煌煌閃閃
「僕はお前の仲間だから」
ここは、支配された街―――エンパイア。この街は、混沌と激情と小さくかすかな友情と愛で、出来ている。
俺はあの時間を共に過ごした彼のことを、考えていた。
彼は、この街の混沌にも激情にも呑み込まれずに、堂々と過ごしていた。
あの時間は、俺にとって最悪で最悪で最悪の環境だったけど、最高で最高で最高級の兄弟がいた。支配されていたあの街で、死に物狂いで生きていた。知恵と勇気と根性と運で、彼と共に生きていた。
この街は、今なお支配されているけれど、いつか支配されることのない街にしてみせる。それが彼の願いだったから。
懐かしいな。あの時よりも、落ち着いた街となっているこの場所に来てみて、正解だった。
彼に会うことは、もう二度とないけれど、後悔はしていない。彼にはもう二度と会えないけれど、後悔はしていない。
あれから12年がたったこの街には、12年間変わらずにあり続ける墓がある。
彼の生きた証は、この街そのものと、この俺だ。
「おとーさーん」
後ろから声がする。俺の息子の声だった。
振り向いて、息子を見る。死んだ兄弟に似ていた。そして、俺にも似ていた。
「おとーさん、ボクね、この街をいつか笑顔の街にするんだぁ!」
「頼もしいな。笑顔の街かぁ、楽しみだ。」
俺の息子は、彼に似ていた。外側も内側も似ていた。だから、俺は恐怖している。俺の息子が、俺の兄弟と同じ末路をむかえるのではないかと。
俺は兄弟の墓の前で、静かに誓った。
俺は、今度こそ家族を守り抜く、と。