32話 指輪の世界 その2
〈どこなのでしょう、ここは。見たところ、巨大な装置の中に見えますが〉
――指輪がなんか起動したのは間違いないんだろうけど、分かんないね。脱出できるといいんだけど
私は辺りを見渡し、なにかないか探る。まずは情報を集めなければ。
見渡して見えるのは金色の歯車と、ギア。そして中央には大きなエメラルド。あの指輪と材料が一緒で、指輪の中に来たみたいだ。
だが、人差し指にはしっかり指輪が嵌っている。だからここは指輪の中ではない。
〈その指輪に込められていた魔法はこれだったのでしょうか……? ならなんの為にこんな物を?〉
――勘だけど、この魔法はまだ完全起動してないんだと思うよ。ほら、あそこのエメラルドが光ってないでしょ
私はそう言って、中央のエメラルドを指差す。エメラルドは、周りの光を透過させてはいるが、それ自体が輝いてはいない。
〈なるほど、確かにその線はあるかもしれません。それではエメラルドの方に向かいますか〉
アリスはそう言って私の手を引く。そして、私はアリスに連れられながらエメラルドに近づく。それは相当大きく、持って帰れるなら是非持ち帰りたいぐらいだ。
――ここに魔力を流し込めば発動するのかな?
〈多分そうなのではないでしょうか。ちょっと試しに私が触って見ますね〉
アリスは私が止める間もなくエメラルドに触れる。すると、エメラルドが光を放ち始め、歯車が動き出した。
〈え、私まだ魔力流し込んでないですよ!?〉
アリスは驚いた顔でこちらに顔を見合わせる。まさかいきなり起動するとは。
――単純に装置が動いてなかっただけみたいだね。エネルギーは既に足りてたんじゃないかな
歯車は回転数をどんどん上げていき、中央の宝石の放つ光もどんどん大きくなる。それと同時に、私の手にある指輪の宝石も光を放ち始める。
〈これは……もしかして帰れるのでは?〉
アリスはそう言いながら私のエメラルドを指でつつく。すると、再び宝石は強い光を放ち始めた。
私達はその光に体を包まれると、再びアリスの部屋に戻ってきた。エメラルドはまだ輝き続けている。
〈帰ってこれたみたいですね。それに、指輪も力を発揮し始めたみたいですし〉
――うん。まあ指輪の方の力はまだ分かんないけどね……
私はため息をつきながら指輪を見つめる。何だったんだ、これ。これでロクな物じゃなかったらただの骨折り損なんだけど。
私は試しに指輪を壁にかざすと、指輪に魔力を流し込む。その瞬間、緑色の光が直線上に放たれたかと思うと、壁が金になっていた。
私は声が出なかった。いや、元々出ないような物ではあるが。その隣ではアリスが目を丸くして呆然としている。
アリスはただ一言、〈は……?〉と呟くと、完全に動きを止めてしまった。情報処理が追いついていないらしい。
私はというと……冷や汗が止まらなかった。これは、想像以上にやばい物を手に入れてしまったのかもしれない。まさかこれに刻まれていた魔法が――
「錬金術」だったなんて。