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第10話 魔法学校6


 誰かの仕業かわからないが驚いた反動でルナ・プリュネルカの翼を公にしてしまった。


 やべえ。


 それしか思いつかなかった。

 俺を驚かした魔法の小細工はすっと消えた。

 

「魔法はしまえ。」


 グラフ先生がいつの間にか後ろにいた。

 魔法と思われているということでいいのか?

 大丈夫なのか?


 ぎこちない歩きで自分の席につく。

 先生は気にせず朝の朝礼を始めた。


「今日から旅人体験学習を行う。

 年に一度、政府から推奨される恒例行事だ。

 約1週間、国の外にある拠点で自給自足や特訓をする。

 魔法や特性を使って本格的に魔物と戦う。」


 旅人体験学習は現役、退役した旅人が直接指導をしてくれる。

 敵対してくる環境生物を討伐、山菜や狩りをして食料を調達する。

 かなりハードな時もあるようだ。

 グラフ曰く去年の旅人体験学習では多くの環境生物がいたらしく良くも悪くもいい思い出だったのだとか。

 そんな旅人体験学習は今年はどんなことになるのか。

 ちなみに死に対して保証はなく、旅人になるなら死は当たり前のことだ。

 

 拠点への移動は馬車だった。

 中央フラット王国西南部を出て東の森だった。

 この森は「カナメ森」というらしく、森の中央には湖があり中央フラット王国の貯水湖としてされていたから名前は国の要としてカナメ森と命名された。

 他にも木の実を実らせる木が多く存在していることから果実を集めるのに最適。

 旅人体験学習先の場所としても最適だ。


 数分経ったところだろうか、森に馬車が突入した。

 あまり道路の整備はされていなく、座っていたため尻から振動が伝わった。

 馬車に揺すぶられながら目的地に到着。

 湖付近、木々に囲まれた拠点は静かな場所だった。


 まずは班を決めるところだった。

 4人1組で構成するようだ。

 初めは俺とカイとムロフに決めたがあと一人足りない。

 魔人を誘えばギポー達がまた何かしてくるかもしれない。

 なので人間の中から選ぶことにした。

 これは差別ではない。

 ギポーが変に手を出してくるのを防ぐためだ。

 見渡すと班を組んでいない人がいた。

 確か、レーレ=ムハンマドだったかな?

 両足が機械のその人がいた。


 スカウトするとすんなり受け入れてくれた。

 魔法は多少使えるらしく魔法がほとんど使えなかった班にはもってこいの適任だ。

 これから1週間、ここでの生活が始まった。

 それぞれの拠点は距離をとって基本的には他の班と会うことがほとんどない。


 一日目は食料の調達だった。

 旅人になるにはまず基礎から学ばなければならない。

 自給自足の生活はレーレの知識が活躍してなんとかできた。

 二日目は魔物と戦った。

 ムロフはぶん殴りながら魔物を討伐していた。

 三日目も同様に自給自足の生活が続く。

 四日目、雨にさらされ魔物がいなかった。

 五日目、事件が起きた。

 

 早朝、今日は俺が朝の支度をする時だった。

 焚き火、食材の準備は俺がしなくてはならない。

 湿気った焚き火には火がなかなかつかなかったため、木材を集めなければならなかった。

 近くには撥水性の「ハグの木」があった。

 ハグの木の特徴として、枝が多く蔦が絡まりやすい木だ。

 昔は家の屋根として機能していたこともある。


 支給されている道具を駆使していくつかの枝をゲット。

 俺は火属性の魔法を使えないので焚き火に枝を入れライターで火をつけた。


 その時、シンバルの音が森に響いた。

 金属同士がぶつかり合う音。

 少しずつ音が大きくなっている。

 こちら側に音の源が近づいてきている。

 しかし足音がせずどこから近づいているのかわからない。

 生死の賢者は反応しない。

 まだ近づいていないのかもしれない。 

 けど、拠点の中で寝ていたカイが起きた。


「朝っぱらから楽器を鳴らすのは誰じゃ?」


 俺はわからない、と答えた。

 もしかすると楽器団が近くで演奏しているのかと思ったが、音はシンバル一音のみ。

 等間隔で鳴らされるシンバルの音は不気味に思えた。

 さらに音は大きくなる。

 まるで俺の場所を目標に来ているようだ。

 けど、シンバル以外の音は一切しない。

 雨上がりで音を鳴らす昆虫がいないのか、それともシンバルの音で静まり返っているのかわからない。

 それにかなりの音の大きさだから、教師達も聞こえているはずなのにそんな様子もない。

 俺達にしか聞こえていないのか?

 そしてやっと生死の賢者が反応した。


『数キロ先に極獣の生体反応。

 極獣 昆獣 スチル・ランカと思われます。

 しかし情報と一致しないので仮定として説明します。

 四つ足の蜘蛛。

 四方にある足は非常に細く固く、その足の長さは10kmを超え、頭胸部は雲の高さあたりにあります。

 昆獣 スチル・ランカ特有の奇妙な音を出します。

 その音を近くで聞いた者は気絶するでしょう。』


 どうして立て続けに極獣と出会うんだ。

 カイ以外のムロフもレーレも奇妙な音で起きた。

 さらに音は近づき、もうすぐそばにいる。


 音が止まった。

 

 空が暗くなったのかと思ったが違った。

 スチル・ランカが空を覆っていた。


 俺達の真上には大きな黒い円と四方に分かれた長細い足があった。

 もしかしてこれって気絶させられるやつじゃ・・・


『抑制空間を感知。

 昆獣 スチル・ランカによる抑制空間により魔法が使えなくなりました。

 長時間、この空間に居座る場合は特性も抑制されます。』

 

 これはやばいな。

 魔法はまだ許せるが、特性を使えなくなると手出しができない。

 すぐに対処しなければ捕食されてしまうだろう。


 その瞬間、大きな音が一回上空から轟いた。

 耳を抑えてもすぐ隣で鳴っているように聞こえた。

 音がなくなっても耳鳴りがする。

 絶えなく数回、鼓膜が限界だ。


 このままではまずい。

 魔法が使えないとすれば俺の攻撃手段は翼で飛んで攻撃ぐらいだろう。

 まだ、カイ、ムロフ、レーレの本領を知らないので何ができるのかわからないがするしかないようだ。


 一旦、魔法が抑制されていることを説明をしようとしたが、耳鳴りによってうまく伝わらない。

 その間も何度も鳴る音にムロフは苛立ちを覚えついに攻撃を始めた。

 ムロフは手の大きさほどの石を拾い上げ投げた。

 

 この足の長さに加えて、魔法を封じてくるのは本当に厄介な生物だ。

 しかしムロフの筋肉の前では無力だった。

 放った石はスチル・ランカを貫いた。


 細長い足で支えるためにできるだけ頭胸部の重さを軽くした結果、体の装甲は柔らかく簡単に貫くことができた。


 スチル・ランカは動きを止め、死体は残らず塵になった。


 それにしてもどうして俺達を目標に襲ってきたんだ。

 極獣は基本的に人目の少ない場所で発見されることが多いはずなのに、わざわざここに現れるのはおかしい。

 生死の賢者に何か関係があるのか?


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