第15話 魔法学校11
クフィックは今朝からずっとシャッツを見ていた。
授業中、休憩中もだ。
なんだ。
意外と自分をコントロールすることができている。
この調子ならさっさと終わるだろう。
「シャッツ。
お前の特別指導期間は縮め、管理も緩くする。
しかし素行が荒くなれば再び期間を延長し、管理をさらに厚くする。
わかったな。」
「ていう感じで早く終われそうだぜ!」
それは良かった
カイとの約束でいい結果になることができた。
ただ、次の日に事件は起きた。
「シャッツ?!」
俺達は驚いた。
なぜなら彼の姿はアザがたくさんあったからだ。
ギポーのせいだ。
「帰り道でさ。
俺は水牛になって抵抗しようとした。
けどよ、水牛の硬さを貫通するほど強かった。
ただのパンチだったのに直接皮膚を俺の体に当ててきやがった。
英雄戦記の英雄が使っていた技にそっくりだった。」
「英雄?」
「知らんのか、リテル?
亡き老人英雄を。」
英雄とは滅亡の危機から救ったある男とその仲間のことだ。
捻った特性もなかったその男は、かつて著しく成長したある一種の魔人と極獣を、水色の髪を激しく波打たせながら根絶させた。
強さと勇気は当時の人々の心を希望に変えた。
栄光は人をも魔人をも関係なく当時、後世、現代に語り継がれた。
これが英雄戦記だ。
その英雄は多くの偉業を成し遂げた。
名はパリヴァルタ=ファステル。
「旅人学科に来る人はほとんどがこの英雄のようになりたい言うて来てることが多いんじゃ。
もちろんわしも憧れてきたのじゃ。」
「語る前に俺に解決策を教えてくれよ!」
「それならワタシがいい情報をもってるわよ?」
突如として現れたのはウェルカ=レンノール。
まずい。
ギポーの仲間の人だ。
こんなところを見られたら言い訳など不可能だ。
しかし彼女の返答は予想外の言葉だった。
「もしかして、ワタシを警戒してる?
そんなに大勢いるなら少しは緩い感じでもいいじゃない?」
大勢いるからと油断はできない。
基本的に人間と魔人が仲がいいのはこの世界では異端だからだ。
それに、瞬間移動ができるやつに警戒をしないほうがおかしい。
「安心して。
ワタシはギポーなんかに乗っ取られていないから。」
乗っ取られる?
どういうことだ。
友や仲間ではないのか。
「まだ心を開いてくれないようね。
それなら、一つ。
情報を言うわ。
ギポーの特性は支配者。
そして能砕という物を持っている。」
ウェルカが言うには、支配者とは定めた者に対して服従させることができる。
その服従の条件は「恐怖」だ。
ギポーからの恐怖により、逆らうことができず乗っ取られてしまう。
次に能砕とは相手の特性を無視して攻撃を与える。
その能砕の大きさが大きいほど攻撃は通り安く、微量程度の能砕ならさほど大差はない。
特性や魔法ではなく本人の身体能力だ。
「能砕?!
能砕はあの英雄が使っていた物と同じ物じゃと?」
英雄ほどではないけれど、多少は持っているようだ。
能砕は生まれつき持った身体能力で後天的に得ることは少ない。
ギポーは先天的に才能を持った珍しい人だ。
「どうりで俺の体が妙に痛いわけだぜ。」
ウェルカはその情報だけを残してすぐに消えた。
この場をギポーに見られるのは良くないということを思っての行動だろうな。
「このまま何もできないのは嫌いだ!
早く戦う司令をくれ!」
話し合っても説得ができなかったなら最後は武力だろうな。
でも、今の俺達では説得ができる程の力はないだろう。
なら強くなるまでだ。
一緒に修行をしないか?と提案した。
シャッツは大賛成。
ダラはあまり乗り気ではなかったが、他のみんなは賛成してくれた。
それからは学校帰りには師匠と俺が使っていた修行場所を借り、一緒に修行した。
師匠になぜ強くなりたいのかと聞かれたが、理由は言わなかった。
俺達の向上心に圧倒され次第に理由を聞くことがなくなり、修行に付き合うようになってくれた。
特定の人にはより魔法を使えるために指導もしてくれた。
そして約一ヶ月、俺達は鍛えた。
ギポーを討ち倒すため。
シャッツやサイダン、フラベレは何かギポーに言われようとも言い返さず、我慢を復讐の力に変えて頑張った。
「そういえばなんじゃが。
そろそろ盛夏じゃ。
あの時期じゃないか?」
「盛夏?
あの時期?」
カイが言うあの時期とは極獣が活発に活動する時期のことである。
紅葉が始まる前の夏のことだ。
この世界には枯冬、盛夏、枯夏、盛冬という四つの季節がある。
アキ、ハルという季節はない。
「極獣夜行の始まりじゃな。」




