第12話 魔法学校8
旅人体験学習の際にギポー達に攻撃を受けたフラベレは復讐に燃え、放課後に決闘を申し込んだ。
決闘までまだ時間はある。
それまでにどうするのか、作戦を練らなければならない。
フラベレの特性はアバンギャルド。
放つ魔法の軌道が不規則に変化する。
一般的に真っ直ぐ飛ぶ魔法をアバンギャルドが使うとうねったり、直角に曲がったりする。
予測は不可能に等しい。
それがフラベレの最大の武器だ。
そして、決闘の時が来た。
俺とカイは近くに入れないので少し離れた場所から見ることにした。
フラベレの近くにいるのはダラ、サイダン、ゼヴァの合計4人。
集合場所で待っていると約束通り、ギポー達が来た。
「あら?
本当に戦うんだ?
少しは度胸があるんだね。
だけど怯気が漏れてるじゃない。
それと、私は魔法、特性両方とも弱いからさ、レーレが遊んであげるって。」
レーレもギポーの味方だったのか。
レーレの特性はいまだに知らない。
旅人体験学習の時に聞いておけばよかった。
そういえばレーレは特性を一切使っていなかった。
ただカイにはある程度の予想があるようだった。
レーレの特性はくっつける系の特性じゃと思うんじゃ。
詳しくはわからんのじゃが、父から教えてもらったムハンマド家にはある伝承を話そう。」
昔、カイの曽祖父にあたる人がいた。
その人の名はカフカス=デクノーアレ。
デクノーアレ家はパラチ宗王家(現在ムハンマド家)の武藩守という国に所属していた。
武藩守はこの時代でいう、国を持った国宗教である。
パラチ宗王家の血筋には神から預言をもらえるというものだった。
ところがある日突然、神からの預言をもらえなくなってしまった。
原因は不明。
今までは成功していた農業などが次第にできなくなり、宗民の信頼を徐々に失ってしまった。
そして、宗民の間で陰謀論がその国で急速に広まってしまった。
それから半年、不景気になり今まで行なっていた預言もなくなり、宗民を騙したとして宗民一揆が国を滅ぼした。
しかし、国が滅ぶ前に唯一パラチ宗王家に仕えていたのがデクノーアレ家だった。
デクノーアレ家のカフカスはパラチ宗王家に最後の頼みを告げた。
パラチ宗王家最後の子孫の子供を連れてこの国が滅びる前に逃げろと。
カフカス、その他2人で子供を守り抜いた。
その国から逃げた子供の特性は連結。
物同士をくっつける特性だった。
現在はパラチ宗王家の名前は変わり、ムハンマド家という一般の市民に変わった。
そして、ムハンマド家になるとデクノーアレ家との関係は途切れた。
ここまでが父から教えてもらった話だと。
つまり、レーレの特性は物をくっつける系の特性だとカイは予測した。
けど、俺はそれよりもデクノーアレ家とムハンマド家でそんなことがあることに驚いてしまった。
ついにレーレとフラベレの戦いが始まるが、レーレは全く特性を使わずに魔法ばかりだった。
フラベレも特性が魔法に乗る特性だから魔法のぶつかり合いが起こっていた。
フラベレのアバンギャルドのおかげでレーレは魔法を軌道を予測することができずに優勢だ。
一方、レーレは不規則な動きに戸惑い苦戦している。
そしてついに特性を発動した。
「通銃」
レーレの手には瞬時に作られた銃を握っていおり、フラベレの胸部を貫いた。
その光景は一瞬の出来事だった。
フラベレは地面に倒れ、見守っていたダラ達が駆けつけた。
ダラはレーレに怒った。
「本当に殺すわけないでしょう。
私の技名、わからない?
true、lie、full。
完全な本当の嘘って意味。
撃った銃弾は死人が出るほど強くない。
つまり、死んでいない。
ショックで気絶中じゃない?」
フラベレには確かに血痕はない。
しかし、フラベレはもう立ち上がることができないので今回の勝者はレーレだ。
俺とカイは悔しむだけだった。
それはその場にいた3人も同じだった。
「どう?
わかったかしら?
魔人は淘汰されるべき種族なのよ。
殺したってよかったけどレーレの慈悲で死ななかった。
これが人間の力なの。
試合は終わったし、これで終わりね。」
ギポー達はこの場所から去った。
俺とカイはギポー達がいなくなったのを確認して、フラベレのそばに行った。
幸い、フラベレはすぐに目を覚ました。
フラベレはあたりを見渡した。
しかしギポー達の姿はなかった。
そこでようやく自分が負けたということを理解した顔をする。
「フラベレ。
よくやってくれた!
わしの心にその勇姿、しかと刻まれた。
称賛じゃ。」
カイはフラベレの勇気を称えた。
その時の夕日は皮肉なことに静寂で冷たい光を放っていた。
明日は同じように変わらぬ日になるだろう。




