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見捨てられた惑星  作者: 桂木 おいも
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第三話 転送ゲート

ナイルとイヴは砂漠を歩いていた。これまでイヴは猫の姿で付いてくるだけだったが、今日は人型だ。


「私、こうやって、砂漠に落ちている機械部品を拾っては家に持ち帰って研究しているのよ。」


「・・・」


「あまりおしゃべりは得意ではないかしら?」


「あまり得意とは言えませんね。質問ならば回答は限られますが、そうでない場合、選択肢が多すぎて。」


「そう、私も気を付けるわ。猫だったとき、私、色んな事を君に話したんだけど、覚えてる?」


「いえ、猫の時の記憶はほとんどないですね。」


「そうなんだ。そうだとは思ったわ。理解している風ではなかったし。」


「・・・」


「ねえ、イヴ、キュロスって何?」


「キュロスは異世界から来た侵略者です。」


「どんな恰好をしているの?」


「キュロスは侵略者の総称で、様々な種類がいるようですが、一般には悪魔と言えばイメージしやすいかと思います。遠い昔から人類とは深い関りがあったようで、偵察のために頻繁にこの世界にやってきていたようです。」


「キュロスは昔からいたんだ。」


「はい。彼らは人類が育つのを待っていたと言われています。」


「どういうこと?」


「人類は元々一つの惑星で進化し、そこで暮らしていたのですが、そのうち核戦争が起こり、放射能汚染により住めない環境になってしまいました。人類はその惑星を捨て、宇宙にその住処を求めました。人類は次々と惑星を改造していき、自分達が住める惑星へと変えていきました。今ではいくつもの銀河系を支配するまでに広がっています。キュロス達は人類が惑星を変えていくのを待っていたのではないか、という話です。」


「横取りということね。」


「はい。」


「私の想像だけど、その始まりの惑星を住めない環境にしたのはキュロス達かも知れないわね。」


「はい、そう考える学者もいるようです。キュロス達が裏で操って全面核戦争を引き起こしたのではないかと。」


「恐ろしい陰謀ね。物凄く長い年月がかかる壮大な陰謀。」


「はい。ただ、キュロス達とは宇宙が異なりますから、時間軸も違うのではないかと言われています。」


「というと?」


「つまり、この宇宙の進む時間よりキュロス達の宇宙の進む時間の方が速ければ、そんなに待たなくてもいいのではないかということです。」


「実際そうなの?」


「どうでしょう?それはキュロスに聞いてみないと分からないと思います。」


「なかなか、イヴも話せるようになってきたわね。事実だけでなく推論までできるようになったら大したものよ。」


「いえ、これはインプットされた情報ですから。」


二人はしばらく砂漠の中を歩いた。


「ところで、今私は機械部品を探しているんだけど、何か探す方法はないかしら?」


「それなら、私の探知機能を使ってみますか?金属片だけでなく、微弱な電波でも拾うことができます。」


「そうなの?それはぜひお願いしたいわ。」


イヴは手のひらをレーダーにしてその場で回転し始めた。


「あそこに何かありますね。大きな電波を発しています。」


電波を発しているということは、今でも機能しているということだ。それはきっと価値の高いものに違いない。二人は電波の発する方に向かった。


「この下です。」


「じゃあ、掘ってみようか。」


ナイルはスコップを使ってイヴの指さした場所を掘り始めた。しばらく掘っていると、キンという金属音がした。ナイルはその周囲も掘った。イヴも手伝った。


「何だか扉のような感じがするけれど。」


二人が掘ったものは金色の扉、もしくは大きな鏡のような物体だった。イブが砂の中から物体を取り出した。


「これは何だろう?」


「これは転送ゲートですね。」


「転送ゲート?」


「はい。色んな場所にワープできる道具です。ここに場所コードを入力すると、そこに移動できる装置です。」イヴは左上の入力パネルを差し示しながら言った。


「凄いわ。どこにでも移動できるってこと?」


「いえ、どこにでも、という訳ではありません。出口側の扉がなければ出入りはできません。」


「どこか知っている場所はある?」


「はい、私が知る限り、100箇所くらいの扉があります。」


「100箇所もあるの?」


「いえ、私が知る限り100箇所という意味で、もっとたくさんあります。」


「どこか入力してくれる?」


「今、移動するのですか?危険な場所もありますが。」


「そうねえ。じゃあ、都市がいいな。どこか大きな都市はあるかしら?」


「分かりました、マスター。では公国首都のベイジに設置されたゲートに設定します。」


ナイルはワクワクした。ナイルはオアシスの外に出たことはない。初めて違う都市に行けるのだ。


「マスター、どうも行けないようです。」


「どうして?」


「恐らく、出口側のゲートが壊れているか、機能を停止しているものと思われます。」


「じゃあ、他の場所は?」


「では試してみます。」


イヴは30箇所ほど試したが、どこにも行けなかった。


「次は惑星ガーランドーの地下都市マカハンドに設定します。」


イヴは入力パネルに設定した。


「どうやら、この転送ゲートは生きているようです。ただ、この地は公国の領地ではなく、永世中立国ですが。」


「行ってみよう!行かないと何も分からないわ。」


「では転送ゲートをくぐって下さい。既に転送ゲートは開いています。」


ナイルとイヴは転送ゲートをくぐった。ゲートを出ると、そこは真っ暗だった。


「明かりを付けますね。」


イヴの人差し指から明るい光線が出た。


「これはレーザーのような平行光ではなく、わざと分散光にして・・・」


「ちょっと待って。」ナイルが遮った。「これは、何?」


ナイルたちが見たものは、廃墟と化した建物の残骸だった。

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