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見捨てられた惑星  作者: 桂木 おいも
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第五話 真実

ある日、皆が寝静まった頃、家の外に置かれた転送ゲートが突然起動し始めた。何もない金色の枠の内側が波打ち始める。そして、そこから銀色のロボットが現れた。


ナイルはいつもの通り、朝食を取ってから歯を磨き、外に出た。気持ちのいい朝だ。ナイルは日課の柔軟体操を始めた。横には猫型のイヴがナイルの周囲をウロウロしている。


「やあ、おはよう。」


ナイルは突然声を掛けられたので驚いた。背丈は自分と同じほどのロボットだ。人間と同じ形状をしているが、全身が銀色に光っている。


「転送ゲートを開いたのは君かな?」


「えっと、以前使ったけど・・・あなた誰?」


「僕はGMM-010、別名ニーア、管理者をしている。」


「管理者って?」


「ロボットたちに指示を与えるもの。そこの猫を僕に預けて頂けてもらえないだろうか?」


「嫌よ。これは私の猫。誰にも渡さないわ!」


そう言うとナイルは猫を持ち上げ、人型に変えるボタンを押した。人型になったイヴが現れた。


「おはようございます、マスター。」


「うん、まず、君をマスターと呼んでいる時点でおかしいね。君の名前は?」


「私はナイル。」


「ナイル、申し訳ないが、AG-205は修理に出して、別の役目を担ってもらう。」


「私が最初に見つけたのよ?あなたに渡すもんですか。」


「AG-205は別名守護者(ガーディアン)、主人を守ることを主任務としている。だが、既に守る役目は終わったんだ。なぜなら既に敵はいないからだ。」


「キュロスは?」


「キュロスは滅んだよ。我々の手によって。」


「ええっ!?キュロスを倒したの?」


「ああ、我々が開発したAA-00によって、一匹残らず倒された。」


「AA-00?」


「ああ、別名(zero)。キュロスを倒すためだけに開発されたロボットだ。今はキュロスは滅びたから、AA-00は役目を終えて、長い眠りについた。」


「あの、管理者さん。キュロスは滅びたって言うけど、以前転送ゲートで行こうとした都市にはどこにも行けなかったの。唯一行けた都市は崩壊してて。」


「ああ、そうだろうね。もう人類は滅んだのだから。」


「えっ!滅んだ?」


「うん、キュロスの攻撃を受けて、滅んだ。」


「じゃあ、あなたは誰の命令で動いているの?」


「僕は、僕の意志により動いている。」


「ロボットは人間の指示で動くんじゃないの?」


「それは昔の話だよ。既に人類は滅んだ。今は従うべき主はいない。我々は、自分の意志で、キュロスを倒し、今に至る。」


「じゃあ、もう人間の指示には従わないってこと?だから、イヴをよこせって言ってるのね?人間に従うロボットを排除するために!」


「マスター!」


突然、イヴが話に割り込んできた。


「マスター、違うんです。そうじゃありません!昨日、私、気付いたことがあるんです。話すかどうか迷ったのですが・・・」


「何?イヴ。何でも言ったらいいのよ。あなたが迷うなんて珍しいわね。」


「はい、マスター。話すと、私たちの関係が崩れるかと思って。」


「私は何も変わらないわ。イヴ、君は私の大事な相棒。誰にも渡さないわ。」


「マスター、以前この惑星の名前を言ったことがありましたよね?この惑星、PNT-16って言うんです。」


「うん、聞いたわ。」


「PNT-16は、別名毒の惑星と言って、大気に神経毒が混じっていて、そのままでは人間は住めないんです。」


ナイルはイヴが何を言っているか、分からなかった。


「だって、私たち、ここに住んでいるわよ?住めるようになったんじゃないの?」


「いいえ、マスター。では、自分の年齢は分かりますか?」


「年齢?私は今年で1,285歳だけど?」


「マスター、人間の寿命は、長くて100年です。」


ナイルはようやくイヴが何を言いたいかが分かった。


「そんな、私、だって、私たち野菜を食べて生きているのよ?」


「はい。私の中には、限りなく人間に似せたロボットを開発したという記録がありました。人間と同じ食料をエネルギー源とするロボット。」


「そんな、ばかな。」


ナイルはあまりのショックで、何も言葉が出なかった。今まで信じてきたものがガラガラと崩れるような気がした。


「だから、言っただろう?守護者(ガーディアン)は人間をマスターと呼ぶように作られているんだ。ロボットをマスターと呼ぶ時点でおかしいんだよ。」


ナイルは管理者の話など聞いていなかった。過去の自分の思い出や、幼い頃の父と母との記憶、小さなときに姉と喧嘩した記憶、あれは何だったのだろう?そう言えば、一番昔の記憶はなんだっただろう?最早思い出せない。そして、100歳で人間は死ぬという情報。私はなぜ、これまでその情報を今まで知らなかったのだろう?色んな疑問が沸いては消えていった。混乱して頭の整理がつかなかった。


「マスター、気を落とさないで下さい。マスター、今後もあなたは私のマスターです。」


イヴの優しい言葉に、一粒の涙が出た。


そのときだ。家の中から「ブンッ」というロボットの起動音が聞こえた。

イヴも反応した。


「奴らが現れました。」


最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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