行こうか。
こっちの地上絵のインパクトは少ないけど、古古しさが伝わってくるよ。
ちょっと遠くにあるんだけどね。」
カラルを起こし、二つ目の地上絵に向かった。
こちらの地上絵は砂丘の谷の中にある。
砂が積もり、水で固められた谷は崩れることなく、地上絵を保っていた。
冷える風が吹く谷の中は暗く、日が差さないので湿っている。
谷の底へ歩けば見えてきたのは小さな絵。
荒々しくも、神秘。
六人が何かを見つめている絵だ。
この地上絵には七人の人と一つの円が描かれている。
先ほどの絵は獣が人を囲んでいたが、今度は人が円を囲っている。
この地上絵も科学者により常に研究されているが、未だわかっていない。
「おや?
こんな場所に人が来るなんて、マニアックだ。」
谷の上から俺達を見下ろすのは陰に満ちた姿。
そこに立っている人は指を指して指示を出した。
とたんに弾ける音。
研究者なのかと思ったが、どうやら違うようだ。
坂を下ってくるのは極獣のようだ。
『極獣の生態反応。
極獣 植獣 コンゴーン・ロートン。
たくさんの種を持つ裸子植物の極獣。
暑さで活性化し、火災を引き起こします。
森林に生息しており、無害である。』
極獣を操るあの人物・・・誰だ?
「リテル!
上から降ってくるよ。」
上を見上げると自由落下してくる火の玉。
咄嗟に避けた場所には火が燃え上がった。
湿気っているおかげでそこまでの被害はでないが、数がかなりいる。
ゼヴァの水魔法で鎮火、鎮火。
火のついたコンゴーン・ロートンはいない。
火のない隙に剣で水平に切った。
「見事な判断に、技術。
最近の旅人は対応が早いな。
でも僕の姿は見えなかったようだな。
君の特性、貰ったよ。」
リテルに指差しながら話した。
俺の特性を奪った・・・?
集中すれば世界は鈍い、暗闇を見ればはっきり見える。
固定攻撃力1を取られた?
確かに極獣を切る際、サクッとできた。
もしかしてこれはラッキースリでは?
「では。」
固定攻撃力1を奪ったことも知らずにその人物はどこかへ姿を消した。
極獣は亡くなり、安全のために王国に帰った。
王国へ帰った時には五爵の会議の終わり頃だった。
「大変でしたねー、特性スリに合うとは。
ちなみに魔人は特性スリで取られないので結構安心です。
そろそろ国王との対面では?」
スーぺの言う通り、受付に向かえばすぐに案内された。
部屋には先に陛下がいた。
陛下との交換の提案は無事に解決した。
旅人団を作る際は団名を記入する必要がある。
ペンを持ち、紙に書こうとしたが団名を何も考えていなかった。
「団名・・・考えてなかった。」
急遽、団名案を考えることにした。
陛下の時間も奪っていることを考えるとできるだけ早く決定したい。
そこでサイダンが最初に提案した。
団名はフェニックス旅人団。
かっこいい、強い、というイメージを与えることはできるけどあんまり好みではないな。
却下した。
次はゼヴァの提案。
幸先を祈るという意味でオイカゼ旅人団。
意味もよくダサくもない、いい案配だ。
みんなは納得して、「オイカゼ旅人団」と紙に記入した。
リテルを中心とした旅人団が今結成される。
一日後に政府から承認されることとなり、組織カードを陛下へ渡した。
話し合いは終わり、握手をして終わった。




