第24話 ラレラレット砂丘
宿に無事泊まることができたリテルはラレラレット砂丘へ向かった。
草木は少なく、見渡す限り黄土色の砂と海だけ。
遠くにはラレラレット王国らしき建物が見える。
シェフの情報によるとラクダがいるそうだが、いそうな雰囲気はない。
馬車でこの砂丘は渡れない。
ここでお別れのようだ。
馬車から降りて、荷物をまとめた。
荷物を背負って砂丘を渡るのは非常に困難で、一歩踏み出すだけでも疲れる。
大体の持ち物はムロフに預けているが、それでも大変だ。
まだ盛冬なのが救いだ。
一つの坂を登ると砂丘の中に一軒の建物があった。
その建物の看板には「駅」と書いてあった。
駅と書いてあるが駅とは思えないな。
駅といえばでn・・・
急な頭痛がリテルに襲いかかる。
一瞬の頭痛だったがとても痛かった。
歩き疲れているのかもしれない。
俺は翼を使うことにした。
駅に着くと一人の駅員?らしき人と数匹のラクダがいた。
「おう?
旅人かい、ラクダに乗っていくかい?
ラレラレット王国行きのラクダならここにいる。」
俺達は二匹のラクダを借り、ラレラレット王国に向かった。
このラクダはコブが三つあり、足が六本ある。
不思議だ。
「ユーはかなり若そうダ。
ラレラレット王国に何か用があるのか?」
ラクダが喋った。
「お前喋るのか?」
「失礼ダな、ミーは魔人ダ。
ラクダの姿になれる魔人!
ちなみに隣で歩いているのはミーの弟ダ。」
兄の名前はカラル・ヴェル=デザート。
弟はスーぺ・ヴェル=デザート。
家系全員、タンパクシャモーというラクダの一族だそうだ。
ここの働いている理由はラクダだからここにいるのではなく、父親の借金を返しているのだと。
父親と母親は先立ってしまったので、借金を返すために仕方なくしているのだ。
さて、そろそろラレラレット王国の前だ。
中央フラット王国とは違って、軽装な人が多い。
気候の差だろうな。
「まあ、一旦旅人免許をもらわないとだな。」
「旅人になるのかユー達。
ミーが案内するよ。
特性スリには気をつけな。
最近、特性を奪ってくる輩がこの国で多数報告されている。」
スーぺについていくとラレラレット旅人任務所という場所に着いた。
中に入ってみると旅人が何人もいた。
受付の場所に行ってみると、旅人免許を会得するには契約がいる。
名前、出身国、特性の記名、自分の強さを証明できる物が必要だ。
名前に、出身国。
バレットタイム、リサイクル、固定攻撃力1・・・こんな感じでいっか。
次に強さの証明だな。
生死の賢者を使いたいところだがそう見せびらかすわけにはいかない。
何か証明できるものはないだろうか?
俺は一つ思いついた。
あの男の組織カードがあったはずだ。
これで少しは証明できるといいが。
「こんな物しかないけど・・・」
受付に組織カードを渡すと、受付は驚いた。
大声で驚いたものだからホールにいた旅人は全員キョトン顔で振り向いた。
「これはどこで・・・?」
「倒した。」
「秘密結社グロウバロウ団の幹部、三幹のルメニア=デクノーアレを?!」
ルメニア=デクノーアレ?
カイの兄弟か?
「わ、わしは知らんぞ?」
旅人達はざわついた。
受付は場所を変えるために俺達を別の部屋に連れて行った。
部屋に連れて行かれると、数分経ったのち偉そうな人が部屋に入ってきた。
その男はこの国の王様であった。
王の名はトクトウ=ラレラ。
第十七王の統治者である。
王が足を運んだ理由はその組織カードをくれないか、ということだった。
もちろんただ提供するだけではなく見返りも準備していた。
交換してくれるなら旅人、旅人団の結成許可と報奨金、政府補償を貰えるのだ。
旅人団結成は国への申請が必要だがそれを特別、即許可してくれる。
それと報奨金は生きるために必要だ。
もう十分条件だがそれに加えて政府補償もある。
政府補償は秘密結社や反政府組織から狙われる可能性がある人物を対象に命を補償される。
拉致や被害に遭うと軍を出動させることができる。
「軍ってなんなの?」
ゼヴァは疑問に思った。
その疑問に王は答えてくれた。
「軍というのは政府の各地方に分散した戦力だ。
このあたりには橙陣のトコシエが配置されている。
そして・・・交渉はいかがで?
満足いただけないだろうか?」
俺達は了承した。
「それでは用意するので少々時間を・・・」
するとドアが開き秘書が現れた。
スマートな体型にピシッとした服装、伸びた背筋は王の秘書に相応に思える。
「ラレラ陛下。
もうすぐ五爵の選挙発表が開かれます。
ご準備を。」
「もう時間ですか。
よかったら見に来てください。」
ラレラ陛下はこの場を後にして建物の奥へ消えた。
受付が再びこの場に来て、ラレラ陛下の用が済んだ後の二時間後に来いと言った。
ラレラレット旅人任務所を出ると多くの人々がどこかへ流れていく。
外で待機していたカラルに問うと人々は広場に行っているらしい。
広場ではラレラ陛下とその被選挙者が台に上がるようだ。
当選者は公爵や侯爵、伯爵など国から偉い人を選ぶ。
次期王だったり、政治に参加したりなど国の未来を決める大切な選挙だ。
リテル達は押されながらも広場に到着した。
「ユー達、ここでは不審な行動はしちゃいけないよ。
あらゆる場所に見張りがいるからね。
不審者と思われたくないのなら、目は前に向けとくほうが吉ダよ。」
人の集まりが緩やかになった頃ラレラ陛下が台に登り、顔を見せた。
そして次々と当選した選挙者が集まった。
一人目は何年も変わらぬ公爵の座を保つプットアップ=ジャスランティス。
まあ当たり前だな、と言わんばかりの笑みと腕組みで堂々たる立ち姿。
二人目はいつも二番手の侯爵、ブルーイチ=グッドラック。
お辞儀をしながら登場。
律儀とマジックで国民からの支持は厚い。
三人目はジャッジメント=アクバティック。
今回初めて伯爵の座についた若新星。
子爵、男爵を追い越してこの地に立つ。
四人目、ヨサヌス=ブソンハイカイ子爵。
五人目、ミンセン・ヴェル=ギーンセツリツ男爵。
計五人の当選者が台に立った。
拍手喝采で迎えられた五爵は台を降りて城の中へ消えていった。
この後は五爵と王だけが集まる集会が城内にあるのだ。
当選者発表は終わり、人々は広場から離れていった。




