5話 トラブル解決
私は色々な店を見て回った。アクセサリーを売っているお店、ロープ等の冒険雑貨を売っている店。ちょっと胡散臭そうな壺を売っている店。
私はお金に気を配りながら、必要なものに絞って物を買う。この街の人達は皆優しくて、私が筆談を頼んでも嫌な顔をせずに親切にしてくれた。
そうして、私が荷物を両手に持ちながら
街を歩いていると、突然一人の白髪の少女が私の後ろに隠れてきた。
私が突然の出来事に驚いていると、二人の男がこちらに走ってきた。
二人の男は口を大きく開けながらこちらになにか言っている。表情などからして怒鳴っているようだ。
――どうかしましたか?
私は紙にそう書く。男達はあいも変わらず怒鳴り続ける。どうやら私のことは完璧に無視しているみたいだ。
〈このガキッ! 逃げんじゃねえ!〉
〈大人しく俺達と来い!〉
状況がいまいち掴めないが、なんとなくこの男達があまり柄の良い人間ではないことは分かった。
少女はというと、私の後ろで震えるばかりで、黙っている。
状況を知らない部外者が無理に首を突っ込むのもどうかと思ったが、このままだと埒が明かないだろう。
そこで私は少女の方を向くと、なにがあったのか紙で聞く。すると、少女は私に紙で事情を説明してきた。
――この人達が無理矢理私のことを連れ去ろうとしてきたんです!
――なるほど
今度は私は二人の男の方に向き直ると、同じように事情を聞く。もちろん紙は変えて。
〈俺達はこいつとパーティーを組もうとしただけだ。それなのにそいつが逃げたんだ〉
見事に言い分が食い違ってる。ただ、もし仮に男達の主張が正しいとしても、逃げたからって怒鳴りながら追いかけ回すのはいかがなものか。
私はその旨を彼らに伝えると、男達は舌打ちした。
〈御託はいいからそいつを俺達に寄越せ。こっちは時間が惜しいんだ〉
片方の男はそう言って私に決断を迫る。
正直、この時点で私の答えは決まっていた。この様子からして、男達がどう見ても悪い。
――お断りします。事情がどうであれこの子は嫌がってるじゃないですか。
〈そうか。ならどけ!〉
男はそう言って私に襲いかかってきた。私は紙とペンを投げ捨てると、手話で風の魔法、「ウィンド」を使う。
私の手から風が発生し、男達は吹っ飛ぶ。そして、男達は起き上がると私に何かを言いながら逃げていった。恐らく捨て台詞だろう。
私は呆然としながら二人を見送ると、少女の方に向き直る。
――大丈夫?
〈はい、お陰様で。それにしても、今どうやって魔法を使ったんですか? 呪文も魔道具も使用していないように見えましたが〉
少女は感情豊かに表情を変え、私に話しかける。
――手で魔法を使ってるんだよ。色々あってね
〈え、そんなことできるんですか?〉
――普通の人には難しいかもね。私は手を動かす動作自体が母国語みたいなものだから。
〈なるほど、そういうものなんですか。なにはともあれありがとうございます! お礼と言ってはなんですが、ご夕食一緒にどうですか?〉
――気持ちだけ受け取っとくよ。あなたも災難だったね
私は手をヒラヒラと振ると、少女に背を向ける。しかし、少女は私の手を掴み止めてきた。
〈あの、せめて名前を教えて下さい〉
――いいよ。カミラ・ワトソン。またどこかで会うかもね
〈そうですね。あ、私の名前はハル・コートと言います。それじゃカミラさん、またいつか!〉
少女はそう言って私の手を離すと、手を振りながら去っていった。
私はなんとなくだが、彼女と近いうちに再会しそうな予感を感じた。
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