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第二話 あの世から生き返った青年の物語( 2/3 )

 2人の警官と俺はパトカーに乗り込んだ。

そしてなぜか、さっきの腕を引っ張ってきたこの女も俺の隣に乗っていた。

このまま何処かに連行されるわけではなさそうだったが、人目もあるのでとりあえず職務質問の場所としてここが選ばれたようだった。

前席に座る若年の警官から、学校は何処だの、働いているのかだの、親の連絡先だの、横にいるこの女は誰なのかだの、全てこっちが知りたい内容ばかりだった。


 流石に警官も、何も答えない不審者に対してイライラしてきたようで、少し声を荒げる場面もあったが俺もどうする事も出来なかった。


 横に座るこの女は自分からついてきたにも関わらず、この状況に全く興味のなさそうな顔をしながら真っ直ぐ前を向いて腕を組み、右手人差し指で二の腕をトントン叩き始めた。

そして、この女の見た目からは想像のつかない言葉遣いが飛び出した。


「おぉい……ガキ……」


 瞬間、小さな針のようなもので刺されたような気分になった。

恐る恐る横を見ると、腕を組んだまま微動だにせず、目を合わせようともせず、この女はただ真っ直ぐ前を向いているだけだった。


「…え?」


 思わず声が出てしまった。

ところが、咄嗟に出た声は前席の警官たちには聞こえていなかったようで、依然だんまりの俺に対して強い姿勢で喋っていた。


「お前だよ、お前。この偉そうな奴らは一体何を言っている?」


 この女は警官が何を喋っているのか分かっていないようだった。

そしてどうやら、この女の声も警官には聞こえていないようだった。

もし伝わっていたとすれば、警官が黙っていられるような言い草ではなかったからだ。

俺には普通に日本語で喋っているように聞こえたのだが。

ひとまず、この状況で喋っても警官に聞かれる心配はなさそうだったので、俺はこの女に状況を説明した。


「身元が確認できないので、身分証を見せろって」


 女は呆れたように目を瞑り、少しだけ顎を下げた。

静かに息を吐いたように見えた。

再び目を開け、呆れたようにゆっくりと喋り出す。


「ハァ…まず、お前と…こいつらの関係を教えろ」


 関係といわれても何もないが、客観的に見た状況だけを説明した。

関係というのなら、どちらかといえばアンタがいったい俺のなんなのだと問いたかった。


「俺は一般市民? でも身元を証明できる物が何もないから、今はただの不審者かな? こっちの2人は警察官。悪い人を捕まえる事を仕事にしてる人…みたいなそんな感じ。」


 ここで初めて、この女は俺の方を向いた。

まるで、何か手違いがあったかのような不思議そうな目で俺の方を見ていた。


「ほう、冥府でいうところの番犬のような役割というわけか。じゃあこいつらはなんでお前をここに閉じ込めてる?」


 見りゃわかるだろ。

そう言いたかったが、本当にわかっていないようだったので、俺は真面目に答えた。


「全裸だからだよ」


 女は顔はこちらに向けたまま、目は警官の方に向けて親指で自分の顎を撫でると、興味深そうに考察を始めた。


「全裸…裸で産まれてくる人間が、それだけで罪だというのか?…バカバカしい。それはもしかして人間は生まれながらにして悪…とか、そういう類の信仰かなにかなのか?」


 この女には、根本的な何かから説明しなければならないような気がしたが、何から説明すればいいのかも分からず、俺はただ間の抜けた返事を漏らす事しか出来なかった。


「…はぁ」


 女はとりあえず状況を理解したのか、もう何やら面倒くさそうに話し始めた。


「分かった。敵でないことだけは分かった。なら、そいつらが納得するように適当に話を合わせておけ。そうだな、追い剥ぎにあった事にでもしておくんだな。番犬なら弱者の味方のはずだ」


 俺はその線でなんとか誤魔化して警官に説明した。

ついでにこの女は自分の義姉で、たったいま日本に来たばかりの帰国子女。

今から義姉の家に帰るので問題はないという嘘も付け加えておいた。

警官はそういう事情ならと家の近くまで送ってくれることになった。

正直警察としてもこれ以上関わっていられなかったのかもしれない。

土地勘の全くない俺は、家は近くのショッピングモール近辺のようだが、詳しい位置は姉に聞いてみないと分からないと嘘を重ねた。

ついでに腰に巻けるタオルもくれた。

服を手に入れるまでは義姉弟として振る舞った方が色々と都合が良さそうだ。

途中で、車の中から窓の外を見て分かったが、この辺りはどうやら田んぼの多い田舎のようだ。都会の警察であったなら、こんなにあっさりとは帰してくれなかったかもしれない。


 ショッピングモールの裏手に到着した。

腰にタオルを巻いた男と、女が1人。

義姉役の女(以下、義姉)は大きく背伸びをしてから、淡々と話し始める。


「ひとまず下界の番犬は撒けたな。しかしどうしたものか…力もほとんど使い果たしたから、あとはこのガキを上手く使って下界に居城を築くしかないな……となるとまずは、服を用意してやるしかないか」


 二人が突っ立ったままショッピングモールを見つめていると、三台のハーレーに乗ってきたワイルドな男達が、立体駐車場へ入っていった。


「ほう…あの服、中々イカすな…」


 義姉は顎を親指で撫でていた。

嫌な予感しかしなかった。

義姉の腕を引っ張ると、俺は立体駐車場とは反対の正面入り口へ向かった。

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