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11月11日の客

宇宙のヒーローに名前付けました。

その名も【宇宙ヒーローユニス】

正体バレし家族を守る為に、姿を消すしかなかった主人公のその後の物語。

この作品は別サイトで書いている作品の、セルフ二次創作です。


ー〈喫茶店・店主〉ー


地下にある古い喫茶店…この店を前のオーナーから継いで数年になる。


この店を継ぐ際、1つだけ条件を出された。


前オーナー「毎年11月11日だけは、この席は予約席。

他のお客様がいない時間に、30代くらいの背の高い男の人が1人で来られるから、普段通り珈琲と珈琲ゼリーを2人分お出しして。

お代はこの金庫に入ってます。」


『それだけの情報ではどんな人か解らない。』


というと…


前オーナー「来たら解る。かなりの良い男よ。

但し…その人が来ても、こちらから何か質問したり話し掛けたりしては駄目。

何か気づいても、知らん顔しててあげて。

接客は必ずあなたがする事。

それと…この事は誰にも内緒。

もし、あなたがこの店を誰かに譲る時はこの事を次のオーナーに引き継ぐ事。」


なんとも奇妙な条件だがそれがこの店を継ぐ条件なのだから、仕方ない。


半信半疑だったが前オーナーに言われた通り、その年の11月11日。

言われた通りに予約席の札を置いた。


すると前オーナーの言った通りの男がやって来たので、予約席の札を外し席に案内した。


言われ通りに珈琲と珈琲ゼリーを置く。


男「アレ?オーナーは?」


「前オーナーは引退されて、私がここを継ぐ事になりました。

宜しくお願いします。

今後ともご贔屓に… 」


男「こちらこそ宜しく…

あぁ…そうか、アレからもうずいぶん経つからなぁ。」


男は私が席から離れると、しばらく向かいの席を見つめた後、献杯をしてから珈琲を飲み珈琲ゼリーを食べた。


そうして向かいの席に置かれた珈琲と珈琲ゼリーを同じように食べ、右のこめかみに指先を当てながら暫く新聞や雑誌を読んだ後…


男「ごちそうさま。あのお代は… 」


「お代は前オーナーから預かっているので、要りません。」


と言うと少し困った顔をした後、店を出て行った。


「ありがとうございました。」


☆☆


数年後…


ー〈元部下E〉ー


妙な噂を聞いた…


『ある町の純喫茶にずっと姿の変わらない男が、年に一度だけやって来るという。』


ソレは半ば都市伝説のような噂話し。


だけど私はある確信を持って、その男が現れるという日…11月11日にその店を訪れた。


思った通りその人はいつものポーズ…右のこめかみに指先を当てながら、店にある新聞を読んでいる。

その顔は左側を前髪で隠していたが、直ぐに解った。


私「おっ待たせしました♪」


そう言って向かいの席に座ると、その人はフッと読んでいた新聞から目を離し少しの間をおいて“以前と変わらない笑顔”でこちらを視た。


隊長「…Eか… 。」


私「お久しぶりです隊長。」


隊長「元な… 。」


そう言って苦笑しながら新聞を畳み、邪魔にならないようにテーブルの端に置いた。


地球防衛軍 日本支部・特殊部隊元隊長〈俺氏(H・G)〉…またの名を〈宇宙ヒーローユニス〉。


それがこの人の名前…


隊長「久しぶりだなE、元気そうで良かった。」


最後に別れた時と、ほとんど変わらない姿で話す隊長。


私「隊長も、お元気そうで良かったです。

隊長が居なくなってから、たいへんだったんですからね!」


後始末を全部押しつけて、私達の前から姿を消した隊長に、少しくらい愚痴を言う権利はあると思う。


隊長「ああ…本当に、Eには迷惑を掛けてすまなかったな。」


そう言って、少し悲しそうな笑顔を向ける隊長。


私「本当に…最終決戦後(あの後)すっごく大変だったんですからね。」


そう本当に大変だった。


まさか敵との最終決戦で、隊長が一人で〈スーパーロボα〉に乗って特攻掛けるとは思わなかった。

でも実際は途中から、〈スーパーロボα〉を操縦していたのは〈ロボットのAI〉だけ…


隊長は〈宇宙ヒーローユニス〉として戦っていた。


戦いの中、〈スーパーロボα〉は〈宇宙ヒーローユニス〉を庇って大破。

表向き、隊長はその時に戦死した事になっている。


隊長の正体が〈宇宙ヒーローユニス〉だと知っているのは、私、〈ロボットのAI〉、直属の上司だった参謀長…そして元地球防衛軍・ 日本支部長官(数々の事件の黒幕)のみ。


まぁ…その元長官も、数年前に鬼籍に入った。


因みに〈ロボットのAI〉は〈スーパーロボα〉が大破する直前に、メカニック担当のYさんが作っていた〈基地のコンピューター〉の中に逃げ込んで無事だった。

本人?曰く…


ロボットのAI『《最後までご一緒すると言ったのですが… 》』


と、しっかり嘘をついていた。

とんでもないAIである。


その事実は副隊長や他の2人の隊員…格闘担当AさんとメカニックのYさんには、知らされていない。

なので真相を知らない三人は、本当に悲しんでいた。


隊長がご家族に所属部署を偽っていた為、亡くなった理由を説明するのはかなり苦労した。


もっとも実際にその報告と説明に行ったのは、副隊長だったけど…


《隊長戦死》の報告に部署を偽っている事に薄々気付いていた奥さんは、涙を浮かべていたが気丈に振る舞っていたそうだ。


隊長の葬儀は地球防衛軍・日本支部あげて【地球防衛の英雄】として盛大に行われた。


息子さんもまだ小学2年生なのに、立派に奥さんを支えていた。


店主が、私の方を気にしているのが視えた。

何も注文しないのも悪いか…


私「あ、すいません。注文良いですか?」


店主「はい。ご注文は?」


私「マルガリータピザのバジル抜きとチョコバナナパフェのフレーク抜き、食後に珈琲とお湯ください。」


店主がカウンターの奥にあるキッチンに向かったところで、隊長がニヤリと笑いながら言った。


隊長「そういや、始めて会った時もソレ頼んでたな(笑)」


私「覚えててくれたんですか?(笑)」


隊長「当たり前だろ。あんな印象的な会い方は他に無いからな。」


そう言って笑う、隊長の左前髪の隙間から除く目は碧く輝いていた。


☆☆☆


ー〈元隊長・俺氏〉ー


毎年この日…俺はかつて一度だけ共闘した戦友の墓参り代わりに、彼と会った喫茶店に来る。

俺が来る時間は何時も隙間時間で、他に客がいない。


ところが今回に限って、俺以外にも客がいた。

何時も空席の向かい側の席に座ったのが、一瞬誰か解らなかった。


E「おっまたせしました♪」


俺氏「…Eか… 。」


直ぐに解らなかったのは仕方ない…

最後に会ってから、もう何年も経つ。


相変わらずな元部下Eの言動に、懐かしさを覚える。


E「隊長…ご家族とは、お会いにならないんですか?」


おいおい、いきなり直球だな…


俺氏「…それは、無理だな… 。

俺は死んだ事になってるんだから。」


俺が地球から去る事で、家族の平和が守られている。

もし生きている事が知られれば地球防衛軍は家族を人質に、俺を捕まえようとするだろう。


アレからもう何年も経っているのに、ほとんど姿が変わらない俺…


もうここに来るのも、止めた方が良いかもしれない。


それから俺が地球を去った後の、部下達の状況を聞いた。


副隊長は俺の後任として特殊部隊隊長に就任後、現在は司令部入りし、参謀として活躍中。


格闘戦が得意だったAは工科学校で教官として、後進の指導。


メカニックのYは開発部に移動し、新装備の開発。


E本人は「秘密です。」


とはぐらかされた。

相変わらず諜報員らしく、秘密主義だな。


E「あっそうだ。コレ…隊長へのプレゼントです。」


そう言ってEが、バッグから取り出したのはタブレット端末。


そこに映し出されたのは、懐かしい家族の写真。


愛する妻と愛する息子の成長の記録。


俺氏「…防衛大に入ったんだな。」


妻の方は、心配で仕方ないだろう。


E「進学を決めた時『父のように、たくさんの人を守りたい。』って副隊長に言ってたそうです。

◯年前に任官して、今は〈スーパーロボΔ(デルタ)〉の操縦士ですよ。」


タブレットには防衛軍の隊服を着た成長した息子と、あの頃より歳を取った妻の姿が写っている。


俺氏「なるほど…息子の後見人は副隊長がしてくれているのか。

なら安心だな。」


一緒に居て成長を見守ってやれないのが、凄く辛い…


俺氏「…さて、そろそろ行くか。」


そう言って席から立ち上がると、Eは俺の顔をジッと視て言った。


E「隊長、また…会えますよね?」


俺氏「ああ…また、いつか会おう。」


☆☆☆☆


ー〈喫茶店・店主〉ー


この日訪れた2人は互いに支払いを取り合い、最終的には男が払う事になった。


「またのお越しをお待ちしています。」



ーーカラン♪カラン♪ーー


俺氏、正体バレバージョン。

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