初ログイン
ゲームの中に入ってすぐに目につくのは大きな噴水。ここは第1の街、ランドル。この街はこの大きな噴水を中心に丸く作られている。中世ヨーロッパのそれらしい街並みが広がっており、その街をぐるっと高い城壁が囲んでいる。その外には四方に森が広がっているらしく、また第2の街にあたる場所は2ヶ所あるということだった。
「おおー綺麗!」
リンは攻略サイトでこれらの景色を見たことはあるものの、やはり実際に見ると素晴らしく声を洩らした。初期設定をどうするか決めておいたので、第2陣の大勢の人々より早くログイン出来たが、それでも結構プレイヤーがおり、そのプレイヤー達のほとんどはいっせいにある方向に向かって歩き出す。確か北には戦闘ギルドがあったはずだ。
「えーとあっちが北だから、こっちが南だね!」
そう言ってリンは戦闘ギルドの反対側、南にある生産ギルドに向かった。
「おおー大っきい」
少し歩いたところに生産ギルドがあった。攻略サイトには大きな建物だから行けばすぐ分かると書かれていたが、これはたしかに大きい。周りの建物が2〜3階建てに対して、この建物は5階建てのようだ。そこに何人かのプレイヤーが入っていく。それらのプレイヤーはリンが装備しているような初期装備ではなく、煌びやかな服を着ており、第1陣のプレイヤーであることが見てとれた。
緊張しながらギルドに入る。ギルドの扉は人の往来が激しいから夜以外は開けっ放しらしい。でも中の床は明らかに外の石畳より凄そうで、左の壁にはクエストのための紙が、右の壁にはギルドが売っている道具が並んでいる。その奥には階段があり、2〜5階まで全て作業場になっているって攻略サイトに載っていた。
そして正面にはギルドカウンター。よく漫画であるようなカウンターがありちょっと感動しながら奥に進む。幸い人は少ないようですぐに自身の番がやってきた。ギルド職員の受付嬢さんが優しい微笑みを浮かべながら聞いてくる。
「こんにちは、今日はどのようなご用件でしょうか?」
「ギルド登録に来ました!」
元気な声でリンは言う。
「では、名前と職業を書いてください」
そう言って出された紙には日本語で名前と職業という欄が書かれている。リンと裁縫師と書いて提出すると、ナイフと厚さのあるカードを手渡された。
「ナイフでどの指でも良いので少し皮膚を切って血を垂らしてください」
「分かりました!」
そう言って手渡されたナイフで左手人差し指を傷つけ、血をカードに垂らす。するとカードが紫色に変色した。
「これで登録は完了です。これからギルドの説明に入ります。生産ギルドでは、素材の買取と、道具の購入、クエストの受注が可能です。ギルドランクはF、E、D、C、B、A、S、SSがあり、Fが最も低いランクで、あなたは今このランクです。
カードの色は低い方から、紫、青、緑、黄色、オレンジ、赤、銀、金と色が変わっていきます。クエスト用紙の左上には色がついており、その色以上のランクでないと受注出来ませんので気を付けてください。そして、クエストをこなすとランクが上がります。
クエストには、採取クエストと制作クエストがあります。採取クエストは特定のアイテムの納品、制作クエストは特定のランク以上のアイテムを制作して納品してください。
また、左上に印がないクエストがあります。それは常時クエストと言って、クエストを受注しなくても納品可能で、ランクも上がります。ですが、上がりにくいので、一般的には自身のランクのクエストを受けてあげることが多いです。
また、常時全てのクエストに期限があります。期限内にクエストを達成できないと失敗扱いになります。この場合報酬は受け取れず、ランクの変動もありません。また、失敗するとペナルティーがあるクエストがあります。そのようなクエストは緊急性が高いクエストが多いですが、基本的には戦闘クエストに当たるので、気にしなくて大丈夫です。
パーティを組む場合はギルドに届け出る必要はありません。受けられるクエストは1番上のランクの人のクエストになりますが、自身の受注可能でないクエストをこなしてもランクは上がりません。経験値も通常より入らなくなるので気を付けてください」
「はい!」
「これで説明は以上です。また何かありましたらいつでもお声掛けください」
「ありがとうございました」
そう言って礼をしてカウンターを離れ、右側の壁にクエストを見に行く。リンはまだFランクだから紫か色がないクエストしか受けられない。
「えーと…あ、あった!」
そう言って手にしたのは[カゴを作ろう!]と書かれた紫色のクエスト。このクエストは蔓から家具のカゴを作るクエストで、このクエストは比較的沢山ある上、作りやすいので 初心者におすすめと攻略サイトに書かれていたのだ。必要なのは蔓が20本程度で、蔓は針や素手では切れないのでナイフが必要だ。
「このクエストお願いします!」
「分かりました。期限は1週間、ペナルティーはなしです。では、行ってらっしゃいませ」
「ありがとうございます」
そう言うと、リンはまずギルド内でツタを切るための300ゴールドするナイフを買い、ギルドを出て、蔓があるという東の森を目指す。東の森へ行くにはまず最初の噴水に戻って…
「わ、人がいっぱい」
そう、今は第2陣が続々と入ってきている時間帯で、当然のように噴水の周りはプレイヤーでごったがえしていた。
「まずい、早くしないと!」
そう言いながらリンは右手に曲がる。と、すぐそこに商人ギルドが見えてくる。
この街はリスポーン地点の噴水から北に行くと戦闘ギルド、南に行くと生産ギルド、東が商人ギルド、西には協会がある。
戦闘ギルドは生産ギルドの戦闘バージョン、教会ではお祈りができ、回復関連の魔法や聖騎士などの、光に関係があることをしたいプレイヤーが行く。商人ギルド登録をすると街中にお店を持てるようになる他、鑑定スキルが手に入る。。
ただ、まだお店を持っている人は少なく、大通りから少し入ったところにたくさんの露店が並んでいる。また、東西南北に門があり、どの門からも出ることができる。
確か暗殺ギルドっていうのがどこかにあったっていう話もあったけど、あくまでウワサで、実際どこにあるかはわかっていなかったなぁ。
そんなことを考えながら歩いていくと、すぐそこに門が。
「よーし初クエスト頑張るぞ!!」
そう意気込んで東の門をくぐったリンであった。
失敗してもランクの変動がない→降格することも無い。ただその分ランク上げはちょっと面倒。
沢山あるクエストと無色クエストの違い→100枚と無限ってかんじ。前者は失くなる可能性があり、後者は絶対にない。