死への抵抗
俺は変哲もない社会人。25歳。
東京に上京して、はや5年。
田舎の実家から離れて都会に来たってわけだ。
なぜ、東京に来たのか?
それは上流企業というほどでもないが、俺にとっては上流企業の中流企業の採用が決まったからだ。
学歴がそこまでよくなくとも俺を雇ってくれた、会社に毎日感謝しながら働いている。
上京して何か変わったことがあるかって聞かれたら、俺の人生に変わったことは特になかった。
仕事が忙しい?彼女がいる?娯楽三昧?
いや、そんなことはない。
普通の生活を送ろうと思っても、俺のやや低めのコミュニケーションでは、どうもできない。
上司からの突然の誘いは俺にとっては世渡りコミュニケーション上達イベント。
最近の若者(俺も)は上司からの誘いが嫌いらしい。
さて、現代社会に疑問を持ちながら今から、出勤するわけだが。
徒歩で駅に行き、満員電車を一駅分、そしてちょいと歩けば会社に到着だが、そう簡単に行かせてもらえるのか・・・
駅に着き、ホームで待っていた
「団条さん。」
小声で後ろから、毎日聞く、地元から一緒に来た同期の柳月の声が聞こえた。
振り向くと予想は的中し、柳月だった
「おはよう」
毎日の憂鬱なホームが一気に楽になる瞬間だ。
今日はたまたま同じ電車だった。
その時、駅のチャイムが鳴った
「電車が通過します」
まだ電車は来ないようだ。
続々と駅には通勤ラッシュの人が集まり出した。
そろそろ貨物列車が来そうだ。
「うわ!」
柳月がホームから落ちてしまった。
膝あたりを手で抑えていて、膝から落ちてしまったようだ。
人が人を押し、ドミノのように柳月押し出されてしまった。
「緊急停止を押せ!」
老いた中年っぽい男が叫ぶが、ボタン周りにいる人は一向に押す気配もないし、押したとて、この距離で列車が止まるとは考えられない。
俺の思考は朝の眠気が覚め、エナドリを得た脳より活発になった。
そして、俺の脳が出した答えは・・・『飛び込んで助ける』だった。
俺は躊躇せず、ホームから飛び降り、柳月を抱えようとしたが・・・
重ぃ!
仕事ばかりしていた俺では筋力が足りなかった。
でも、力を振り絞り柳月を線路の外へ投げた。
けど、もうタイムオーバーで俺は線路上から逃げ切る前に、電車に引かれてしまった。
これが俺の最後か・・・
走馬灯が頭に流れてくる。
俺の人生。
短い人生だった・・・
俺の周りは白い光に包まれ、天使が降りてくるのが見えた。
俺の魂をとりにきたのか?
俺にその天使は近づき、手を伸ばして何かを取った。
オレはシにタクナい!マダいケル・・・
なぜか俺は天使の腕を掴めた。
天使は驚いた表情をした。
「放しなさい!あなたはもう死んでいます。受け止めてください。」
「イ、いやダ・・・」
生への執着がまだ俺の魂には残っていた。
「この・・・生の冒涜者が!」
訳のわからない力で俺の意識は消えていったーーー
「全く・・・どうして私にはこんな変なやつが現れるんだ?」
なんだか腹が立つ。
そうだ!
こいつの“特性”に最弱特性をつけてもらおう。
私って頭いい!
その天使は俺の魂を持って天界に向かった
「神様!」
「帰ってきたか。ハデス=アパウワー。
今回の魂はどのような魂じゃ?」
ハデス=アパウワーは俺を侮辱するかのように説明した。
「この魂は生に執着をしすぎています。
前世では、上司に媚を売って生きていました。
社会的存在を出したかったのでしょう。
なので生存本能が強いので、だから私はこの魂にある“特性”を推薦します。
それは“固定ダメージを1”という特性です。」
「ほう?」
「最近は当たり特性をつけられる転生者が多いので、今回はこの“特性”が
いいかと・・・
そしてそんなに生に執着するならこの特性で行かせましょう」
どうだ?このハズレ特性を後押しする言い方。
さあどうなる?
「ほほほ
そうじゃな・・・たまにはいいかもしれんな じゃが、こんな“特性”を受ける器なのか?」
「いいんですよ たまにはですから。」
神様は紙にその“特性”を書き込んだ。
「もしかすると他の特性も付いてくるがいいじゃろ?」
「構いません。」
神様は決定ハンコを押した。
「ほら。転生契約書じゃ。
魂とこれを審査室に持って行きなさい。」
「了解しました。」
「というわけであなたは転生しました。
なにか文句ありますか?」
何か文句があるってあるに決まってんだろ!
「なんで俺の攻撃が全て1なんだよ!」
「あなたが抗うからでしょ。
では、1から初めてもらいます。」
「1から始めるって?!」
転生者は1からこの世界で人生を始めるらしい
どこかの生物に生まれ変わって、どこかの場所で生まれるらしい
「ではまたいつか会いましょう。
さよなら〜」
「まっt・・・」
俺はどこかに転生をしてしまった。