9話 撃破
人型のモンスターは、まっすぐ私達に向かって手に持っていた剣を振ってくる。私はそれから逃げると、風魔法「テンペスト」を使用し、モンスターを吹き飛ばす。
モンスターは勢いよく体を壁に激突させ、一瞬フラついた。
だが、まだ倒れてくれないらしく、再び立ち上がった。そして、今度は先程他の冒険者を倒した炎を放ってくる。
そこで私は防御魔法「ミラード」で跳ね返すと、ニコラスに手話で指示を出し、突撃させる。
モンスターはニコラスと睨み合い、お互いの間合いを見ながら牽制する。そして、しばらくするとニコラスが動き、レイピアで何回もモンスターを突こうとした。
だが、さすが強敵というだけあるのか、ニコラスの攻撃をモンスターは剣で防ぐと、今度はモンスターがニコラスに攻撃を仕掛ける。
しかし、こちらのニコラスも負けてはいない。ニコラスは素早く攻撃を受け流すと、余っていた右手をモンスターの腹に付け、爆発魔法「バースト」を使い直接奴の体を爆発させる。
その間、アランとハルちゃんは、矢とダーツを放つ。後ろにいた私には分からなかったが、なにか合図でもしたのだろう。ニコラスは突然しゃがみ、矢とダーツが万一にでも当たらないようにしていた。
矢とダーツは見事に奴に命中し、矢は爆発し、ダーツは光の光線を撒き散らす。
そこで、私は予め溜めていた魔力を使い、時間停止魔法「タイムストッパー」を使用する。そして、素早く色々な攻撃魔法を唱えると、時間を再び作動させる。
すると、一斉に魔法達が奴に襲いかかり、奴は消滅した。奴の持っていた剣を残して。
〈危ないとこだったね。……まさか本当に出るとは思っても見なかったよ〉
――見事にフラグ回収してたね。まあなんとかなって良かったよ
〈それはそうと、この剣どうします?〉
ニコラスは奴の剣を片手で持つと、こちらに見せてくる。
〈うーん、とりあえず回収だね。もしさっきのモンスターが伝説の奴なら、価値はかなり高いだろうし〉
――その剣、なんか光ってない?
〈光ってますね。私怖いので離れときます〉
ハルちゃんはそう言ってこれでもかというぐらい後ろに下がる。よっぽど怖いのだろう。
〈んー、でも何も起きないね。まあいいや。これは俺が持っとくよ。なんか爆発でもしたら危ないし〉
〈あー、じゃあお願いします。ところでこの後どうします? まだ進みます?〉
〈いや、今日はもう撤退しよう。カミラさん魔力もう残ってないでしょ〉
――いや、まだ結構魔力余ってるよ?
私は彼がなぜ私の魔力の心配をしているのか分からなかった。確かに今ので五分の一ぐらいは無くなったが、まだまだ戦える。
〈え、そんな馬鹿な。あんなに魔法使ってたのに?〉
――うん。そうだよ?
〈……そういえばカミラさん。あなたなんで何種類も魔法使えるんですか? ベテランの冒険者でも三種類ぐらいなのに。それに、下の名前ってワトソンでしたっけ〉
――うん。カミラ・ワトソンだよ
〈……もしかして、カミラさん。あのワトソン家の人ですか?〉
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