第16話 魔法学校12
極獣夜行。
一年に一度起きる自然の脅威。
鳥獣、蛙獣、牛獣、昆獣などが食料を求めて活発化する。
その日が今日だ。
学校でもグラフ先生からその話は言われていた。
「今夜には極獣夜行があると推測されている。
学校からは極獣の討伐に行きたいものは自由参加という許可を出している。
弱めの極獣が森や山、人里に集ってくるだろう。
腕試しに行くのも良いが、死は誰にしも平等だ。
死ぬ時は死ぬ。
わかったな。」
今日の国々は落ち着かず、いつもより静かだ。
昼から道を歩く者は腰に剣、装備をしている人がほとんどだ。
もちろん俺達もその人達の1人だ。
学校は早く終わり、その後は自由行動だった。
極獣夜行の際はカイ達と共に行動をする予定だ。
王国の周りには王国を守るための壁があり、その壁の外から極獣が食料などを狙ってくる。
今日の極獣夜行には優れた旅人団がこの王国にいるそうだ。
その旅人団とは「テクトロジー旅人団」。
科学の王国、コアセンド王国出身。
隊長は造銃のテクト=ムハンマド。
副隊長は黒筆のロジー=シシャーナーレ。
その他団員で構成されている。
その旅人団の特徴は鉄の装甲を纏う車を持ち、出動する際にはその車に搭乗して登場する。
20年程の旅人歴を持ち、多くの極獣や魔物を討伐してきた。
カイの解説を聞きながら街を散歩していると、いつのまにか日は落ちかけ極獣夜行の時は近づいていた。
「もうすぐじゃな。
極獣とはどんなものかお手並み拝見じゃ。」
壁の外に出てみると既に旅人団、旅人は待機していた。
行事のように思えるが、命懸けの戦いだ。
満月は上がり、深夜に近づいた。
すると極獣達は極獣夜行を始めた。
最初に姿を現したのは、高速で移動する極獣だった。
移動した後にはドロっとした液状のものを出している。
『極獣の生態反応。
極獣 昆獣 メップル・ランカ。
小型の極獣であり、非常に稀な蜘蛛の糸を持たない蜘蛛。
滑りやすい液体状の粘液を放出しながら移動や狩りを行う、高速な狩りを得意とする蜘蛛。
ただし小回りは利きにくく方向転換は苦手という弱点を持っています。』
「なんだ、あの蜘蛛は?
俺が追っ払ってくるぜ!
獣化・水牛」
シャッツは水牛に変身してメップル・ランカに突撃した。
が、案の定メップル・ランカの粘液によってころんでしまった。
おまけにあの極獣以外の生物があの粘液に触れてしまうとその生物に引っ付く性質があった。
シャッツは水を使い粘液を流し、メップル・ランカに一撃を与えた。
一撃だけで意外と脆いのか砕けた。
楽勝だと思ったが、今は極獣夜行だ。
単騎では襲ってこない。
一体を倒したのちに様子見をしていた他の大勢のメップル・ランカが現れた。
多くの旅人が魔法や特性を使うが一向に数は減らない。
そこで登場したのが、有名な旅人団。
運転手はロジー。
助手席にはテクト。
後ろの2台には数人の団員を背負った車が、ドリフトで極獣を引き回しながら倒していた。
「テクト。
この数は去年の比ではない。
未発見の極獣が現れる可能性もある。」
「見たことのない極獣・・・」
テクトはニヤリと片頬を上げた。
「さっさと片付けてしまうぞ。
煙鋼銃。」
レーレのように腕に機関銃のような物を生成、数百発の発射で一掃した。
この旅人団がなぜ有名になったのか意味がわかった気がする。
ほとんどのメップル・ランカは消え、森は静かになった。
だが、極獣夜行はまだ続く。
いつか見たことがある光が街や森を照らした。
光に囚われた人は空中に浮いた。
この能力を持つ極獣はあいつしかいない。
ルナ・プリュネルカ。
満月の光を遮る大きな翼が王国の空を支配した。
「急激な数の変動だな・・・
街の中へ侵入してしまうぞ。
ロジー、お前の番だ。」
「車を任せる。」
ロジーは車から飛び出した。
指から硬く、先が尖った黒い棒を生やす。
そしてルナ・プリュネルカの翼を狙い、槍のように投げる。
棒は完璧に翼を貫いた。
今年の極獣はあまり強くない。
少し昔なら弾かれていた。
この感覚なら大部分の奴は落とせるはずだ。
再び黒い槍を作り先ほどと同じように投げた。
ところが先ほどとは槍の様子は違い電気を纏っている。
まるで雷を振り投げたようだった。
その雷は一体のルナ・プリュネルカに刺さり、そこから漏電した電気は周りで飛行していた奴にも通電。
一撃だけで数十匹を撃ち落とした。
ロジーが慢心するのも束の間。
背後から近づかれ、腕を大きな鳥の足が掴んだ。
ルナ・プリュネルカは隠密が得意な極獣でもある。
それに感知系を無効化することもできるので厄介だ。
しかしロジーは経験済み。
背後からの奇襲にも長年の旅で培ってきた判断力ですぐに対応。
黒い槍を二本同時に生成して、逃げるとともに討伐した。




