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第20話 魔法学校16

 安全を確認して地上に着陸。


 抱えていたみんなを下ろした。


 ゼヴァ、サイダン、カイ・・・あれ、シャッツとダラとウェルカがいない。

 それにフラベレもいない。

 確実に掴んでいたはず・・・

 シャッツとダラの行方を聞けば、シャッツは水牛(ヴァッサー・デタイル)になってリアー・デタイルに立ち向かって飛ばされたと。

 いつの間にかリテルの舌から抜け出したようだ。

 フラベレとウェルカは見た時にはいなくなっていたのこと。

 誰もその四人の行方を知らない。

 

 四人は行方不明になってしまった。

 

 辺りを見渡せば人影は・・・三つあった。

 シャッツとダラ、ウェルカではなかったがホールンとムロフ、カイの父のグルジエだ。


 ムロフとホールンが残っていた訳は、奇跡の様な話だ。


 サイダンによって飛ばされたホールンは帰宅中のムロフの真上に落ちてきたのだ。

 ムロフとホールンが話しているうちにリアー・デタイルが到着。

 ホールンがムロフを強化し、ムロフは自分とホールンを守りながら群れと嵐を耐え凌いだという。

 二人が協力して生き残ったとのことだ。


 そしてグルジエ。


 グルジエは人には今まで教えていなかった特性があった。

 おそらくカイは知っていただろう。

 グルジエの特性は完璧正義者と煙の子だ。

 煙の子は体を煙に変えて物を透かしたりすることができる。

 風で弾き飛ばされたがなんとか戻ってきたようだ。


 嵐が去ってもまだみんなの頭は混乱中。

 何一つ喋らないそんな状態だった。


 そこで唯一の大人、グルジエは指揮を取り、夜を過ごすことができる物を集めようと言い出した。


 脳を冷やしながらもみんなは瓦礫の国を歩き、物を探した。

 おそらくこの家に住んでいた主人の布団や棚に残っている食べ物を持ち運ぶ。

 生きるためにと思いつつもなかなか進まない作業。

 行方不明の友達や家族を思うと手が止まってしまう。


 これは夢じゃないのか?


 暗示をかけるももう戻ってはこない。

 あの時の学校生活、みんなの暮らしはない。


 そこで俺はあることを思い出した。

 師匠の存在だ。


 師匠の場所とリアー・デタイルが来た方向は同じ。

 嫌な予感がする。


 翼を広げて師匠のいる山へと急いだ。


 空からみた地上はまさに地獄絵図と例えられる。


 飛行を続け、目的地の山に到着。

 山は荒れていた。

 木も草木も横倒れ、さらには修行していた場所も壊れていた。


 師匠の家に戻ったがその家は山と同様、崩壊していた。

 家の木の下敷きになっているのかと思ったがそんな気配はない。


「リテル!

 私はここだ。」


 師匠の声だ。

 その声の方向には木の棒を杖にして立っている師匠の姿があった。

 負傷しているのか歩きが悪い。

 俺は全力で師匠の元へ走った。

 肩を貸して支えた。


「師匠?!

 どうしてそんな負傷を?」

「ふぅ・・・

 かっこ悪いな。

 リテルを救おうと思ったがまさかこの際に来るとは・・・」


 ・・・どういうことだ?

 

「私はリテルを守りたかった。

 だけど、どうも数を見誤っていた。

 ただ、お前に賢者を預けてよかった・・・

 私はこう見えて足の骨に加えて肋骨もいくつか折れている。

 手当したが流石にこの体では次の医者に会うまで体が持たない。」


 なんとなく、次の言葉が想像できる。

 そうではないと頭の中で全力で拒否する。


「はっきり言えば、私は死ぬ。

 生死の賢者で私を取り込んでくれんか?

 人を取り込んだところで何も起きないが、リテルが寂しくないよう取り込んでくれんか?」


 そんなことできない、と俺の受け入れない気持ちが否定する。

 医者なら俺が飛んで探しに行くだとか、薬を使えば復活するだとか提案したが、その可能性は低いだの民家にある様な薬では効かないだの頑なに提案に乗ってくれなかった。


「リテル・・・

 歳を重ねる程、天命を知る。

 私は天命を知ることができた。

 だから取り込んでくれないか?

 耳を順えない私を取り込んでくれるか?」


 声がだんだん枯れてきている。

 肺に少しずつと血が溜まってきたのか吐血し始めた。


 遂には立つこともできないようになってきた。

 視界はもう鮮明には見えない。

 喋ることも苦しい。

 息が上がってきた・・・


「私は・・・人と関わった事がほとんどなかった。

 ただ、リテルと会った頃からか・・・?

 真っ当に話したのは。」


 さらに声は小さくなる。

 

「賢者は委ねた。」


 瞼は目を閉ざした。


 握っていた師匠の手は少しずつ冷えてきた。


「おれ、まだ極獣を教えきれてないよ・・・」


 返事は返ってこなかった。

 本当に別れてしまったことに涙が絶えない。

 泣く泣く、俺は師匠に手をかざし体を取り込んだ。


『取り込みを完了。』


 俺は師匠を取り込んだ後、放心状態で悲しみに暮れるしかなかった。

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