1話
地球に住む全生物が隕石によって多く数を減らした。
隕石は日本から離れた場所に落ちたが衝撃によって窓が割れ、大規模な地震を誘発させた。
地震大国の住民である日本人であっても99%の人間がパニックを起こした。
逃げようと建物から逃げ出す人々は裸足で走り出して足裏は赤く染めて、靴を履いていてもマトモに歩ける人間は少なくなく、精神状態に関わらず海辺から標高の低い場所に住んでいる人間は全員居なくなった。
海から離れた標高の高い場所に住む運の良かった者だけが生き残って200人ほどの集落が各地に出来たが1ヶ月が経って半数以上が居なくなった集落も出てきたようだ。
富士山の周辺にはいくつかの集落があるが、どこの集落でも元々住んでいた人達よりも他所から来た人の数のほうが多くなっていてトラブルが起きている。
他所から集落へ来た15から18歳が集まった5人のグループは今夜、自分達の集落から抜け出す計画を立てていた。
「はぁはぁ、姫奈大丈夫か?」
姫「うん、大丈夫。三太君が重い荷物たくさん持ってくれてるから……逆に大丈夫?」
「三太の体格見てみろよ!俺の分もっと持って欲しいくらいだよ!」
この5人の中で一番若い、夜神京介が腕を広げて小柄な自分の体をアピールする。
三「俺は大丈夫、結構歩いたから息が上がったがまだ持てるぞ。京介、お前の荷物寄越せ、お前のの物になるハズだった筋肉は俺の物だ」
京「ばかじゃねーの、ほらよ、筋肉だ」
「うちロープ持ってるから貸したるよー、1つに纏めたほうが運びやすいやろー?」
年長者の、端本来海がロープをカバンから出して、三太に渡すが、三太がロープを結ぶ姿を見て奪い取って代わりに結びだした。
三「来海、ロープ使うの慣れてるな」
来「うまいやろー。うち、ガールスカウトしてたんよ!」
「漆間さん、水」
姫「悟くん!ありがとー」
姫奈は白鷺悟からペットボトルを受け取ると、我慢出来ないようにゴクゴクと水を飲んだ。
その様子を、悟は見つめている。
飲み終えてから見られていることに気がついた。
姫「ごめん、大事な水なのに沢山飲んじゃった」
悟「いや、いい。」
姫奈も自分の水を持っているが、悟は我慢しているのだろうと自分のペットボトルを渡した、それは『待て』をしている犬に『よし』と言うような物だと理解していた悟には、姫奈を責めるつもりなど一切ない。
姫「うーん。飲みすぎちゃったから、あとで喉乾いたら私に言って!私のボトル渡すからそれから飲んで!」
悟「いらない」
悟は17歳、ひとつ年下の姫奈との間接キスを想像して赤くなって後ろを向き歩き出したが、姫奈に肩を掴まれる。
姫「水がいらない訳がない、言って。約束。」
有無を言わせない姫奈に、悟は赤い顔のまま、コクリと頷く。
姫「顔、赤いけど体調大丈夫?」
悟「大丈夫」
今度こそ歩き出した悟は自分のボトルを見て、姫奈のボトルを使わなくても間接キスをすることになると気が付いて、より顔を赤くしたが前を歩く彼の顔を見る者は誰も居なかった。
日が出るまでに集落から存分には距離を取らなくてはならない。
春が終わり、暖かくなった夜はまだ長く、彼らの足取りは確かなもので、日が出るまでには海辺にたどり着けるだろう。